昇市さんのマクラはたっぷり15分。
文治師について調べたら、前座の「のい治」さん辞めてたことを知る。
楽しそうな芸協でも、辞める人はいるという当たり前の話だが。
子供を振る。雛鍔へ。この酷暑の時季に。
春先のほうが「ぽい」とは思うが、本来的には季節はない噺。
爆笑マクラをすっと消したのが、まず見事。
マクラをスパッと遠くに追いやり、前座噺の口調で語るのが秘訣。
雛鍔は前座噺ではないが、前半の夫婦のやり取りは初天神っぽい。
雛鍔のサンプルが少ないためもあるが、こんなやり方は観たことがない。
聴きながら、これ雛鍔だよな? と思っていた。
フラットに進められる前半、実にいい感じ。
若さまの描写、穴開き銭の描写がいい。
袴を履いてちょこまかしてる若さま、瞬時にその可愛いさまが浮かぶ。
穴開き銭の描写も、手短ながら実にリアル。初めて穴開き銭を見た子供のリアルが伝わる。
金坊は忍者のように壁に張り付いて夫婦の話を聴いている。このあたりからちょっとモードが変わってくる。
おっ母さんからおあしもらって遊びに行く金坊だが、こやつはお客さんが来ると親父に小遣いねだるクセがあるそうな。
親父が断ると、泣きながら去っていく。お客さんが小遣い出さざるを得なくなるという手練れ。
旦那の来るくだりから人情噺になるわけだが、ここをウェットにやらず、あくまでも滑稽噺として描く。
私ウェットなのが嫌いなわけじゃないが、昇市さんの方法論は一本芯が通っていていいなと思う。
ちなみに亭主の、客人の前で繰り広げられるかみさん指導は抜いていた。
これをやりたい演者もいるだろうが、現代社会ではモラハラですからね。
今回改めて聴いて、ないほうがいいなと思った。
「♪こんなもの拾った」で金坊再登場だが、旦那が小遣いくれようとして、銭がわからない子だということに気づきやめる。
この際旦那、「今舌打ちしなかったかい?」。
手習いの道具一式をもらった喜びよりも、まず小遣いもらおうとしていたのでガックリしているのだ。
なるほど、前半の客人に小遣いねだる場面がここで活きる。
いやあ、いいですね。たっぷり本編30分弱。
古典落語の再解釈が見事だ。客3人でも素晴らしい一席。
6年間も昇市さんにご無沙汰してしまったことをちょっと悔やんだ。
続いてギリギリ間に合った笑福亭希光さん。
昇市さんは客が3人でも、落語の作法は通常スタイル。客に直接ではなくて、客の集合体に語りかける。
だが希光さんは、客ひとりひとりに語りかけようとする。露骨に「お父さん」とか来るわけじゃないけど。
私は普段、うんうんうなずいて噺を聴いたりしない。むしろ過剰にそうする女性を見て、不快になることもある。
しかし、演者が語りかけているのに微動だにせず聴くことはできない。
なので軽くうなずきながら聴く。そうしないと変なので。
先にLINEで遅れるかも、と連絡してたんですが、なんとか着きました。
着いたら、もう着替えた昇市さんが仁王立ちでね。
ぼくは3分あれば着替えられますから、当初の順番で出てもよかったんですが。
まあ、もう着替えたんなら譲ろうと思いまして。
汗が引いてませんでしたが、昇市さんがたっぷりやって、すっかり冷えてしまいました。風邪ひきそうです。
…少しは替わってくれたことに感謝せいっちゅう話ですが。
なぜ遅れたかと言いますと。
最近、薬味に凝ってるんですね。
薬味はまあ皆さんお使いでしょうけども、薬味自体うまいなと思うようになったんです。
薬味に凝るなんてわからないかもしれませんが。
最初に凝ったのが大根おろしです。
うちの近くに業務スーパーが2軒あります。1軒は「業務スーパー」という名のスーパーで、もう1軒は「肉のハナマサ」です。
このあたりをよく見ています。ライフやサミットもありますけど、もっぱら業務スーパーですね。
Everyday Low Priceのオーケーもありますよ。
ともかく業務スーパーで、大根を1本丸ごと買いまして。
これを一生懸命おろしてタッパーに入れます。
でも気づいたんですよ。大根って、置いておくと柔らかくなりますね。
柔らかくなると、大根おろしにできなくなります。
こういうあたりで客として、うんうんとうなずくわけである。
私もスーパー大好きなので、スーパー談義は楽しい。
そもそもひらい圓蔵亭のあとは、必ず近所のコモディイイダで買い物するんだから。
今回は珍しくしないで帰ったけど。
大根おろし過ぎまして、右手に負担が掛かるようになりました。
こないだ扇子落としましたもん。こう(実演)。
そんなこんなで、薬味の興味がネギに移りまして。
先日、ここひらい圓蔵亭を稽古のためにお借りしました。昼でした。
師匠からもよく歩けと言われてます。師匠も本当によく歩きます。
師匠は浅草演芸ホールの出番だったら、上野駅から歩いてますね。
師匠は噺家が亡くなるたびに、ほれみい、あいつ歩かんかったからや言うてますね。亡くなる前に言ってあげたほうがいいんですが。
三枝も歩かなんだらええのに言うてます。
三枝(文枝)師匠、師匠とほぼ同期なんですね。半年ぐらい違って師匠が先の入門なんですが、大阪ではこれぐらいも同期扱いです。
東京では一瞬でも先に入ったほうが先輩ですけども。
ともかく、稽古が終わったのが昼間で、隣駅の亀戸まで歩いてみようと思ったんですよ。
歩いていったら商店街がありまして。古い商店街です。
八百屋さんの店先除いたら、ネギが6本1束で売ってます。
結束バンドで巻いて。いや、結束バンドだったらちぎれますから違いますね。とにかく巻いてあって。
これ、いくらだと思います?(どうぞと客に振る)
あ、変な間ができてしまいました。まあ、それぞれ思っていただければいいんですけど。
ライフやサミットでは、安かったとして3本で198円というところですよね。
この6本のネギがですね、98円ですよ!
こらもう買わんとと思いまして。
その日はリュックでした。着物を背負っています。
着物をぐいぐい脇に寄せて、ネギを2束買って、突っ込みました。
電車に乗ったら、ネギを背中に刺した男はまあジロジロ見られます。
あんまりスーパーの買い物袋買って電車乗りませんもんね。
私でっち定吉は東京じゅういろんなところで買い物しますんで、買物袋抱えて電車乗るの平気ですけどね。
さて、希光さんの遅刻の理由はいつになったら判明するのか?
まるで千早ふるのごとく、まるっきり違う話に移っているのではないか?