新宿末広亭6 その5(笑福亭茶光「つる」)

仲入り休憩時、トイレ待ちも長蛇の列。
2階こそ開けてないが大盛況。
古い末広亭だが、椅子は新しくて座りごごちは圧倒的にいい。横浜にぎわい座並みにいい。
桟敷もいいが、椅子が本当に快適だ。
ここ、もっと来ないといけない。それも昼夜流し込みで。

クイツキは二ツ目抜擢。春風亭昇輔さんと交互で、笑福亭茶光さん。
出囃子はおもちゃのチャチャチャ。
3月に聴きにいった際、花粉症に苦しんでいたがもう大丈夫みたい。
この人も芸協らくごまつりの話から。

芸人みんな会場では仕事があります。ぼくはゴミ集積所の担当です。
ただ、仕事しながらサインを頼まれたらすることになっています。
人気の芸人さんが多いですから、ぼくなんかそんなにサインくださいとは言われません。ただひいき筋が気を遣って頼んでくださいました。
5人ぐらいに囲まれると、なんだか知らない人も勘違いして寄ってきます。
で、ぼくはゴミ担当です。
「さこうさん、サインお願いします」「はい、どうぞ」
そして、「すみません、ゴミです」。
なんにも間違ってないんですけど、なんだかサインのお礼にゴミもらうような形になってしまって。

三遊亭遊雀師匠という人がいまして。
この人は会場で張り切って働いてくださいます。
この人だけはゴミとかいろいろ持って歩いているときにサインくださいと声掛けられると、「ゴメンね、今手離せないから」。
遊雀師匠以外はみなサイン書いてくれますので来年もぜひお越しください。

遊雀、というのはパワーワード。ウケます。

本編は爆笑の「つる」。
なんだか知らないが前座噺のつるに凝っちゃう人もいる。
しかしよくこれだけのウケどころをこしらえるものだ。

上方落語だから、(多分)喜六が甚兵衛さん宅を訪ねてくる。
鶴はなんで名鳥なのか訊きに来て、甚兵衛さんに嘘を教えられる。
よそでやってくるという喜六に甚兵衛さんが「嘘や」と自白しているのは枝雀が始めた、私の嫌いなタイプ。
だが茶光さん、喜六がこれに反応していないのが上手い。
嘘や言うても今さら遅いわいとか、単に頭がいっぱいで聞いてないとか、そんな余計な説明を入れないので軽やか。

喜六によると、ハゲと白髪のジジイ、二人が浜辺にいることになってしまう。
客にもなんでハゲが出てきたのかわからないのだが、何度も繰り返すから、「ある晴れた日」ハゲになってしまったことがおっつけわかる。これも上手い作り。

おん(オス)の鶴がつーと飛んできて、浜辺の松にポイと止まった。
後からめんがるーと飛んできて、つぽいる。
おかしいな。

おんの鶴がつーと飛んできて、浜辺の松にると止まった。
後からめんがポイーと飛んできて、つるぽい。

落語協会の柳家風柳師がこんなやり方のつるをしていた。
「つるる」になっちゃう。
茶光さんはギャグもすごいが、これを早いスピードで語るテンポが見事。
クイツキらしい実にいい仕事だった。

続いてねづっちの代演で宮田陽・昇。
代演だが目当て。
もう同じネタを何度聴いても楽しいモードに入っている。
いつもの「ここが北海道」は、大阪の次が「ひろしまー」の短縮バージョン。
新宿だから短いのかと思うが、その割にこの一席はずいぶんたっぷりだった体感。時計は見てないけど。

牛嶋神社の奉納漫才のネタ。
芸協らくごまつりから、祭つながりのようだ。
祭の数日前に、神さまに向かって漫才をする陽・昇。客はいないが、「ここが北海道」もやる。
ぴろきさんが中抜きするので、ギャラが少ないんですよ。ぴろきさんじゃねえよ、前の人だよ。
ぴろきさんになってからちゃんとしたギャラになった。
唯一勝手に観てたのが路上生活者で、声を掛けられ「スベってたね」。

奉納漫才は「やりたくない仕事」の例として取り上げているのだが、でも牛嶋神社の仕事自体は続いているらしい。
お客さんを入れた普通の舞台もやった。だが、酔っ払いが終始不規則発言をして大変。
このネタを東洋館で喋ってたら、「俺だよ」と手を挙げる客がいた。
ネタ中に相手をしてたら客はまたしても不規則発言を繰り返し、東洋館出禁になった。
この客がどうやら神さまだったらしい。

聴いたネタに続編ができていて、やたら楽しかった。
この末広亭の前列の客を、「あなたあのときの神さま」といじり続ける陽さん。

大谷翔平から、そのつながりで米国50州の地図へ。
この人たちは本当に、ネタの切れ目がなくて常に話がつながっていく。
地図を披露する際の拍手で、「あの人が拍手してなかった」「指を指すな」。
冒頭で使わなくてもここで使う。
日本地図と同じように両手を使ってメイン州からスタート。
バーモント、ニューハンプシャーと来て、マシャチューセッチュ。言えてねえじゃねえか。
先ほど神さまですかとイジってたお客に、「お父さん合図しますから僕の代わりにマサチューセッツって言ってください」「言えてるじゃねえか!」

ノースダコタ、サウスダコタ、俺はどこだ。
イリノイ、いらない。

と小ボケを挟み、アラスカまで行って最後50州目が出てこない。
仕方ないのでヒントをもらう。
正月に芸能人が行くとこだよ。
熱海。

いつも饒舌な私だが、寄席の続きもの3〜4回で終わってしまうこともある。
今回は白熱の席だったので、5日終わってもまだ続きます