渋谷らくご5 その1(柳家小ふね「松曳き」)

土曜日のシブラク2部は、隅田川馬石、橘家圓太郎、柳亭小痴楽、柳家小ふねという私の好物を集めたお子様ランチみたいな顔付け。
お子様ランチでは響きが悪いのでトルコライスとでも言っておきたいが、あれは3種の組み合わせ。4人全員好物なので。
昼は喬太郎師だったが、4人揃うとこっちの方が強い。

割引券が出た席ではないが、出かける。
今席はなにしろ、参院選の投票済証を持っていくと、6か月有効の割引券がもらえるのだ。
投票済証なんてもらったことなかったが、シブラクのために初めてもらった次第。
しかし、シブラクが国政選挙の投票率を上げたがる目的は、結構疑問。
「投票率を上げれば革新政党が勝つ」と妄想していた人たち、今後も投票率を上げましょうって言い続けるのかな。
すでに都知事選で結果出てたのに。

まあ、そんなこと私にはどうでもよろしい。
600円の割引券、LINEの割引券の出ない公演でありがたく使わせていただきます。

渋谷の街は大混雑。ハチ公口に出てしまって不覚。
次からはもう、新南口から玉川通り経由でしか行かない。

松曳き 小ふね
三年目 圓太郎
(インターバル)
天災 小痴楽
明烏 馬石

サンキュータツオのビデオ前説は季節のものになっていた。
お暑い中ありがとうございますと。
どういたしまして。
しかしマナーを語る場面で気になってどうしょうもない。
音を出さないのは当たり前。
「お暑い中を歩いていらして、ここは涼しいです。眠くなることもあるでしょうが気をつけてください」
ええ! 寝たらいけないの?
私のシブラク睡眠率は非常に高い。
寝るのがマナー違反なんて初めて聞いた。
まあ、イビキのときは声かけさせていただきますよということみたいだけど。

とにかく、開演までの2分間で慌てて寝る。
おかげで今日は開演中寝なかった。

世の中には、落語聴いても眠くならない人もいるんでしょうねえ。
寝るなんて信じられないという感覚なんでしょうか。

柳家小ふねさん登場。
冒頭の挨拶(大勢さまのお運びで)が、なんだか裏返った声。さっそくウケている。
卑怯な人だよ。

柳家小ふねと申します。噺家になることを親に反対されています。親戚にも反対されています。師匠にも反対されています。
なんだかボケていて、こないだ師匠のことを「お母さん」って呼んでしまいました。でも師匠も「おうっ」て答えてました。
ここまでの挨拶を、先日師匠の前でやってしまいました。お前いい度胸してんなと言われました。
趣味がないので時間を持て余しています。稽古でもしたらいいかというと、しません。
なのでいつもボウっとしています。
先日師匠にお供しました。長野の仕事です。
着物を忘れてしまいまして。着物だけじゃありません。帯も襦袢も全てです。風呂敷ごと忘れたんです。
あるのは雪駄だけです。
寝坊して師匠に起こされまして。慌てて出たので風呂敷忘れたんです。師匠が部屋の前でイライラしてました。
向こうに着くまで気づきませんでした。なんか軽いなと思ったんです。
黙ってるわけにはいかないので、師匠に打ち明けました。師匠、着物忘れました。全部忘れました。雪駄だけあります。
やばいな。やばいです。
師匠が着物2枚持っているので、着せてもらいました。でも師匠は158cm、私は176cm、膝むき出しです。
いいじゃないか、そのまま上がれ。
師匠、これは変態です。
世話人の人が、このやりとりを面白がって見てました。その人が言うには、なんとレンタル着物屋があるそうです。
慌てて借りに行きました。
ですが、レンタルされるような着物は、ラメの入った派手なものばかりでした。
師匠、寿輔師匠です。
そうだな、寿輔だな。
でも上がりました。
後日談があって、着物持って帰ってきてしまいました。

こういう話に共感してくれるのが、小痴楽師匠です。そうそう、俺もよくあると言ってくださって。
今日はそういう会です。

抑揚抜きでスラスラ喋るので、本当に面白い。
テーマは粗忽。
お前の親父だ、となんだったかオリジナル粗忽小噺を振って、松曳き。
先日書いたが、でっち定吉の最も好きな古典落語暫定1位。ありがとうございます。

さすが小ふねさんは、ひと味違う。
植木屋の八五郎も、粗忽ファミリーの方に入れてしまう。
普通は粗忽ではなくて、おっちょこちょいではあるが一般人の視野を与えるのだが。
まともな視点なしで乗り切るのだから、かなりの力技。
よって、殿が粗忽。三太夫が粗忽。植木屋も粗忽という、ミラクルワールド。
まともなのは、三太夫の部下だけ。でもこの人も小ふねワールドに片足を突っ込んでる。

こんなので乗り切れるのか? 幸い殿が粗忽でありながら、かろうじて場を取り仕切る感覚の持ち主である。
「餅は餅屋と申します」と言って餅屋を呼びにいく粗忽の三太夫に、「切腹を申しつける」とギャグを言うお殿さま。

八五郎は、もうなんだかわからなくなって「殿公」とか平気で言っている。
実に面白かった。

明日、思い出すことがあればちょっと追記します。
続きます。

 
 

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