王さまと金メダル

味噌煮込み王国の王さまは、宝ものを見つけました。

そふとのくノ一が冒険の旅で手に入れてきた、大事なだいじな金メダルです。

宝ものを目にした王さまは、宝ものにすっかり魅入られてしまいました。

王さまは、いにしえの伝説を思い出しました。

勇者たちが、宝ものをお口に入れて、ポーズを取ると力がみなぎるという伝説です。

心優しきそふとのくノ一は、王さまへの貢ものとして宝ものを持ってきたのではありません。

いつのころからはわかりませんが、「勇者は王さまに宝ものを見せに王宮に行く」というセレモニーがあるためです。

宝ものに魅入られた王さま。どうしても我慢ができなくなりました。

「わしはこの、味噌煮込み王国に君臨している。民衆からも慕われておる」

王さまは、自分が勇者になった気になりました。そふとのくノ一の大事な宝ものを、民衆の見ている前で大きな口に入れてしまいました。

王さまはガブリとメダルを噛んで、にっこりとしました。

お付きのものたちも、やんややんやの大喝采です。

そふとのくノ一は、わずかに眉をひそめたようにも見えましたが、ほほえんでいます。

ですが、無知で恥知らずな王さまは知りませんでした。メダルを口に入れていいのは、それを自ら手に入れた勇者だけだということ。

王さまはたちまち呪いを掛けられ、民衆の見ている前で、はだかになってしまいました。

王さまは、はだかになってみると、ただの汚らしいじじいでした。

さて味噌煮込み王国には、王さまよりも偉い人がいました。馬車職人です。

味噌煮込み王国の発展は、すべて馬車職人のためだったのです。

日ごろはつつましやかな馬車職人ですが、はだかの王さまを「この恥知らず」と罵りました。

さあ大変です。王さまは馬車職人の元に出向いて深々と頭を下げました。

馬車職人の怒りはすさまじいもので、とうてい許してはもらえませんでした。

つづく。

 

いえ、続きませんけどね。
いつまで引っ張るんだ、このネタ。

事件を知ったとき、まず私も「器物損壊罪」を構成するのではないかと思った。
明治のころの判例だが、「食器に放尿した行為」が器物損壊罪に該当した例があるのだ。放尿された食器は、人間心理も考えたときに、決して元には戻らないためだ。
後藤希実投手の金メダルも、決してジジイに汚される前には戻らない。気の毒な限りである。
一生のトラウマ。
ジジイが人のメダルを勝手に噛みしめる行為は、性犯罪に近いものがある。

バドミントンの藤井瑞希(ロンドン五輪銀メダリスト)も、まったく同じことをされたとのこと。
得意げに人さまのメダルを噛んだ男、特定されて糾弾されるに違いないと思ったのだが、まだそうなっていませんね。
でも私もほぼ、この人に違いないと特定したけどね。

ちなみに、河村たかし市長の釈明「最大の愛情表現だった」に納得した人はいるはずもない。
そもそも汚いジジイに愛情表現されたくないし。
私は「愛情表現」から真っ先に思い出したのは、立川志らくの弟子全員前座降格事件である。
志らくが自ら「愛情表現」と述べていたわけではないが、ツイッターやらでそう書いていた連中がいたのだ。ぜんじろうとか。

ちなみにこの事件、怒っているのは主としてオリンピックを楽しんでいる人たちである。
オリンピックを取り巻く状況の中では、例外的な反応だろう。
左翼文化人たちは、この件に関しては大幅に出遅れた。
オリンピックを存在してはならないものだとしていると、選手の気持ちをおもんぱかることもできず、市民の怒りを感じることもできないのだった。
ちなみにラサール石井は、オリンピックについて口出しちゃいけないだろう。
浅田真央にセクハラツイートした事件は、メダルかじりと同じく一生ついて回る。

いつも怒りまくっている蓮舫も、メダルかじりについてスルー。
センスのない人だと痛感する。
権力者による女性への蹂躙がリアルタイムで進行している事例なのに。ここで怒らないでどうする。

今、春風亭一之輔「あなたとハッピー」を聴きながら書いているのだが、こちらではまさにメダルかじり事件が取り上げられている。
だが、噺家はあまりツイートしていない。あまりにもネタっぽい事件だからか。
その中で、太神楽の芸人のものを見つけた。

泣ける話である。
人の笛を勝手に吹くジジイはどうにもこうにもならぬ。奉納してきてしまったので、よほどよし乃さん、気持ち悪かったのだろう。
好きな女の子のたて笛を舐めてみるという、アレじゃないですかね。

ジジイになったら人間、謙虚でありましょう。

作成者: でっち定吉

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