稽古の噺から進んだ緑太師の本編は、あくび指南。
看板夫人の出ない、私の好きなタイプ。柳家には多いね。
稽古はとっとと始まる。
先生の真似をするたびに吉原へツーと行ってしまう、楽しい一席であったが、ちょっとうとうとしてしまって記憶が飛んでいる。
仲入り休憩は熟睡して後半に備えました。
また緑太師から。
最近落語協会は女性が減りまして。
女性が楽屋にいるといいですよね。桃花ねえさんなんかいますと、希林さんなんて妙に張り切って仕事しだすんです。普段働かないくせに。
「ねえさん、今日はぼくはなんでもしますよ」とか言っちゃって。
厳しい師匠が昔は多かったです。「お前、誰の弟子だ!」とか怒鳴りまして。本当ですよ。
そんなときは謝りにいくわけですけども、ぼくは叱られたときいつも桃花ねえさんに一緒に詫びてもらってました。
そうすると、師匠方も割と引き下がるんですよ。
「桃花さんは小朝さんのところで頑張ってるねえ」とか言っちゃって。
先のマクラと合わせ、落語協会をパワハラの一言で言い切って進む緑太師。
まあ、客の前でパワハラ呼ばわりできていれば色々と大丈夫でしょう。
別に文楽師いじりは本気の糾弾ではないにしても、そこにパワハラ構造があることには、若手としては目は潰れないのだと思う。
浮ついた男どもの話から、引越しの夢へ。
6年前に、二ツ目だった緑太さんの引越しの夢を聴いた。黒門亭のボードには「口入屋」という上方落語の演題が載っていた。
そんなバカな、と思ったが。口入屋なんて出ないし。
ともかく、当時すでに完成していた噺と思う。
さて、緑太師のせいとは思わないのだが。
浮ついた男どもを描くこの噺。私の大好物の認識でいたのに。
事実6年前も楽しんだわけだし。
なんだか、既存の演出ではもうダメかもしれないなと思った。色っぽい小遊三師ぐらいならともかく。
この噺の女中は、記号である。
現代は、美人であることしか描写されない女中に夜這いを掛けようとする噺、そう簡単には楽しめないことに気づいたのだった。
ただ、突破口はあるとも思った。
「具体的なあの娘」が相手だったら、行けるかなと。
女中を記号から解放する。そして、知恵を尽くして全力で抵抗する描写を入れておく。
つまり、「性欲をこらえきれない男どもと、そうはさせない女」という主体性のぶつかりがあれば成り立つのでは。
おかみさん登場のシーンにおいて、「ほうら思った通りだ。簡単に3人引っかかった」だったら、楽しいんじゃないか。
夜這いが出る時点でダメ? それはさすがに寂しすぎるが、でもそんな噺もたくさんあるけどね。
トリは花いち師。
浜松の、お母さんとお姉さんの話。いつもするね。
明日もお姉さんと浜松の相撲の巡業に行きますだそうで。
以前に行った際に、地元のテレビに映った。あれがぼくの1年間唯一のテレビ出演です。
お姉さんと、「国宝」も観にいった。お姉さんは映画以来、女形にハマっていて、その口調で遊んでいるそうな。
お姉さんも好きなお菓子の話へ。
過去2度聴いた「お菓子の伝言」である。
3度めだが、全然嫌じゃない。この噺、細部が実によく作られているのだが、細かいところは忘れちゃう。
繰り返して聴いて、ようやく全体がクリアになってきた気がする。
これは新作の醍醐味の一つだと思う。古典と違って脳内テキストが確立していないので、刻んでいく楽しみがあるのだ。
また近いうちに聴いても全然楽しめる。
冒頭のトークで膝に置いてた駒治師の手拭いを噺の中でも使っていた。
前回この噺聴いたのが黒門亭で、そのときと同じ。
小学生男子のカケルくんに婆さんがヨックモックを握らせ、覗いてごらん。ここになんて書いてあるか読めるかい。
読めないよ。それが大人の視野なんだよ。ヨックモック外してごらん。
あ、夢って書いてある。
そうだよカケルくん、大きな視野で夢を追いなさい。
カケルくんの夢は宇宙飛行士であり、劇中で夢を叶えるのであった。
ちょっとおませなミキちゃんは、二人から告白されてどっちと付き合おうか悩んでいる。
婆さんはオレオ占いを教えてやる。
ビスケットを剥がして、多くクリームのついたほうと付き合いな。
婆さんはこれで家を買うか賃貸か決めたんだよ。
それから古典か新作か悩んだときもこれで決めてるよ。
3人めの坊やまで、ようやく記憶の溝が刻まれてきた。
ユズルくん(だったかな)は、お菓子を万引きしようとして見つかる。
ドキドキしたかった坊やに、婆さんはきのこの山とたけのこの里を混ぜて、ドキドキさせてやる。
とんがりコーンを指にはめて、どの指から食べるかドキドキしないかい?
あとなんだっけ。やっぱりまた聴かないと。
時代が大きく下ったサゲ付近の記憶はまだモヤモヤしたまま。
ともかく、花いち師の代表作になる一席と思う。
最後にチラシを見せて、9月池袋中席は若手の日替わり主任ですのでよろしくお願いしますと花いち師。
着替えた緑太師も顔を出す。
桃花さんも出まーす。
緑太師は、まだ真打なりたてなので出番なし。
花いち師は12日の主任。夜は喬太郎師だし居続けできれば行きたいな。
これで8月はおしまいと思う。
7席聴いて、木戸銭合計が、狙ったわけでもないがジャスト1万円。
寄席四場と大ホールの落語会がないと、リーズナブル。でもそちらもどんどん行きます。