東京シティアイ落語会の昔昔亭昇(下・「紺屋高尾」)

やかんをお届けしました。好きな噺ですと昇さん。
やかんの先生も、知ったかぶりだと解する余地があるとそこまで面白くはない。
この先生は真の芸人である。いかに楽しいウソをアドリブでつくかに命を懸けているし、八っつぁんも芸を認めている関係。

もう1席の前に自己紹介をしますと。
昔昔亭昇と申します。「昇」は私の大師匠、春風亭柳昇から来たのかというと、そうではなくて。
これ、本名なんですね。本名はこの字で「しょう」と読みます。
本名は、目黒昇と言います。なんですかその不服そうな視線は。
いえ、皆さんのおっしゃりたいことはわかります。これでめぐろしょうはないだろうと。どう見ても、山田太でしょう。
病院で呼ばれます。「めぐろしょうさん」。みんなこちらを見て、そして目を伏せます。
最近は目黒が名字の男前がいるので、さらにやりにくいです。いえ、私ジャニオタですからね、目黒蓮さん好きですよ。
ちなみにね、私のほうが体形的にSnow Manじゃないですか。

健康が心配ですね。同い年で痛風になる奴が出ましたよ。
私も健康診断行かないといけません。皆さんの中にもし病院関係の方がいらっしゃいましたら、なにかの縁ですからそちらでお世話になろうと思います。

笑点特大号にも出てますのでよろしくと振り、二席めへ。
吉原は遊女三千人ご免の場と言いまして。

え、廓噺? ちょっとびっくり。
あまりにも昇さんのイメージになくて。
その、イメージにない噺は絶品であった。
廓噺の大ネタだからといってまるで気負わず、普通の滑稽噺として語る。ただし、一席めやマクラのようなうわずりモードではない。
普通に語って、ちゃんと人情も描き出す。
ちなみに、泣かせてやろうなんてのは皆無であり、逆に、いかにそんなシーンをあっさり描くかに注力する。
ラブロマンスを描くには、結局のところそれが最適である。
とはいうものの、ギャグたっぷりという印象もない。これもまた、意識しているようである。
「シリアスな噺に、ところどころギャグを入れてつなぐ」ではないのだ。
先人から受け継いだ楽しい噺を楽しく語る方法論。

紺屋の職人清造は、花魁道中を見て以来仕事が手につかない。
高尾大夫の錦絵を見てはため息をついている。
医者は速攻見抜いて、3年働きなさいと。
この展開は刈り込んでいてスピーディ。もっとも、ここが長いのは紺屋高尾でなく幾代餅のほうだったか?
混ざっちゃってよくわからない。
それにしてもこの先生、よく考えたら名医である。なんで親方から「腕のほうはともかく女郎買いの名人だ」なんて言われなきゃならないのか。

あっという間に3年経って、親方から十両もらって高尾大夫を買いに行く清造。
ちなみに、「(ご祝儀等含め)金だけ払って会えないかもしれない」というセリフはない。
「金だけ払って、その日は会えないかもしれない」というセリフはあった。
いずれにせよ、当日キャンセルの客がいたおかげで高尾大夫は空いている。

流山の在から出てきたことにするが、ただ紺屋の職人なので指先まで藍色に染まっている。
医者が、うぐいすの糞で洗いなさいと勧めるが、誇り高い清造は拒絶する。
ただし花魁に真相を打ち明ける際は、指を見せれば一発で信用してもらえる。
清造が職人であることを打ち明け、花魁を泣かせるくだり、実に説得力がある。
これはもう、昇さんの人間力のたまものだと思います。

3年経ったらまた来るが、そのときはもう花魁、お金持ちに身請けされてるかもしれない。
でも街で会ったら、「清造さん元気?」ぐらい声を掛けて欲しいと、実にピュアな清造。

あとはもう一本道。
馬鹿になって帰ってくる清造であるが、そんなにしつこく描写はしない。
ちなみに高尾太夫、持参金三百両持ってきた。そんな設定は初めて聴いた。必要かどうかはわからないけど。
用意した十両については、高尾が上手いことやっておくからと返してもらうのだが。

ちょうど1時間。
中身の濃い時間であった。
ルート9の公演など宣伝。
それから、一番寂しいのはですねと。
こうやってお客さんと触れ合ったのに、それっきりになってしまうこともあります。
ですからSNSでじゃんじゃんつながりましょう。感想もどんどん載せてください。

それにしても、芸術協会の未来は明るいです。

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