NHK新人落語大賞の続きです。
ちなみに前回の大阪開催は2023年(令和5年)。
司会は今回と同じく吉弥師で、アシスタントは牛田茉友アナでした。
今年の参院選東京選挙区で国民民主から出た(当選)あの人である。
改めて審査員の採点結果を振り返ると、結構ひどくないだろうか。
文珍師は、かしめさん以外5人に10点。
小朝師は、かしめ、米輝以外の4人に10点。
鶴ちゃんは、10点が3人、9点が3人。
日高美恵氏は8〜10に振り分けまあまあちゃんとしてるが、10点が3人。
広瀬和生氏は、満点を付けない方針らしいのはいいとして、やっぱり9点が3人。なぜか、かしめさんにもトップの9点であり、米輝さんが6点。
誰かを選ぶ審査でなくて、気に入らない誰かを落とす審査である。
トップがそれぞれ見事であったのは事実としてもだ。
そうでないのは、2点のレンジに収めた鶴ちゃんだけという。これはこれでどうなんだか。
ありがたみないなー。
このいい加減な審査で最大公約数的に優勝者が決まった事実は、今後一花さんの祝賀ムードの中忘れ去られることになる。
私も今後いちいち取り上げてお祝いに水を差すつもりはない。でも一応書き残しておきます。
文珍師はほぼ毎年こんな審査だから!
バラエティ番組のコメンテーターと考えるとアドリブで非常にいい仕事をしてらっしゃるのだが、さすがに審査員は勇退いただきたい。
現役の噺家としては師は好きな人なので、むしろこのような役割ではキャリアに傷がつく。
審査員も難しいとは思う。今回出てない堀井憲一郎氏はいいと思うが。
昔むかし、席亭を座らせたら露骨な東西贔屓が発動し、見るに耐えなかったし。
長井好弘氏なんかよく西の落語も聴いてて、いいと思うけど。
噺家枠は、ゼロベースでじっくり考えてみたが東が柳家喬太郎(または林家たい平)、西が今回司会をしている桂吉弥でどうでしょう。
キョンキョンは東西、所属、古典新作まったく自由に審査できる貴重な人だと思う。たい平師も。
さて、私の採点。
今年は「創作力」「演技」「フラ」の3要素で採点してみたら非常にやりやすかった。
創作力は、新作のほうがやや有利になるのはいたし方ない。ただ番組の傾向とは一致している。
私は日頃から、古典落語をやるにも創作力が必要と主張している。立派な古典落語なら新作に引けを取らない。
演技力には、喋りも入る。昨日褒めた一花さんのカミシモの瞬時の替えなども含む。
フラは難しいが、その人が高座にいることのおかしみ、と解釈していただきたい。
| 出場者 | 創作力 | 演技力 | フラ | 審査員得点 |
| 立川かしめ | 7 | 7 | 8 | 42 |
| 桂九ノ一 | 9 | 10 | 9 | 46 |
| 春風亭一花 | 9 | 9 | 8 | 49 |
| 春風亭昇羊 | 8 | 9 | 8 | 47 |
| 笑福亭笑利 | 10 | 8 | 8 | 49 |
| 桂米輝 | 10 | 10 | 10 | 42 |
米輝さんの数字は非常に高い。高座の最中に、演技9、フラ9だったのを嵩上げしてしまった。
こんな結果になった今も、そんなに間違ってるとは思っていないのだけど。
一花さん、「客観的には優勝」と思ったのは本当だが、その割には点数低い。
いつもマクラが楽しい人なのに、渋谷のギャルのマクラはそれほどでもなかったですね。
さて、昨日書いていないところを振り返ります。
米輝さんは別格(規格外)として、一花さんより高評価をした桂九ノ一さん。
御公家女房というが、なんのことはない、延陽伯(東京ではたらちね)。
見台は出さない。お辞儀する場面があるからか。
見台ないためもあるが、東京の噺家っぽさも感じる。笑点特大号などではコテコテを強調するこの人が、高座では東京っぽく見えるのは面白い。
いきなりルッキズムを裏返したクスグリ。私顔で選ぶなんて言うてまへんでと言いつつ、写真を見て気に入る男。
昨年は「暴力」の洗練にこだわっていたし、現代社会を生き抜く噺家にふさわしい。
「すたんぶびょう」の繰り返しギャグも見事。
古典落語を現代に活かす見事な腕。
さらに最後、言葉の難しい女房に合わせて、物売りに芝居を持ち込む。
ちゃんと芝居も見て勉強してるわけだ。
広瀬氏はこの人も7点だった。まったくわからないなー。
かしめさん9点は、こしら師の弟子だから? いくらなんでもそりゃないと思うけど。
かしめさんをいきなり小朝師が否定してたので、それで嵩上げしたというのが私の想像。
トップバッターの立川かしめさんはまったく不発に思えた。
とにかく場を掻き回すのに期待したのだが、なんだか中途半端な開口一番。
饅頭怖いの改作の仕方も中途半端。クスグリも不発気味。
食物アレルギーと、「大人なんだから」の繰り返しはアイディアだと思うが、そんなにハマらない。
「年貢が怖い」はまるでハマらず、場内も飽きたらしく逸れていた。
スピーディな口調自体は悪くないものの、ギャグを増やしたい方向性とマッチしていない。
結末は普通。
正直、この高座を聞く限りは、どうして予選を突破したのかわからないと思った。
ただ、録画を観返してみた。普通のサゲに向かうラスト付近まで我慢すると、結構面白い。ただ、そこまで我慢できないのだ。
春風亭昇羊さんは、昨年と比べても「普通」でしたか。
権助提灯は、演目の選択としてどうだったか。
細かい部分は色々変えてるのだけど、変えた効果が既存の権助とそれほど変わらない。
昇吾アニさんのマクラもよくわからない。
(追記)
小朝師のブログによると、全員終わってから点数つけるやり方から、1人ずつ点数提出になったそうで。
道理で結果発表早いと思った。
この方式のため相対評価ができず、「いい=10点」になりがちなのだろうか。
でもやっぱり、やるせない審査です。