国立演芸場寄席@深川江戸資料館2(中・柳家㐂三郎「黄金の大黒」)老害客についても

柳家㐂三郎師の高座の前、前列に5人ぐらいまとめて入ってきた。
だもんで、一斉Vサインがなんだかぼやけちゃった。文句言う気はないですが。
その客にお待ちしておりましたなどと語る。

この日の地味めの顔付けの中では、一番派手な人だ。
池袋の初主任のあと、新宿でもトリ取って立派である。

江戸時代、すごい貧乏長屋があったんですよと。
犬猫がこの長屋に迷い込むと行方不明になったという。そんな貧乏長屋のお話です。

花が散った今、貧乏長屋の噺といえば、黄金(きん)の大黒。
黄金の大黒は、披露目では重宝する噺。めでたいから。
でも披露目の裏では珍しいなと思った。
他には寿限無、一目上がり、ざる屋なども出るが、黄金の大黒はこの中で比較的、ちゃんとした噺。
しかも国立、持ち時間が長いのでフルバージョン。なかなか大黒さまが歩き出すところまでは行かない。

㐂三郎師、売れてからもなお、おもしろ落語の要素が強いと個人的には思っていた。だがずいぶん本寸法だなと。
クスグリを切り詰めテンポをまいて、結果ユーモア溢れる高座に進化している。ああ、これは売れるわな。
真打になって5年。こんな時期から売れる人も中にはいる。
店賃催促の場面からもう、絶妙に切り詰めてある。といって、物足りないほど短くはないという。
そしてキャラのパワー、すべて1割減。これまた絶妙に軽い。
与太郎は面白いけど、そのかわり出番を短めにして突出させない。
噺のプロデュース力がすごい。

火事場で拾ってきた唯一の羽織だって、右袖と左袖で紋が違うとか、裏地が変な布だとかいくらでも膨らませられるけども、その描写は短い。

自分がやりたい、演じたい部分をつい強調しちゃって、結果全体のバランスを崩すということはよくある。
私は演者じゃないが、饒舌な物書きだから気持ちはわかるなあ。
崩してもやりたいと言うなら、それはそれでいいけど。
バランス完璧だったら必ず面白いというわけでもないしね。

そんなユーモア本寸法で来た高座だが、ひとつだけ㐂三郎師、やりたいことがあるのだった。
口上の2番目の、ちょい足りない男。名前はなんだっけ。
2番目を志願して世話役に止められてるが、当人は「早くやんないと忘れる」。一応、理にかなってる。
大家さんとこのガキと長屋のお坊ちゃん。あべこべだよ。そのあべこべが大黒さまを拾いまして。
そんなでたらめな口上を、さらに変質させてくる。

言葉が出なくて、「※#%$;*!」。これをもう、延々と。私にもなんて言ってたか再現できない。
アフリカの言葉かい? と大家。

こんなことを延々やっても、客の気をそらさないからすごい。
序盤から積み上げた蓄積がものを言う。

3人目の口上、こんにちは、さよならの後で落とさず、宴会のシーンへ。
大黒さまが呼びに行ったのは恵比寿さまだけだった。このくだりめったに聴かないが、弁天さまも呼びにいったり、いろいろバージョンがあるところ。

楽しい一席。持ち時間20分の国立らしい高座だった。

仲入りは、桂ひな太郎師の代演で、三遊亭吉窓師。
私はいったい何年振りだろうか。
自分のボールドヘッドいじりから始める。ようやく寒くない季節が来ました。
この頭はエコなんです。シャンプーも少ない量でいいし、リンスも不要。ドライヤーも要らない。

相撲の話。
お相撲さんのおかみさんは皆美人。この高座に並べてご覧なさい。美人コンテストかと思うから。
我々噺家のおかみさんを並べたら、お化け屋敷。

目ん玉落っこちても拾って嵌めて取り組む稽古。
大ネタできる出番だし、花筏かなと思ったら、大安売り。
軽いな!
しかし軽さモード全開の、くつろぎの一席。時間が長いので、上方相撲の帰りに静岡の草相撲に寄ったエピソードも入る。
通常の名前にまつわるサゲのあと、新たに付け加わったサゲがあった。いたく感心しつつ、一晩経ったら忘れちゃった。
まあ、サゲなんて忘れても全然大丈夫。

仲入り休憩時に、小さな事件が。
高齢男性が、スタッフに文句を言っている。
指定席なのに後方の空いた席に座っていて、スタッフに注意されたのではないだろうか。

「こんなに空いてるのにどうしていけないんだ! 来たらどきますよ! どうしてカネ払って狭いところで我慢しなきゃいけないんだ!」

女性のスタッフが謝っている。

「もう帰りますよ! どうして柔軟に対応してくれないんだ!」

国立の場合、指定席のデメリットを感じることは確かによくある。
空席が多いのに、飛び石の席の間だったなんてことがあった。謎の3人組になってしまったり。
前にやたら座高の高い人(または姿勢のいい人)がいて見づらいとか。
だから席を移動したいのはよくわかる。誰か来たらどくからというところまで、全然わかる。
でもこれはこそこそすべきことだ。

「柔軟に対応しろ!}は典型的なクレーマーのセリフ。
柔軟とは、本来ルールがあって、それをあえて破るときのことば。客がそれを強要するのはそもそも論理矛盾。
「ルールを適用するな!」って言ってるんだけど。

最終的には、ロビーで上のほうの人が出てきたのかも。結局ゴリ押しで後ろに座って居続けたようである。

勝手に後ろに座っているのをとがめる事情があったのかはわからない。

私も、国立の昇太師の席でもって、前の女性が背筋をピンと伸ばした人で、実に見づらかったことがある。
女性の隣の隙間から顔を出して高座を観ていた。
耐えられないので仲入り時に後ろに移動したが、後ろでも人の席だった。ぺこぺこしながらさらに移動したりなんかして。
ブログには書かなかったが、実に情けない記憶。
しかし、堂々と移動しようなんてのはないな。
今回吠えていた爺さんの中には恐らく、隣の席の人間に対する不満もあるのだろう。

まあ、とにかく痛客認定。

続きます。

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