柳家小太郎の会@亀戸梅屋敷

夜に出かけられる日に限っていいのがない。
東京かわら版をチェックし直して、「小太郎落語2025年夏」を見つけた。昼の会。
期待の二ツ目。神田連雀亭には出ていない。
会の名をそのままブログのタイトルに使わないのは、亭号なしだと検索にかかりづらそうだからだ。

とはいえ、今日は検索に掛からなくてもいいかも。
内容、いいと思わなかったから。
寄席の二ツ目の出番で聴く小太郎さんは本当に素晴らしい。
だが、独演会でマクラまでたっぷり喋られると、まったく期待外れだった。
と言って別に、この人に笑い要素など期待していたわけではない。
なくたっていいぐらいのマクラがたっぷりで、内容イマイチとなると、本編の価値が下がってしまう。
前座、二ツ目と本格派をうかがわせる高座を見せておいて、独演会でもってマクラ披露したとたんあ〜あというのは、まあ実によくあることではある。
期待のこの人も、このパターンだったか…
ちなみに今後も、マクラ上手くならないまま評判だけどんどん上がっていくタイプでしょう。
柳家らしいといえばらしい。来春真打の小はぜさんなどもそんな感じ。

ガッカリしたが、将来性は一切否定していない。
最後の最後に唸った三十石船の舟唄、朗々と唄い上げ、それは見事だったから。
市馬師仕込みだろうが、こんなことができる人に将来性がないわけはない。
とはいえ、やはり不満の会でした。
理由の大部分はマクラ。

後ろは開けてないがなんと満員。すごい動員力である。

(マクラ:同窓会について)
出来心
(マクラ:柳家小満んについて。セミについて)
千早ふる
(仲入り)
(マクラ:地元認識についての比較文化論)
三十石

本日藤枝東高校の同窓会があるが、この会があるので行けない。
自分のクラスからの参加は4人だけだが、本当は行きたかった。
仲の良かった者じゃなく、そうでもなかった相手に、落語家なんて変わった商売してることを見せつけたいのだ。

共感を得にいってるのはわかるが、その得たい共感の中身がまるでピンと来ない。
なにか変だなと思うが、この段階ではまだひとりの客の個人的なズレかもしれない。
ただ、出来心を終えて続けて二席目のマクラは、もう明白にズレた。客席も変な感じに思えた。
ファンの人は、すでに忘れた程度のズレだろうか。
露骨なウケを狙わない人は蹴られもしない。だが、その分客に噛み合ってないことに気づきにくいのでは。

出来心を教えてくれた小満ん師の話。
業界の稽古の話に興味はかき立てられるが、でも漫談としての内容は平凡。
その後セミが嫌いで、という話題から、「人と比較しちゃいけない」、さらに知ったかぶりに進む流れはもう、ポカン。
少々強引でも知ったかぶりにすんなり入ればいいのに、実に回りくどく、焦れた。長短の短さんの心境。
ちなみに一瞬「強情」に進むのかとも思った。珍品「意地比べ」でも出るんじゃないかと。それだけ迂遠。

仲入り後のマクラは、静岡から京都(立命館)、そして東京で噺家というキャリアを活かした地域漫談。

  • 浜松の人は静岡出身と言わない
  • 京都の人は洛中の狭い範囲しか京都と認めない
  • 東京の人は多摩でも「東京出身」と言うが、23区の人は別に何とも思わない
  • 地元の島田で会をやりたいのに、地元でない焼津が声をかけてくれる

本来的にはすごく面白い話だと思う。私の大好物でもある。
だがつまらない。このネタでつまらないということは、もうマクラ下手なのだ。
語り手の視点というものがぼやけてるからのようだ。
地域ネタには毒や偏見が当然入るが、語り手の視点があるから成り立つ。その視点が欠けている。

それから、膨らまない話を延々するぐらいなら、ウソでもいいのに。
マクラのウソ、芸協のほうが多そう。ウソついていいやという文化が強いのはアッチでは。

出来心も千早ふるも、なんだかぼやけた印象。
でも恐らく、軽いマクラしか振らない寄席の二ツ目出番だったら、同じ内容を褒めている。

最後の三十石は、これは圧巻だった。
延々と舟唄唄い上げ、そのままサゲる。こんなことができるひとは、真打間際だってそうそういない。
もともと故・米丸師みたいな美声が、フルに活かされる唄。
柳家らしく、中手をもらわない技術まで上手い。

圧巻の高座聴いても、この日は取り返せなかった。
まあ、小太郎さんが好きでいつも来てる人には、私の不満のほうがあるいはピンとこないかもしれない。そこまで悪くなかったのにと。
しかし、マクラ下手についてだけは、多少共感してもらえるのではないか。
別に漫談でもっと笑わせて欲しいのではない。本編の差し障りになるのは何とかして欲しい。

小太郎さんは、また寄席の喬太郎師の芝居あたりで。
それは別に避けません。

批判多めになっちゃって、書くのに時間掛かりました。
それでアップ遅れた。

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