脱税とパンケーキと立川雲水

チュートリアル徳井の申告漏れの件。残念無念。
ナイツ塙と一緒にやっている「球辞苑」のファンなのだ。
野球もシーズンオフに入り、もう数本収録しているのだと思われる。
お蔵入りか。取材を受けた選手が気の毒である。
というか番組自体存続できないかも。

ナイツは土曜のラジオ、ちゃきちゃき大放送の冒頭漫才で早速このネタを扱っていた。
偉いね。球辞苑がお蔵入りになったらコンビ揃って被害者なのに。
仲間の不祥事も、いつも逃げずにしっかり笑いに変えてみせる。

徳井の件は「申告漏れ」などという生易しいレベルでは済まず、有罪になってもおかしくなかったという論調が目立つ。まあ、そうでしょう。
「ルーズ」という言葉で語れるものじゃないと。
でも、申告さえサボっていて、特に何の工作もしていないのである。やっぱりルーズなのだろう。
ルーズと説明していればなんとなく許されると考えているその思考回路は問題だが、でもルーズには違いない。

まあ、世間も「脱税」を意外と追及しなかったりするので、そのうち復帰するだろう。
本当はそんなに軽々しいものではない。
脱税は国家のサービスを享受しておきながら、対価を払わない行為である。国家に対する反逆行為なのだ。
俺は国のサービスなんぞ受けてないぞと言ってはいけない。コロンビアあたりに住んでいるなら言ってもいいと思うけど。

落語界にもかつて所得隠しのニュースがあった。
調べたらもう2007年のことだ。
ご存じ当代林家正蔵師。「地下室」「祝儀袋」というのが一時期キーワードになった。
同業者も高座で盛んにネタにしていたと記憶する。
襲名の際の祝儀袋を地下室に隠しておいたのが見つかったのだと。
パーティに出席せず、祝儀だけくれた人の分を分けておいたらしいので、「うっかり」ではなさそう。
意図的かどうかという点でいうと、徳井よりきっと悪い。
国税としては、パーティ出席者と祝儀の金額を付け合わせて、「足りないな」と疑いにかかったんだろう、たぶん。
素人が浅知恵でプロの目を欺こうとすると、だいたい悪い結果になる。

この事件の頃、立川談之助師は掲示板で、「噺家は祝儀を申告しないから生活できている」と回答していたと記憶する。
特に古典落語なら、お旦がつくこともあるから、その祝儀が結構な収入になるのだと。
そうなのかと思った。
もっとも、そういう人もいるとして、少額だから目こぼしされているだけなのだろうが。

さて別に脱税したわけではないのだが、当ブログでも悪い立川流メンバーとして何度かご登場いただいている立川雲水が、ついにやらかした。
もともと笑いを狙いにいきながら面白さゼロのツイートを連発していたので、やらかしても驚きはしない。
政権に文句を付けるのが仕事になってしまったがゆえに、令和おじさん菅官房長官のパンケーキにまでケチを付けてしまったところ、各方面から総攻撃だ。
パンケーキを食べる人と、三千円で提供する側の両方にケチを付けたというのは、批判精神の現れでもなんでもないな。
三千円のパンケーキを提供する側を、税務調査しろだって。
「ニューオータニは談志のお別れ会をやったところだよ」というツッコミツイートには笑った。
もっとも、この人の師匠リスペクトは現在、ほぼゼロだと思う。生志師の「ひとりブタ」と、東京かわら版の「玉様のブラチン」の内容から想像。

雲水、世間に叩かれている理由は、恐らくまったく理解していないであろう。
政権批判をしたと曲解されて、右寄りの連中に噛みつかれたぐらいに思っている。
ひょっとすると、「俺もちょっと有名になったな。してやったり」ぐらいの感想ではないか。今まで知らなかった有名税が来たと。
まあ確かに、炎上というほどの炎上事件ではない。左の人の多くの炎上事例と同様、右寄りの連中が揚げ足を取っているのも事実。

だとしても、平気でいるのなら非常によくない了見だと思う。批判の核心部分に目を向けないで。
「自分の好きなものに価値を見出し、お金を使う」ことと、「客をもてなすために魂を込める料理人」の存在、この二つを同時にけなしてしまったのだということに、気づく日は来るのだろうか。
三千円のパンケーキにつき、「他人の金だったら食うだろう」と被せ、さらに失笑を買っている。あんたの食生活の問題じゃないよ。
ツイートの面白さによってでなく、インテリ文化人の政権批判だと思い込み、雲水のフォロワーになる左の連中もよくない。
おかげで自分でも気づかないうちに、もっとも心地の良い評判が聞こえてくる方面を目指してしまったのだ。批判精神なんていってもその程度のもの。
世間の多くの人は、左右の立ち位置の違いはあっても、事例ごとに個別に取り上げて検証しているのである。

それにしても、政権批判するなら志らくの批判もしたらいいのに。自分をひどい目に合わせ続けた談志と併せ。
それでも雲水、志らくをdisり雲水を持ちあげる嫌らしいツイートをリツイートしていたので、一瞬オヤと思った。
だがもう削除したらしい。志らくのことを嫌いなのは知っている。
志らく叩きを始めたほうが、世間にはウケると思うけども。同業者の評判もきっと上がるだろう。

そういえば雲水が模倣しているらしい談四楼も、志らくについてはノータッチだ。
志らくのコメントにノータッチなのはまだしも、志らくが取り上げ、世間をざわつかせた事象にすらノーコメントなのは卑怯だと思う。
同業者、しかも同じ一門になるとこの体たらくだ。もっとも、全く一門の違うDV噺家、桂春蝶についてもそうだったが。

そう思うと、同業者を敵に回すことをまったく恐れなかった、そして笑点で落語を掛ける機会をきっちり失った、三遊亭円丈師はやはりすごい。
和を大事にする噺家の了見としてふさわしいかという問題はあるけども。

(追記)
やっぱりわかってないな。合掌。
政権批判もいいが、それより先に、やらかしたSNSの先人たちから学ぶことはないのか。

 

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。