池袋演芸場25 その4(あずみvs.白酒毒合戦)

 

喬之助師、にゃん金先生をいじって、今は楽屋の女性も増えました。昔は「歌る多」「菊千代」「きく姫」しかいなかったんですから。
そんなときに、「つくし」が入ってきて、あれで可愛いなんて言われたんですよ。
最近では、立前座、太鼓番、高座返し全員女の子のときがあります。女の子がお茶を出してくれるとおいしく感じます。
着替えを手伝ってもらうと気合が入ります。
と、超ベテラン師匠のほうがむしろ発言に気を付けそうな内容を、すらすら語る喬之助師。
セクハラ丸出しだが、真に不快に思う人はいないのではないかな。「今は令和だぞ」という常識に基づいた角度からの不快感はあるだろうが。
こんな内容で人を不快にしないのは、ひとつの才能ではある。
そして喬之助師のセクハラ丸出し発言にも、意味はあるのだった。浮わついた噺の筆頭、宮戸川。私も、この浮わついた噺が大好き。

ちなみに、宮戸川に入る前に、ひと頃流行った「続きはWebで」を振っている。
本人もひと頃流行ったと言っている通り、もう流行っていない。文蔵師だって、落語ではもうやっていない。
なのにこれをサゲに持ってくるセンス。実にしょうもないと思いつつ、なんだかこの浮わついた一席には、こんなのでいい気がしてくる。

最近流行っている、お花のほうが積極的という描き方。
上方へは鶴瓶師が持っていったのだと思うが、そちらでは、積極的なお花がスタンダードでは。
なにしろお花、半ちゃんに手紙を出したりしているのだ。朴念仁の半ちゃんは、「用があるなら直接言えばいいじゃねえか」なんてつぶやいている。
そしてこの日のお花、狙って遅い半ちゃんを待っていたのだと。

おじさん夫妻にはほぼ触れない。「いまだに二つ違い」も、だからなし。
こんなところカットなんて!
「日本橋と京橋」のくだりもなくて、雷が早めに落ちて「続きはWebで」。
いや、面白かったですよ。もともと明るい高座の人。
喬之助師、今後寄席にばんばん呼ばれそうだ。遅ればせながら売れてくる。

金原亭馬遊「提灯屋」

馬遊会で有名な金原亭馬遊師は、実は初めて。
らくごカフェでもって、喬太郎師と二人会をやったりしている不思議な師匠。白鳥師のマクラにも登場する。
アナログ人間で、スマホにしたばかりだが全然わからないのだと。
ただこの芝居では、喬之助さんに毎日操作を教えてもらえて楽しいんだって。金魚先生と一緒に。
馬遊師の話だけ聴くと、喬之助師はただスマホの操作に詳しいだけの人みたいだが、もう少しなんでもできる人みたい。

町内の若い衆が集まっているが、広告が読めない。
提灯屋である。だが、若い衆の会話を引き延ばして、これだけで終わってしまいびっくり。
隠居も提灯屋も出てこない。
なのに、「まる」「かしわ」という、サゲに出てくる食い物だけはちゃんと仕込んであった。へんなの。
また次の機会にと言って頭を下げ、思いついたように「続きはWebで」。

林家あずみ

昼のヒザ、橘之助師匠は忘れていたようだが、夜席にはもうひとり女性が出ている。林家あずみさん。
この人も、池袋は珍しいんじゃないのかな。

池袋・落語協会色物あるある。

  • 他の寄席と、話題をガラッと変えてくる
  • 楽屋ネタ大集合
  • 演者相互のお遊びに余念がない

この日のあずみさんも、完全なる池袋モードに切り替えている。だから、あまり呼ばれていないのが不思議だ。
先日、誕生日の高座を末広亭で聴いた。39歳の誕生日と言っていた記憶があるのだけど、Wikipediaでは40歳になっている。
着物で電車に乗ってやってきたが、白い目で見られましたと。浮かれてるんじゃねえという心の叫びが聞こえましたとツカミ。
この芝居、一昨日から次の出番の桃月庵白酒師と、毒の吐きあいをしているらしい。
きっかけは、一度白酒師に面と向かってひどいことを言われたのを、客の前で暴露したこと。
「あんたは着物着てるから見られるけど、別に美人じゃないからね。上の中、いや上の下だよ」と。
どうして下の中の人にそんなこと言われないといけないのだ。
だが、こうやってあずみさんが白酒師をちょっといじると、次の高座でその数倍の毒が返ってくるので、ちょっとめげてるのだ。
私だけのことならいいが、昨日は林家すべてに向けて毒を吐かれた。
今日で終わらせたいと思いますと言って、毒の締めに掛かる。
白酒師は、小学生の子が好きな子をいじめるのと同じで、私のことが好きなんですね。
師匠・たい平をエレベーターで挟んでしまったネタを振って交代。

トリの喬太郎師をそっちのけで、真ん中の出番で楽しいバトルを繰り広げる池袋はやっぱり最高です。
昨年になって、落語の基礎に溢れる新宿末広亭を大いに見直したところだが、こういう楽しさは池袋ならではだ。

いじられた桃月庵白酒師に続きます

 

作成者: でっち定吉

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