落語界とコロナ(下)

首相夫人の軽い脳ミソのことはみな馬鹿にする。だが人によっては、発信の仕方がほぼ同類であったりする。
誰しも、アキエと同じ善意のモンスターになってやしませんか。

政府方針によると、収入が下がった世帯に20万円給付の見込みだとか。
私は対象外だなあ。期待してなかったから別段ガッカリもしないけど。
噺家もみなもらうのだろうが、「貧困は絶対的に自分のせい」と主張していた、DV野郎の桂春蝶ももらうのでしょうかね。
3月で唯一のラジオ番組が終わっているからダブルパンチ。
唯一の弟子、紋四郎はテレワーク落語会で頑張っている。

話を戻す。
他にも、コロナにより本性の現れる噺家が出てきた。
三遊亭鬼丸師は、ここに来て急にツイッターで怒り狂いだしている。
いささか不快を禁じ得ないので、そのうち雲水や春蝶と同様、敬称を取るかもしれない。
最初この人は、こんなことを言っていた。

インテリジェンスとかよく言うなと思った。いったいどこから、唐突にこんな言葉が出てくる?
この人のラジオ、知性に欠けていることを理由に聴かなくなった私としては、苦笑せざるを得ない。
インテリジェンス云々のつぶやきはその後撤回したようなのだが、最近は補償キ○ガイになってしまったようだ。
埼玉県の純朴な聴衆たちをデマゴーグでどこに連れていこうというのか。
先週、要請に逆らって熊本に旅行に行ったらしい。さすがにその模様はつぶやいていないけど。
物の見方が単純すぎる人間は、噺家に向いていないと思う。
単純な人にもいろいろいる。人に合わせてコロコロ意見を変える人のほうがまだ罪がなくていい。
大した理由なく選んだ最初の立ち位置に、いつまでも縛られ続ける単純さのほうがずっと恐ろしい。

私はコロナ渦中に再三外出し、寄席の模様をお届けした。
だがあとで振り返って幸いなことに、「今寄席に行くことが正しいことだ」なんてことは一切書かなかった。
「寄席は安全だ」なんてことを根拠なく書いた覚えもない。
ありもしない絶対の正義を信じている連中よりは、ややましな脳ミソであり、多面的なものの見方が身に付いていると自負している。
もし現在の状況まで予見できたのなら、私もさらに立派な脳ミソだったのだが、そこまでではない。

橘家文蔵師も、しばしば吠えるから気を付けて欲しいなと思う。
ただ、実は悪い例と比べると、ものすごく気を付けてつぶやいている人でもある。
悪態を、人間的な魅力として発するセンスが、この師匠にはある。
そして、結構複雑な内面をお持ちである。つぶやきを垂れ流しているようで、かなり熟慮する人。落語からもその複雑な内面がうかがえるが。
文蔵師、いまだにパチンコ行ってるのかしら。

コロナで政府に八つ当たりをしているのが桂文治師。
政府以外に対しては、極めて腰が低いままなのはこの人らしく立派だと思う。雲水とは違う。
だけど、その謙虚な姿勢と裏腹な、唐突な政府批判が釣り合わなくてずっこけてしまう。

さて、こんな状況の中で、私にできることはなにかあるだろうか。
旧Yahoo!ブログの2016年9月25日から毎日掲載を続けているのであるが、寄席に行けなければネタも続かない。
コロナでちょっと休みをもらおうかと思ったのも事実。
だが、私には多くの落語コレクションがある。落語の魅力を少しでも届けることは、かろうじてできるのではないだろうか。
その気になれば、ネタはいくらでもある。
明日からはコレクションを取り上げます。
寄席に行くチャンスも、完全に放棄したわけではないが。

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作成者: でっち定吉

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