阿佐ヶ谷アートスペースプロットの入船亭遊京3 その2(「宿屋の富」)

続いて21日から真打で扇白になる遊京さん。

私の真打の話が出ましたけど、音助さんも来年真打ですからね。
音助さんはこの会の第1回と第2回に来てもらいました。
当時はコロナ禍で、杉並区の補助が出るというので会場を見つけまして。
私、この会はずっと音助さんとやるつもりだったんですよ。荻窪に住んでるとばっかり思ってたもので。
でも遠くに引っ越してたんですね。なので申しわけなくなってそれからいろんなゲストを呼ぶようになりました。
私も以前は近所に住んでました。ただ、東京はタテの移動が難しいんですね。いったん新宿を回ったりとか。
自転車だと近いんですけど、自転車でずぶ濡れになったりして大変でした。
あの大喜利の話、懐かしかったですね。
コジママジックさんには叱られました。君たちは真剣味が足りないとか。
大喜利というものは、入念な準備が必要なんですね。
プロの思いを教えてもらいました。
ぼくは回答者で並んではいなかったかもしれません。留学生の部員がいたので、彼に出てもらった記憶があります。

昨日は謝楽祭でした。お越しくださった方々はありがとうございます。
私はいつものとおり入船亭で芋を売ってました。
今年は、扇橋アニさんが新しいことしたいとサイダーを売ってました。日本酒のサイダー割という、自宅では絶対に作らないものを。
でも自宅でやらない分、意外と好評でした。
扇橋アニさん、発注を間違えまして。最後まで余ってました。
芋のほうは毎年、後輩の自宅に持ち帰って冷凍してもらってたんです。これが評判悪くて。
お客さまに喜んでいただけばいただくほど、私の内輪の評価が下がるわけです。
でも今年はヤマトの営業所留置というものがあるのを知りました。ビラ配りで一緒に近隣を回った琴調先生に教えていただいたんです。
今年は楽でした。私の評価も落ちません。
芋もよく売れるので発注数増やしましょうかと扇橋アニさんに相談したんですが、いや、売り切れたほうがいいんだよって言われました。
芋は売り切れましたが、サイダーは余ってました。
来年は謝楽祭6月になります。やっぱり9月は暑いので。
湯島天神もなかなか日程取れないんですね。6月も結婚式が多いみたいで。
実行委員長は江戸家猫八先生で、副委員長は弟弟子の扇太です。
謝楽祭のあとは扇辰一門、扇里師匠と楽しく打ち上げしました。

遊京さんの落ち着いた語りのマクラ、クセになる。
声を決して張らず、考えられうる最も低いテンションで語る。セリフには感情を入れない。
でも陰気ではない。
楽しいマクラの秘訣を探っていったとき、初めてその低い、ハネないテンションのたまものだということに気づくのである。
マクラは基本的にはテンション高めの人のほうが面白い。だが方法論はそれだけではない。

湯島天神が富の舞台となる、宿屋の富へ。
私は舞台の神社は富岡八幡宮だと思っていた。鯉昇師はそうじゃなかったっけ?
調べ直すと、一般的には椙森神社なんだけど。

マクラのテンションのまま、馬喰町の宿屋でホラを吹く男で始まる。
実にいい感じ。
方法論としては、ことさらに大げさに語りそうだが、逆を行くのが遊京さんの類まれなるセンス。
低いテンションで吹く大ボラは実に楽しい。
離れまで10日掛かるとか、泥棒が千両箱を持ってくエピソードとか、富士山は自分のものとか、そんなホラが違和感なく聞こえてくる。つまり我々客が宿屋の主人と同化して、催眠にかけられているのだ。

遊京さんの語りは棒読みではない。だが、私がしばしは評価する棒読み手法と共通点を感じる。
抑揚も語り口もいったんフラットにすることで、その先無限の広がりが生まれるわけである。
棒読みでない人から、棒読みの効能を再確認。

富のシーンがまた、低いテンションから無限に上を狙う技法で実に楽しい。
神様に約束されたので二番富の500両当たる男がこの場面の主役。
なんでも、夢の中で神様に謝られたんだそうで。お前さんに当ててやる予定だったが都合によりできなくなった。すまん。
夢の中で神様につかみかかったら、二番富で勘弁してって言われたのだと。ここは上方落語(高津の富)にも出てこないオリジナルか。
500両持って吉原に行き、馴染みの女を身請けする妄想は、実に楽しい。
この男結局、組と、四桁のうち三桁まで一致しているのだが、最後はイチ番でなくてハチ番。
「シチ番」じゃないんだと思った。ハチの方が明確に聞き取りやすくて親切。

本ものの主人公は、騒ぎの後でやってくる。
当選番号見比べて、当たらねえもんだな。
いったん手拭いの富札を地面にポイして、再度拾い上げるのがたまらない。

あとは楽しいサゲまでテンション保って駆け抜ける。
真打までカウントダウンの遊京(扇白)さん、改めて凄い腕。
春秋合計10人の年功序列大量真打だが、この人は必ず抜けてきますよ。

続きます。

 
 

コメントする

失礼のないコメントでメールアドレスが本物なら承認しています。