阿佐ヶ谷アートスペースプロットの入船亭遊京3 その1(雷門音助「長短」)

「遊雀好み」のレビューはアクセスの伸びがいつになくよかったです。好評だったようで。
そのわずか2日後から、新たな落語会。引続きご愛顧のほど。

東京一安くて旨いコーヒー豆を買いに月曜、阿佐ヶ谷へ。
久々に阿佐ヶ谷アートスペース・プロットで入船亭遊京さんを聴こう。
会の名は、南阿佐ヶ谷すずらん通り落語会という。
昨年、ここに来たらこの会とユニットの「B3」、2回連続で会が中止になっていた。
まあ、急遽なくなったわけじゃなくて私の確認不足です。
今回はちゃんとあったが、開演時刻を30分間違えて早く来すぎた。商店街のベローチェで時間潰してから再度。

実に小さな会場だが、つ離れしてました。大盛況。
なにせ遊京さん、今月下席からは扇白で真打。
この日の相方、雷門音助さんも来春に五郎で真打昇進。
なんとふたりで合計2時間45分もやっていた。これは実にお得である。
大ネタ以外もたっぷりとやっていた。たっぷりだからってしんどいなんてことはなく。

遊京、音助という組み合わせは初めて観る。
なんとなく芸風も、顔も似ている気がする。
たが、組み合わせて埋没してしまうような個性ではない。

長短 音助
宿屋の富 遊京
(仲入り)
粗忽の釘 遊京
質屋蔵 音助

音助さんから登場。
この会、もう81回ですって。ペース早すぎませんか?
100回を超えるような会もありますけど、だいたい古い会です。
でもこの会は確か2021年のスタートですよね。わたし第1回に呼んでいただいたので。
ものすごいペースですね。みなさんはもう、81回皆勤ですか?
平日の昼、絶妙な時間帯(11時半開演)ですね。昼の会はだいたい2時開演、たまに1時がありますけど。
みなさんお近くですか? 他県から来られた方はいらっしゃいます? 栃木とか。
あ、本当に栃木の方がいらっしゃるとは。はるばるようこそ。

遊京アニさんももう今月から真打で。
私とは協会が違いますけど、実は学生時代から知ってるんです。
お互い京都の大学にいまして、同学年です。
ただちょっとだけ、ほんのちょっとだけ偏差値が違うんですけど。
私は龍谷大学です。
龍谷大平安が甲子園に出るときに、ちょっとだけ名前が露出します。
龍谷大学は、仏教界では有名なんですね。仏教界の東大って言われてるんですよ。いえ本当です。
だから今日は、仏教界の東大と、京大の組み合わせです。

お互い落語研究会にいまして。
京都の大学が6校集まって、大喜利をやったんですね。
松竹芸能のオーケイさんというコンビの小島さん。今のコジママジックさんですが、この方が司会で。
オチケンの学生がボケて、小島さんがハリセンで引っぱたく大喜利でした。
楽しかったですね。

ぼく京都の人大好きです。まあ、こんな始め方をしたらこのあと落とすんだろうと想像が付くでしょうけど。
学生時代、先斗町のそば屋でバイトしてました。
ぼくはオチケンの部室に入り浸りで、バイトは週1回ぐらいしかしてませんでした。
なので覚えが悪いです。
ざるそばとせいろそばとを、間違えて逆に出してしまいました。量が違うんです。
店長に申し出たら、胸ぐらつかまれてしばくぞと。
静岡出身なんで、しばくぞなんて会話をする人は周りにいませんでした。怖いです。
でも店長、お客さんに謝って作り直してくれました。
大阪出身の店長は口は悪いですが、次の出勤日に謝ったらもう許してくれました。誰にでもあることだからと。
オーナーの女性が京都の人で。
給料日に言われました。
秋山くん注文間違えたんやってなあ。まあ、誰にでもあることやさかいにな。
ああ、優しいなあ。
ほんでな。その日の給料引いといたで。
世間の厳しさを教えてもらいました。

でも本当にいい人だったんですよ。ぼくがオチケンだというので、仲間もまとめてお座敷に連れてってやると言ってくれたんですね。
1万円だけ用意しなさいと。あとは持つからと。
オチケンの仲間に話をしたらみんな興味津々でしたが、誰も1万円を用意できませんでした。
噺家になってみると、行っておけばよかったですね。

先日、同じく静岡出身、京都で学生時代を過ごした柳家小太郎さんのマクラが消化不良だった。
音助さんは手練れだ。
爆笑とかそういうものではないけども、しっかり楽しいマクラを聴かせてくれる。
一度聴いただけでこうしてすらすら中身を起こせるというのは、そういうことなのだ。

本編は長短だった。
雷門に伝わる、長さんが上方の人というバージョン。
面白いのだが、またかと思う。先日、梶原いろは亭で聴いたから。

ちなみにラジオ深夜便(たい平師が解説で出ていたもの)で、柳家風柳師が、「長さんが江戸っ子。短さんが上方」というものを掛けていた。ちょっと衝撃。
古典落語も意外と自由である。

さて一瞬またかと思った長短だが、つくづく感心させられたのだった。
長さんののんびりっぷりが、もはや限界を超えている。
なのに客は、キセルの吸い口をおでこにぶつけてしまい、ゆっくり口元に直すのんびり男を見て、焦れたりはしない。
もはや変なワールドに連れて行かれてしまうのだった。

故・小三治が極端な間を取るのは有名だった。
客は極端な間に感嘆するが、でも本当は一度焦れているのである。
一瞬焦れたマイナスを、最終的に取り返してくれるから感嘆しているわけであるが、あざといテクニックと思う。
それと比べて音助さん、ものすごくゆっくりなのに、客を焦らさない。
客を拒絶するためのテクではなく、客が長さんの気持ちに寄り添うことを確認しつつ、ゆっくりした所作を入れるのである。
だから快しかない。
ちなみにラジオでこれやったら放送事故になりそう。
だが、恐らくラジオのときはもう少しスピーディにできそう。
ゆっくりしているという情報を伝えた上で、客の楽しみのためにわざわざゆっくりしているのだから。

小ネタなのに30分。もちろん退屈などしない。

続きます。

 
 

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