亀戸梅屋敷寄席37(上・三遊亭鳳月「提灯屋」)

主任・兼好の亀戸梅屋敷寄席は、開演30分前から大盛況。すでに80人ぐらい。
そして、まもなく開演という段になってお膝送り。100人超えたか。
池袋演芸場のキャパを上回ってます。
外は腰抜かすぐらい暑いのにね。

トリ以外は二ツ目という番組。まあ、円楽党の二ツ目さんはイキがよくてよろしい。

黄金の大黒 げんき
提灯屋 鳳月
相撲風景 兼太郎
(仲入り)
不動坊 ぽん太
水屋の富 栄豊満
やかんなめ 兼好

 
 
 

前座はいつも元気なげんきさん。
私は梅屋敷寄席、これで4連続げんきである。
いつものことだが声も掛かる。

びんぼう長屋と大家を振って、黄金(きん)の大黒へ。
先日、桃月庵ぼんぼりさんが鈴本でこれを掛けていた。前座がやるのなんて聴いたことないけどなと思ったら、早速3か月後にまた前座から聴いた。
前座噺ではありえないけど。なにせ高座の演者が羽織を着てない。
たくさん入ってめでたいということでしょうか。

げんきさんは演技に抑制が効いているのがいいと思う。やりすぎないので聴きやすい。

大家から呼び出しがあった。店賃のことに違いない。みんなで固まって謝ろう。イワシと同じ。
そこに遅れてやってきた男が、店賃じゃないんですよ、大家の坊ちゃんが普請場で黄金の大黒さまを掘り当てたんですって。
なんだめでてえことか。でも着てくものがないのでみんなで羽織の算段。

聴いてるうちに、師匠から来てるものとわかる。
羽織持ってる人?と訊いて「ハイ」と手を挙げるのが師匠っぽい。

羽織持ってると言うやつらの持ち物は、しるし半纏にちゃんちゃんこ。
このあたり、げんきさんが語るとしっかり面白いのがいい。
3人目で出てくるのが、火事場で拾って縫い合わせた、全部の紋が違う三つ所紋。
仕方ないからこれを着て、交互に口上。

2人目の与太郎っぽい口上も、あざとくなくてしっかり面白い。

大家がうちの息子もしっかり叱っておくれと言うので、こないだもう叱りましたと、炭としょんべんのエピソード。
大家が、3発平手で叩いたのかいと訊くと、いえ鉄パイプで。
ここでサゲ。10分の高座。

続いて三遊亭鳳月さん。
本格派で好きな人だが、2年ぶりだ。

昔は無筆が多かったと言うフリから、判じ紋へ。
げんきさんの黄金の大黒から思いついたんでしょうか。薄くツいてる気はする。
今でも有名な判じ紋「かまわぬ」など。
実際にあった判じ紋を紹介する。人の顔に「水」が書かれていて、なんだっけ。
鳳月さんの考えたオリジナル判じ紋クイズも。

これは提灯屋のフリ。
本編自体は、最もよく聴く小遊三型だった。芸協さんから来てるのだろうか。
だが、本編に入る前に「剣かたばみ」「ねじ梅」「くくり猿」などの紋の名前を簡潔に説明してしまう。
こんなやり方は初めて見る。そして、実に効果的でありました。
これ以外の部分も、提灯屋という実に楽しく、結構わかりにくい噺を適切に説明入れて進む。

チンドン屋が広告配ってたが、絵が描いてなくてなんの店が新規開店したのかわからない。
残らず字が読めず、食い物屋だとばっかり思う若い衆。
食い物屋の種類は入りすぎないが、マルとカシワはしっかり客の脳裏に焼き付く程度に触れる。

そこに米屋の隠居が出てきて、読んでくれる。新規開店は提灯屋だ。
誰だすっぽん屋とか言ったやつは。
開店サービスとして紋をタダで入れる。さらに万一書けない紋があったら提灯タダでやる。
さっそく跳ねっ返りの若い衆、提灯タダでもらうために一人ずつ提灯屋へ。

最初の若い衆の際に隠居が、「お前さんの紋はどこにでもある剣かたばみだろ」と声を掛けてるのも上手い。
説明が丁寧だが、決してくどくはない。
「へいへい提灯屋」と口がやや悪い提灯屋。若い衆がカチンとくる程度には口が悪いが、そんなに嫌なやつでもない。

鍾馗さまが大蛇を胴切りにした剣かたばみや、床屋の看板が湯に入って熱いねじ梅。
3人目が面白かった。
「学生さんが故郷に帰る紋だ」
「わかりませんよそんなの」
「キキョウってんだ」

4人目が、そろばんの目が81でかみさんが実家に帰ったくくり猿。

5人目が大家だ。
この際の提灯屋、エキサイトしすぎて頭に血が昇っているというのが普通。
鳳月さんは、異なる道を行く。提灯屋は冷静さを欠いたのではないのだ。
大家がはっきりと「丸に柏」と頼んでいるのに、勝手に若い衆の元締めが来たと思い込んでる提灯屋、そんなわかりやすい紋のわけがないと変なスイッチを押してしまうのだ。

かなりオリジナリティの高い、見事な古典落語でありました。

続きます。

 
 

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