この席の色物はすごい。
寄席に来るなら色物を楽しまないと。
続いてコント青年団。このコンビも目当てである。
今回は、今まで見た舞台の中で最も政治色が薄く、しかしながら最も毒が強いネタ。これまたたまらん。
政治ネタは更迭の江藤農水大臣と石破総理いじりが微量あった程度。
服部さんが舞台に登場。
靴を脱いで並べ、遺書を置く。借金まみれのため、橋から飛び降りようというのだ。
そこへやってきた、スマホで話をしている呑気な青木さん。
ナスダック株が暴落しても、今こそ買いチャンスだとか景気のいい話ばかり。フジテレビ買っちゃおうか。
こないだ話をもらった経団連会長のポストは、悪いがまだ器じゃないから辞退したい。
飛び込もうと思っても、再度男が戻ってくるのでやりづらい。
景気のいい話を耳にしながら、いよいよ絶望に駆られる服部さん。
しかしこの景気いい男、舞台から再びハケたのち、段ボールを抱えて登場し、素早く組み立てる。
そしてスーツ姿のまま就寝へ。
景気のいい男は路上生活者。
ナスダックはなんだか野菜のことらしいし、経団連はK団連、すなわちコ◯キ団体連合。
路上生活者でもっと貫禄ある人がいるので、会長の座はまだ早いんだって。
青木さんがまったく、服部さんの飛び込みを止めようとしないのでイラつく。
こういうとき、一言あるもんじゃないんですか?
もう一段階現れる、路上生活者の正体。
不謹慎さがとにかく面白い。
私本来的に、「不謹慎さを喜ぶ」傾向はそんなに強いほうじゃないのだが、この人たちだけは別格だ。
身を投げようとする人にも、路上生活者にも負の影がないのである。どういうことなんだろうか。
とはいえ、NHKには出そうにない芸だけど。
楽しい舞台に非常に元気をもらった。
これ自体は本当なのだが、元気ってなんだ?
「人間生きてりゃいいことあるさ」っていうメッセージ? まるで違う気がする。
仲入りは古今亭今輔師。
今輔師はアタック25の司会などやってるのではないのかな? でも芸協らくごまつりの話はなかった。
一応自己紹介から始める。浪人して落第して中退した三冠王です。
ここから野球の話。ドカベンに触れ、もっと古い野球漫画。
コロコロコミックで連載していた「あばれ!隼」。ピッチャープレート上で両手が交錯する魔球が登場。
それからもっと古い「アパッチ野球軍」。
甲子園のヒーローが、大人の汚さに絶望し、自ら利き腕を傷つけて野球をやめ、愛媛の山奥の学校に赴任する。村の名は猪猿村。
ピッチャーに抜擢される音は、ナイフ投げの上手かった男。名前はアバシリ。親父が服役してるから。
キャッチャーは驚くほどの太い腕。名前はザイモク。
サルみたいな敏捷な選手も。名前はモンキー。
過疎のチームがメキメキ強くなり、ついに甲子園でQL学園と対決する。
一打逆転サヨナラの場面でアバシリがホームラン級の当たりを打たれてしまう。
しかしモンキーがフェンスをよじ登り、スタンドを駆け上がってスコアボード付近でキャッチしてしまう。
場内喝采の嵐。でも、これホームランです。
このマクラ、今輔師からは初めてなのだが、内容は聴いたことがある。
春風亭百栄師が「甲子園の魔物」において、今輔アニさんが作ったものだと断って同じネタを語っていたのだ。
それ以来、子供のときには観ていないアパッチ野球軍が気になって、たまにOP&EDをYouTubeで観るようになったのだった。
このマクラからは甲子園の魔物なのかと思ったら、違う噺。
私はこの師匠、寄席で3連続「雑学刑事」なので、違ってよかった。
山奥の村、がつながるらしい「僕の彼女はくノ一」。これは初めて。
今輔師の新作落語の作り方はちょっと変わっていて、現実との接点を一切求めない。
設定をどんどんエスカレートしていくのでついてけない人もいるかもしれないが、この日のお祭りモード全開の客にはピッタリ。
いきなり彼女が「実は私伊賀の山奥で育った、くノ一なの」と衝撃の告白。
小さい頃から修行に明け暮れていた。毒に耐性があるので、毒を食べても死なない。
とっておきの武器は、乳房から吹き出す硫酸。
一緒に来て、族長を継いでほしい。さもないと、気持ちの悪い男とめおとにならなきゃいけないの。
気持ちの悪い男3人が彼女を連れ戻しに来るので、これと戦う羽目になる。
なんの腕も技もない男だが、意外と勝負になってしまう。
なぜか族長までやってきて、娘が嫁に欲しければわしを倒せと。
この話はまだ続くんですが、マクラ長すぎて今日は最後まで出来ませんでした。
僕の彼女はくノ一の「上」ですと断って終了。
たまらない前半戦でした。この日来て良かったなと。
来年も日曜日、芸協らくごまつりをパスしても、末広亭だけ来ようかななんて。
後半戦もまだまだ盛り上がるのでありました。

