2025NHK新人落語大賞(下・採点に不服あり)

NHK新人落語大賞の続きです。

ちなみに前回の大阪開催は2023年(令和5年)。
司会は今回と同じく吉弥師で、アシスタントは牛田茉友アナでした。
今年の参院選東京選挙区で国民民主から出た(当選)あの人である。

改めて審査員の採点結果を振り返ると、結構ひどくないだろうか。
文珍師は、かしめさん以外5人に10点。
小朝師は、かしめ、米輝以外の4人に10点。
鶴ちゃんは、10点が3人、9点が3人。
日高美恵氏は8〜10に振り分けまあまあちゃんとしてるが、10点が3人。
広瀬和生氏は、満点を付けない方針らしいのはいいとして、やっぱり9点が3人。なぜか、かしめさんにもトップの9点であり、米輝さんが6点。

誰かを選ぶ審査でなくて、気に入らない誰かを落とす審査である。
トップがそれぞれ見事であったのは事実としてもだ。
そうでないのは、2点のレンジに収めた鶴ちゃんだけという。これはこれでどうなんだか。
ありがたみないなー。

このいい加減な審査で最大公約数的に優勝者が決まった事実は、今後一花さんの祝賀ムードの中忘れ去られることになる。
私も今後いちいち取り上げてお祝いに水を差すつもりはない。でも一応書き残しておきます。

文珍師はほぼ毎年こんな審査だから!
バラエティ番組のコメンテーターと考えるとアドリブで非常にいい仕事をしてらっしゃるのだが、さすがに審査員は勇退いただきたい。
現役の噺家としては師は好きな人なので、むしろこのような役割ではキャリアに傷がつく。
審査員も難しいとは思う。今回出てない堀井憲一郎氏はいいと思うが。
昔むかし、席亭を座らせたら露骨な東西贔屓が発動し、見るに耐えなかったし。
長井好弘氏なんかよく西の落語も聴いてて、いいと思うけど。

噺家枠は、ゼロベースでじっくり考えてみたが東が柳家喬太郎(または林家たい平)、西が今回司会をしている桂吉弥でどうでしょう。
キョンキョンは東西、所属、古典新作まったく自由に審査できる貴重な人だと思う。たい平師も。

さて、私の採点。
今年は「創作力」「演技」「フラ」の3要素で採点してみたら非常にやりやすかった。
創作力は、新作のほうがやや有利になるのはいたし方ない。ただ番組の傾向とは一致している。
私は日頃から、古典落語をやるにも創作力が必要と主張している。立派な古典落語なら新作に引けを取らない。
演技力には、喋りも入る。昨日褒めた一花さんのカミシモの瞬時の替えなども含む。
フラは難しいが、その人が高座にいることのおかしみ、と解釈していただきたい。

出場者 創作力 演技力 フラ 審査員得点
立川かしめ 7 7 8 42
桂九ノ一 9 10 9 46
春風亭一花 9 9 8 49
春風亭昇羊 8 9 8 47
笑福亭笑利 10 8 8 49
桂米輝 10 10 10 42

 

米輝さんの数字は非常に高い。高座の最中に、演技9、フラ9だったのを嵩上げしてしまった。
こんな結果になった今も、そんなに間違ってるとは思っていないのだけど。

一花さん、「客観的には優勝」と思ったのは本当だが、その割には点数低い。
いつもマクラが楽しい人なのに、渋谷のギャルのマクラはそれほどでもなかったですね。

さて、昨日書いていないところを振り返ります。
米輝さんは別格(規格外)として、一花さんより高評価をした桂九ノ一さん。
御公家女房というが、なんのことはない、延陽伯(東京ではたらちね)。
見台は出さない。お辞儀する場面があるからか。
見台ないためもあるが、東京の噺家っぽさも感じる。笑点特大号などではコテコテを強調するこの人が、高座では東京っぽく見えるのは面白い。

いきなりルッキズムを裏返したクスグリ。私顔で選ぶなんて言うてまへんでと言いつつ、写真を見て気に入る男。
昨年は「暴力」の洗練にこだわっていたし、現代社会を生き抜く噺家にふさわしい。
「すたんぶびょう」の繰り返しギャグも見事。
古典落語を現代に活かす見事な腕。
さらに最後、言葉の難しい女房に合わせて、物売りに芝居を持ち込む。
ちゃんと芝居も見て勉強してるわけだ。

広瀬氏はこの人も7点だった。まったくわからないなー。
かしめさん9点は、こしら師の弟子だから? いくらなんでもそりゃないと思うけど。
かしめさんをいきなり小朝師が否定してたので、それで嵩上げしたというのが私の想像。

トップバッターの立川かしめさんはまったく不発に思えた。
とにかく場を掻き回すのに期待したのだが、なんだか中途半端な開口一番。
饅頭怖いの改作の仕方も中途半端。クスグリも不発気味。
食物アレルギーと、「大人なんだから」の繰り返しはアイディアだと思うが、そんなにハマらない。
「年貢が怖い」はまるでハマらず、場内も飽きたらしく逸れていた。
スピーディな口調自体は悪くないものの、ギャグを増やしたい方向性とマッチしていない。
結末は普通。
正直、この高座を聞く限りは、どうして予選を突破したのかわからないと思った。
ただ、録画を観返してみた。普通のサゲに向かうラスト付近まで我慢すると、結構面白い。ただ、そこまで我慢できないのだ。

春風亭昇羊さんは、昨年と比べても「普通」でしたか。
権助提灯は、演目の選択としてどうだったか。
細かい部分は色々変えてるのだけど、変えた効果が既存の権助とそれほど変わらない。
昇吾アニさんのマクラもよくわからない。

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(追記)

小朝師のブログによると、全員終わってから点数つけるやり方から、1人ずつ点数提出になったそうで。
道理で結果発表早いと思った。
この方式のため相対評価ができず、「いい=10点」になりがちなのだろうか。
でもやっぱり、やるせない審査です。

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