東京かわら版から名前の消えた雲水だが、仕事ゼロにはならなかった。
この7月、上野広小路亭の「しのばず寄席」に4日顔付けされている。
ただ、しのばず寄席という席も微妙。各派合同のこの席には、意外とはぐれ噺家が顔付けされるのである。
「最初からしのばず寄席の予定があった」のではなくて、仕事がなかった雲水に、コロナで顔付けが遅れていたしのばず寄席から声が掛かったのだろう。
とはいえ雲水、しのばず寄席でトリは取れない。トリは、好楽、鳳楽、桃太郎、蝠丸、小南といったベテラン師匠。立川流なら里う馬師。
ともかく7月に関しては、現にかわら版から名前の消えた雲水。なぜか。
立川流の寄席である、毎月7日間ある広小路寄席に顔付けされなかったからである。
立川流の寄席というものは、落語会だけで生活のできない、二軍の噺家が集うところ。これは立川流だけのローカルルールである。
その二軍の寄席に、なぜ二軍メンバーの雲水が顔付けされなかったか。想像はつく。
かつては、雲水がこの広小路寄席の顔付けを担当していた。その際、大嫌いな弟弟子、キウイを露骨に外し、数年にわたって一切顔付けしなかった
そういうことを、平気でできる人間。「クセが強い」のレベルを通り越し、人間的に著しい欠陥のある人。
外されて広小路寄席に出られなかったキウイもまた、しのばず寄席には顔付けされていたのだった。因果応報。
東京かわら版8月号は昨日届いたが、これが来る前に、立川流の8月の予定は公式に載っている。
雲水の予定を見ると、立川流の広小路寄席はまたもやゼロ。
これはもう、たまたまなんかではない。
明らかに、お仕置きと思われる。これまでの過激なふるまいに対しての。
日本橋亭のほうにだけ、1日名前が出ている。これは別の噺家が顔付けしているのだろう。
いよいよ失業危機だが、かろうじて8月の「しのばず寄席」には3日間顔付けされている。
雲水、世間に対してのよりどころである、噺家の肩書までもはや危うい。「自称噺家」レベルに陥っている。
立川流の、かろうじて残った寄席の枠組みすら、利用できなくなりつつある。
落語界、日ごろの円満な付き合いが大事な世界だということ、つくづく思い知らされる。
売れた弟弟子の、売れた事実を罵っている時点でもって、円満な付き合いなど望むべくもなく。
現在の、広小路寄席の顔付け担当は、志ら乃師らしい。
この志らくの弟子が、師匠から指令を受け、雲水外しに動いたのだろうか。すでに担当が替わっていたとしても知る由がないが。
立川流はすでに組織の体を保っていないので、雲水の過激な、人権無視の言動が過激すぎるからといって理事会で処分なんてことはできない。
ちなみに、雲水自身が立川流の理事だと思っている人もいる。だがとうに「元理事」である。
立川流という組織においては、好き勝手をする人間に対してのお仕置きも、好き勝手に行われるのである。
しかしなんというか、自分自身のふるまいが原因とはいえ、この状況を積極的に楽しむほど、私も人が悪いわけではない。
見ていて心底ツラくなるね。
実力も人気もさしてないのに、談志のように傲慢にふるまい続けた結果、もっとも大事な仲間に避けられる雲水。
どこの世界にも、あまねく存在する類の話。私にしてからが、決して他人ごととは思えない。
特に噺家、ごく普通には、「自分はもっと上手い！」なんでイキッてないでどこかで受け入れてもらえるポジションを見つけるものだと思う。
それができない時点で、噺家失格。
しのばず寄席に救済されても、本人はツイッターでその予定を発信するでもない。
寄席の顔付けから外されている自分自身を受け入れられていないので、ますます過激な言動に走るのだ。
いずれ本当のフリーになると見た。そうすれば、立川流の連中に頭を下げるなんてことで、薄っぺらいプライドを損なう必要もない。
まあ、真のフリーになったら活躍場所はゼロだけど。
最初からふるまいに気を付けられる人間だったら、この境遇に陥ったりしない。
落語界はひとりの芸だが、一匹狼ではやっていけない世界。
「寄席に出られない」だけでは済まない、もっと深刻な悲劇がこの先待っている。そんな予感が強くするのだが。
自分自身に内在する要因により、大きな運命に巻き込まれていくという構造は、シェイクスピア悲劇を思わせる。
・・・そんな立派なもんではなかろうが。
（2020/8/24追記）
雲水、9月の立川流寄席からは完全排除。
そして、事情は知らないが2か月間出してもらっていたしのばず寄席にも名前がない。
本日東京かわら版が届いたが、そこに名前はない。
9月はついに完全失業となりました。
