あじぷら亭たびじのはなし その3(桂鷹治「宿屋の仇討」)

鷹治さんの他に振っていたマクラ。
豊島区に住んでますが、1本でここまで来れました。武蔵小杉の同じホームで乗り換えただけです。
ただここまで1時間半。往復3時間。高座は45分です。
あとはホルムズ海峡がどうの。政権がどうのと、語りすぎない程度に。
司法試験を目指していたと語ると客は、この人インテリなのねと思って聴くわけだ。
そうするとインテリっぽいネタも入れないとならない。インテリはインテリで不自由なところもある。
私は、コロナ禍の頃話していた、主夫ネタなど好きですね。

神奈川宿が舞台で、宿屋の仇討。
昨年聴いた、小痴楽師のものによく似ている。出どころは同じなのであろう。
ただ、圧倒的にスピーディ。語り口ではなく、展開である。
明確な方法論がある。
冒頭の「しじゅう3人」は勇気いりそうだがバッサリカット。
これ入れると、万事世話九郎が部屋を替えろというときに、軽い矛盾が生じるのは確かだ。43人も入れる余裕があったのに、満室なのかという。
イタチのくだりもない。これはまあ、一発入れとくだけで侍がシャレの人になってしまうので、避けたいのだろう。
ただその代わり、「●●屋は手前で」(屋号は忘れた)を膨らませ、3人組の威勢のいいさまはしっかり描かれる。
ズッコケ3人組がどんちゃん騒ぎのシーンも、直接は描写されない。これも、万事世話九郎の口から語られる。
小田原宿の一夜を、番頭が代わりに語るなんてのもない。
そしてラストシーンがめちゃくちゃ速い。速すぎて、脳が追い付かなかった。
縛り上げられた3人が、怯えて一夜を過ごすシーンがない。
やたら速い目的はわかる。いたずらにしては少々タチが悪いわけで。

少々違和感も覚えたのだが、ただせっかく目的あってのばっさりなので、このまま練り上げてほしいなと。
それに宿屋の仇討、まだまだクスグリが満載だ。

たったひとつだけ残念なのは、鷹治さん多少噛む。
セリフを自分の言葉で語る人は、噛んでもそれほど気にはならない。ただ、今回嚙んでたのはそんな場面ではないので。
ただのお武家言葉だ。
稽古に励んで解消する人もいるだろう。ただ逆に、自分自身の言葉を徹底したほうがいい気がする。
お武家だって自分の言葉で語っていいと思う。

いっぽう感心したのは、マクラからのギャップ。
昨日書いた通りマクラの語り口が穏やかなので、その後いくらでも跳ねられるわけだ。「源ちゃんは色事師」も思いっきりできる。
世の中には小痴楽師みたいに、楽しいマクラからさらに無限にかさ上げできる人もいるけども、なかなかこうはできない。メリハリをつける作戦は実に有効。

どんちゃん騒ぎを封じられたので、大坂相撲で観た、元僧侶の捨衣の様子を再現する。
捨衣は蜘蛛駕籠にも出てくるね。
この際の呼び出しの声「東、捨衣。西、源ちゃん」が見事でびっくり。いろんな隠しスキルがある人だ。

相撲も封じられ、色事の話題を振る源ちゃん。
奥方さまとはできているわけではなく、一方的に言い寄られた。だからことに及んではいない。
奥方さまの義弟がやってきて、これを返り討ちにしてしまうシーンは見事だった。
追いかけられて、ぐるぐる池の周りを回るのだ。だが履物が新しかったので敷石にズルっと滑ってしまい、刀を取り落とすのである。
こんなリアルなものは聴いたことなかった気がする。

番当がやってきて、あなた二人殺して逃げてらっしゃる? お隣にそのお侍がいらっしゃいます。
ここからの嘘なんだよというネタバレは早い。現代だとさすがに、人を殺したかもしれないやつに親近感は覚えづらいからだろう。
両国で仕込んできたネタで、今日がネタ下ろしなんだそうだ。

楽しい旅ネタでした。

仲入り休憩のあと、再び鷹治さん。

今度もいつものマクラ。
落語なんて賢いやつは出てきません。バカばっかりです。
落語家もそうです。バカばっかりです。
それを聴きにくるお客さんも…

これもさらに短くしてあった。どんどん短くするのがテーマらしい。
こんなに短くして伝わるのかと思うと、ちゃんと伝わるのだった。

シャレなんで怒っちゃいけませんよと断るのがいつもながら丁寧。
いつもいつもこんな釈明しなきゃいけないわけではないが、シャレだからって悪態にアグラかいてると、地味に刺さりっぱなしのことがある。
こんな例が、「写真とりあえず撮って消したらいいのに」であり、「大谷に骨折して欲しい」である。
「池袋演芸場という客の来ない寄席がある」は、個人的に刺さるわけではないのに、なんだか地味に傷つく。

本編、お血脈に続きます。

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