東京シティアイ落語会の昔昔亭昇(上・「やかん」)

あいかわらず時間が極めて不自由なのであるが、でも月曜日はいい会があったのだ。
阿佐ヶ谷「アートスペース・プロット」でもっておなじみの入船亭扇白師の独演会、というか勉強会か。
ネタ出しは死神。寄席に通っていてもそうそう出ない噺。
しかし電車が遅れていて、断念。

でもこの月曜はもう一つある。
東京駅KITTE地下の東京シティアイ落語会。無料。
四半期ごとに芸協の二ツ目さんが出る。
時間があるので隣のTOKIA地下の立ち飲みで景気付けてから出撃。
演者は昔昔亭昇さん。

立ち見も出て盛況。
というか、椅子少なくないか?

真夏の二の腕(※適当に演題つけてみた)
やかん
自己紹介
紺屋高尾

紹介を受けて昇さん登場。
高座に階段で上がるのが大変(というギャグ)。

なにしろ3桁あるもんですから。
KITTEと私の思い出は、まだ噺家になる前ですね、福岡から何かの用で出てきて。
駅といえば東京駅、おのぼりさんですから見にきました。
でも、当時工事中で綺麗じゃなかったですね。
はとバスの乗り場がありました。
最初に撮影会をする。羽織もう脱ぎますからねと。

猛スピードで高テンションのマクラ漫談。
今日は暑いですね。ずっとこのところ涼しかったんですけど。
私汗っかきで、Tシャツがすぐビショビショになります。
今日も途中で着替えました。
駅まで自転車で15分掛かるんですよ。どこ住んでるんだって話ですけど。
駅までが緩やかな登り坂で、駅に着いたらもうぐっしょりです。いつもは駅前のコンビニのトイレ借りて、さっそく着替えます。
ぼくは夏はだいたい、着替えのTシャツを4枚、インナーを2枚用意しています。
その日は急いでいて、着替える暇がなかったんです。そのまま電車に乗りました。
Tシャツ、びっちり張り付いてビチョビチョです。冷房効いてて寒いです。
私も嫌ですけど、皆さんもピチピチTシャツの太った男はイヤでしょう? でも急いでたので仕方ないです。
何も起こらなければいいなと。でも、隣に女性がやってきて立ちました。
しかもこの女性が、ノースリーブなんです。もう悪い予感しかしません。
車内の向こうのほうが騒がしいです。何かなと思って見たら、カナブンが飛んでたんです。
車内パニックですが、隣の女性はイヤホンしてて動画観てます。気づきません。
カナブンはそういう人のところにやっぱり飛んできます。女性の前を飛び回りました。
女性、パニックになって、体をよじらせます。
そして、腕の側面全体が、私のTシャツに接地しました。

「きゃあ!」

カナブンよりも、ピチピチTシャツの男のほうが気持ち悪かったみたいです。
その日は浅草で寄席だったんですけど。
楽屋に入ったら師匠・桃太郎がいて。叱られました。お前なんて汚い格好してるんだと(モノマネではない)。
ぼくも言いたいですよ。「いえ師匠、ぼくもこの体でなんとか頑張ってるんです!」。言えないですけど。
その後もこんこんと叱られました。
まあつまり、虫の居所が悪かったんですね。

ネタ自体面白いのだが、なにせ喋りが面白い。
うわずってて、でもうわずってるのはすべて効果的な脚色で。
客を一緒にうわずり世界に連れてってくれる。
ご本人も、喋りに絶大な自信があるのだろう。これはもう、小痴楽レベル。
小噺のオチも、そこが目標ではない。そこに向かって頑張って、さほどウケないって人いますよね。

師匠が亡くなったって一切言わない。
知らない人はまだご存命と思うが、よく考えたらそれで誰も困らない。

一席めは、やかん。
これは実に面白かった。もともと面白い噺を、完全に昇モードで語るという。
噺はいかにも古典落語なのに、オリジナリティがすごい。自分で書いてて意味がわからないが、本当だから仕方ない。
まあでも、師匠から来てるんだと思うけども。中身はだいぶ違う。
小遊三師でもない。

先生はグシャグシャ言うのだが、これを効果的に繰り返す。

「わかったか。(落語客はもうみんな、「グシャ」が来るぞと思ってる。それを完全に飲み込んだうえで)愚者」

ありきたりの、期待させておくギャグなんだけどもひと味もふた味も違う。

魚根問から。
「イカ」の名前の由来を訊いたあとで、「ヤリイカ」「スルメイカ」と畳み掛ける八っつぁん。
これは、先生も最も困る攻め方。でも、くじけない。
「カツオ」は、「あれは魚類ではない」と先生。貝類の仲間で、サザエの弟だ。これ、師匠のだったはず。

「コチ」と「ホウボウ」の順序を間違えたらしい。
順番間違えましたねって、セリフで自白してた。

魚の名前から、今度は鉄瓶、土瓶、そしてやかんを尋ねる、なかなか策士の八っつぁん。
川中島の講談に入るが、どんなに面白いやかんを聴いても、ここは必ずモードが変わる。
でも昇さん、変わらない。すごいことだと思う。
講談は講談で楽しく、八っつぁんもだんだん楽しくなって感心してる。

「どうでもいいが、(パンパン叩く膝が)痛いな」と先生。

信玄と謙信の本名というのはない。ないの初めて聴いたかも。
まあ、ここらへんは「タケシンにウエケンだ」って言いたいだけの場合もあり。

ここまで完成度の高いやかんもなかなか聴けないと思った。

続きます。

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