鈴本演芸場13 その1(入船亭辰むめ「弥次郎」)

ごく普通の寄席定席へ。昨日とうって変わり、涼しい。
鈴本演芸場7月中席の初日。前日の上席(圓太郎師)千秋楽と迷った。
ごく普通の席だが、いいメンバー。

寄席は先日値上げしたが、鈴本については同時に東京かわら版割引が拡大した。
3,500円の定価のところ、500円割引。
何だかすごい得な気がする。錯覚には違いないが。
まあそれより、PayPay入れてくれたら台東区還元の際には20%還元になるけどなあ。

上野広小路亭の前で、コンビニの買い出し帰り、芸協の前座さんを見かけた。
坊主頭のコブダイみたいな前座さん。「あま夏」か「伸球」のどちらかなんだが。
(※桂伸球さんですね)

弥次郎 辰むめ
一目上がり 扇太
ストレート松浦
親子酒 扇蔵
初天神 左龍
ウクレレえいじ
かぼちゃ屋 市馬
財前五郎 玉の輔
にゃん子・金魚
田能久 扇辰
(仲入り)
ダーク広和
粗忽の釘 遊京
お血脈 三三
小菊
ねずみ 扇遊

扇遊師の芝居だから、入船亭がズラリ。
前座さんも入船亭。
今年の正月に用賀で聴いた、辰むめさん。読みはたつうめ。
当時の感想は「口調だけいい前座」。別に悪く言ったつもりはなくて、現状では口調だけ目立つということ。
半年経ったら口調がますますよくなり、すばらしい前座になっていた。

名乗らずに「一席お付き合い願います」から、弥次郎。
前座噺ではあるが、最近は珍しい。
弥次郎が隠居のところにやってくる。隠居は嘘を期待していて、早く嘘をついておくれよ。
あっしは嘘なんかついたことはありませんよ。それが嘘だよ。

北海道はなく、いきなり恐山から。
「南部の恐山」と。あ、恐山って南部地方なんだなと思った。
山賊に巡り合うまでのシーンがたっぷり。切り立った崖と、反対側は地獄谷。おまけに道が苔むしている。
なんだか、いきなり迫真の語りである。隠居だけでなく落語の客も引き込まれる。

弥次郎という噺、まったく意識していなかったがこのシーンは口上みたいにすらすら語るのだ。
そして口調に優れた辰むめさんは、まさにこれがやりたかったらしい。
そりゃまあ、子ほめや道灌やってても、こんなシーンないものね。
ちなみに、すばらしい語り口の中身だが、実は棒読みである。
口上と聞いたら抑揚豊かなものを連想するだろうが、大部分は機械的にハイスピードで読んでいく、つまり棒読み。
私は落語における棒読みの積極的評価を企んでいるのだが、まさにこれがいい例。
棒読みを組み合わせると、豊かな抑揚だと錯覚するのである。

崖を登ると平地があり、そこに山賊どもが集まっている。
幡随院長兵衛のごとく、卒爾ながらと火を借りにいく。芝居っ気たっぷり。
巨大な岩を小脇に抱え、ちぎっては投げ。早速ウソ全開。
隠居のツッコミも、必要最小限なのが実に好ましい。幡随院長兵衛なんてセリフは出てこない。

山賊どもを退治したものの、今度は猪。
キンを潰して退治するが、今度は腹の中から出てきた子供たちに復讐されかける。
オスの腹から子が出るか!
この返しが、「畜生の浅ましさ」ではなかったと記憶する。なんだっけ。
冗談言っちゃいけねえでサゲる。

先日冗談落ちについて書いた際、ブログ9年やってて冗談落ちに出くわしたのは記録している限り一度だけと書いたばかり。
なのに早速出くわした。まあ、意識するようになったからで、実際はもうちょっと出くわしてると思いますけどね。

辰むめさん、楽しみだ。
1箇所噛んでいたが、自力で復旧し、変な感じを残さなかったのは立派。
兄弟子たちとはまるで違う個性だ。

辰むめさんは序盤高座返しをしていたが、途中からのび太くんみたいな人に代わっていた。
辰むめさんの兄弟子の弟子、扇えんさんだろうか。

二ツ目も入船亭で、扇太さん。この人は2年ぶり。
隠居を八っつぁんが訪ねてくる。いきなりツいてる気がしてならない。
雪折れ笹が出てきたので、道灌でなく一目上がり。初日だからめでたいのかな。
だが気づいたら寝落ちして、サゲまで目が覚めなかった。

ストレート松浦先生は、今回は通常通りディアボロ(中国ゴマ)から。
この人はコマを回している間、客が反応しないのを見てから「あの、回ってますよ」と言うのがお約束。
お約束もなんなので、先に手を入れてみた。
芸はもちろん見事なので、たちまち拍手が広がる。
どうするのかなと思ったら、「どうやら、回っていることに気づいていただけたようです」。

多少変則で始まっても、途中に静かな芸を入れて、「どうやら中国コマの人気も落ちてきたようです」と持っていくのは一緒。
あとはデビルスティックによる傘と、パンダハンカチ(芸じゃない)、皿回し。
お手玉は出てたが、やらない。

続きます。

 
 

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