新宿末広亭6 その3(三遊亭円楽「うつけもの」と寄席のマナー)

出囃子、元禄花見踊りが鳴る。
円楽党交互は、この日は元王楽の七代目円楽師。他は兼好、萬橘といつものメンバー。
円楽党交互枠はすっかり定着しているのだが、なにしろ末広亭にあまり来ないもので、実際に遭遇するのは私は初めてだ。
以前は立川流交互もあったのだが、最近見ないなと思っていた。
この機会に東京かわら版をめくって調べてみたが、2024年5月下席昼が最後だった。結構前に終わってるな。
ちょうどこの頃立川流が一般社団法人になったのだが、関係はあるのかないのか。

円楽師は寄席のマナーについてのマクラ。
しかも最近、私がブログに書いたばかりのネタ(複数)に関連する。
寄席でね、おやすみになる方がいらっしゃいまして。それは全然いいんですよ。リラックスしていただいてね。
ただ、たまにイビキをかかれる方がいらっしゃるんです。
一度私らのホームグラウンドの両国で、最前列でイビキかいてた方がいまして。これは困りました。
携帯電話も困りますね。
まだマクラ喋ってるときだったらいいんですけど、本編に入ってますとね。
一度登場人物に「携帯鳴ってるよ」って喋らせてなんとか処理したことがあります。
あと、メモね。メモも別にいいんですけど、マクラから本編に入るとき、堂々とメモされますとね、気になっちゃって。
メモも、取りっぱなしで手を休めない方がたまにいらっしゃいまして。
前もあったんですよ。若いお客さんで、多分オチケンなんでしょう。最前列でずっとメモ取ってまして。気になって気になって噺間違えちゃいました。
間違えたときに、この人ニヤッて笑ってました。お前のせいだよ。

本当はもうちょっと面白かったのだが、細かいところはぼやけてしまいました。
イビキやスマホと並び、メモのマナーについて語っていたのは興味深い。
メモは作為の産物だから、イビキよりなおタチが悪いとも言えるわけだ。
本編が始まった途端ネタをメモる「ネタ帳ドレミファドン」は、演者はみな嫌なようである。だからひと昔前は、本編に入ったと見せかけてまたマクラを続け、違う噺に入るなんてやっていた人も。

ちなみに、「ブログに高座の模様を詳細に書きすぎるファンがいる」なんて苦情は、一度も聴いたことはない。
メモを書いてるファンのほうが、プロにとってはずっと迷惑なのである。

お父さんの話も。
ちょうど今頃、テレビでスベってますだって。時計を見たら5時50分頃だった。
親父の負の遺産、池之端しのぶ亭で一席やってたらスマホが鳴った。その場はなんとか処理して楽屋に戻ったら、鳴ってたのはあたしのでした。

本編は自作の新作、「うつけもの」。
タイトルはなんとなく目にしていたが、初めて聴いた。
非常に文枝新作っぽい内容。円楽師は「読書の時間」とか文枝新作も手掛けているから、影響下にあるらしい。
オウム返しを効果的に使っている見事な作品。落語作家としての腕が光るではないか。
先日、オウム返しを効果的に使った新作は知らないと書いたが、あった。

ケンカとナンパに明け暮れる高校生が主人公。いっぽう中学生の弟は成績も良く、歴史好きで賢い。
弟に、織田信長の一代記を教えてもらう。
聞き齧った知識を、後輩に披露するがおおむね間違っている。
戦国武将の名や歴史上の事件の名も、すべて間違う。
新聞記事やつるを新作にしたようなものだ。
この日、この後「つる」が出たから厳密にはツいてる気はするが、やむを得ない。
「うつけもの」が強調されていて、サゲは読めた。読めたからどうと言うのではありません。

古典メインの人が新作を多少持っていると言うのはいいものですね。
ちなみに円楽師、5月31日はここ末広亭(余一会)で襲名披露。それに行こうかとも思ったが。

次が春風亭傳枝師。この人はらくごまつりの話はしない。
粗忽の小噺(名前も変わったのか)でもって、「おお、家入じゃないか」としていた。
家入はもちろん、好楽・円楽親子の名である。客に伝わっていたかは不明。

粗忽長屋。
粗忽の八っつぁんが、熊の野郎に何があったか説明するのに「浅草」も「観音」も思い出せない。
「なに草」か思い出せないので、おはようございますから。
「かんなに」が思い出せないので、NHK連続テレビ小説に話が進む。
結局、最近のドラマからおしんまで遡った後で、「あまちゃん」の能年玲奈(のん)をようやく思い出す。
ここがハイライトでありました。
こんな芸風の人だっけ。

続きます。