さらば林家三平

芸協池袋のレビューを始めたところだが、いきなり中断しまして。
笑点についていつも書いてるけども、実は地上波笑点はめったに見ていない。
でも、重大なお知らせがあるとのことで。
観測気球だったのだろうか。事前に番組リークによるらしい三平降板情報が飛び交っていた。
本当でしたか。

5年半やったんだって。長かったね。
2016年にYahoo!ブログで始めた「丁稚定吉らくご日常」の第1回は、何を隠そう「笑点の司会者予想」であった。
実にしょうもない記事なので、Yahoo!ブログ廃止の際に、消えゆくままにしました。
その頃三平がメンバーに入ってきたのだなと思うと、ちょっと感慨深い。
でっち定吉は自分で言うのもなんだが、当時と比べてずいぶん出世しました。今や広告収入が上がるようになったし。
三平師匠はどうですか。当時、ファンを裏切ったという評判で、成長しないまま降板ですか。

しばらく、協会・団体を問わず、寄席ではこのネタでもちきりだろう。
とうの昔に三平は、後輩であっても遠慮なくいじっていいことになっている。
これからは逆に、いじれなくなるかもしれないけど。

昔から「笑点台本問題」というのがある。
いや、番組なんだから台本というものはあるし作家さんも当然に仕事をするわけだが、「あんな番組は放送作家の書いたネタを喋るだけなんだ」みたいな伝説。
「笑点大喜利は誰でもできる」性質のものなら、三平師匠もそこに乗れたはずなのだが。
台本問題なんてどうでもいいのだが、「笑点大喜利は落語の上手い人がやるもの」なんですよ。少なくとも令和のこの時代は。

落語を日ごろから聴いていれば当たり前のことだが、話術というものは単にネタだけの問題ではない。
落語界には便利な格言がある。「芸は人なり」。

しかしなあ。
外で修業してきて戻りますという三平。二度と戻ってこれるはずないのは当然だが、外だって甘くない。
笑点のほうがはるかに甘々だったのだ。

先日実に珍しく、披露目の浅草で三平漫談を聴いた。
馬風師の見事な漫談と同じ席に掛かると、もうなんだかなという。
引くべきところで引けない、ムダに圧の強い語り口はどこへも連れていってくれない。

三平は、浅草専用芸人。浅草演芸ホールだけは、出してくれるしトリも取らせてくれる。
だが、他の寄席は出禁状態。
少なくとも4年ぐらい前は、鈴本（兄・正蔵がGWにトリを取る寄席だ）は完全出禁だったが、新宿や池袋には年1回の出番ぐらいはあったのだ。
今年はどうか。
東京かわら版を1年分ひっくり返してみたが、浅草以外は2回だけ。

• 池袋：二之席
• 国立：3月の小朝師の主任

かろうじて出た池袋も、なんと4人交互である。
国立演芸場は寄席のシステムでの顔付けではなく、寄席4場に顔付けされなかった人で組む仕組み。
そこでも、庇護者のような小朝師の席にしか呼ばれない。
浅草以外の席亭には、とうに見放されて久しいのだ。
浅草だって、今の席数がいつまで続くやら。
寄席とは、特に人数の多い落語協会員にとっては、実に厳しい場なのである。情実がほとんど利かない実力勝負の世界。
こんな状態で、一体どう修業する？　弟子なんか獲ってる場合か。

座布団利権は、もうなくなる。
地方から呼んでもらえるとも思わない。どこの世界に、番組公認のヘタクソを呼んでくれるプロモーターがいる。
古典落語も、地噺も、もっとも得意な漫談も通用しないのに、ここからどう挽回する？
地方もなく、東京もない。噺家人生、もう詰んだのではないか。

普通に笑点好きの人に言いたい。
みなさんのちょっと嫌いな三平師匠、今後ここまで厳しい目に遭うのだということ、わかってないでしょ、きっと。
ちなみに兄の正蔵師は、嫌う人もまだまだいるものの、普通の審美眼を持っている人にはちゃんと響く立派な噺家になっています。
実力がないとなんともならない世界なのだ。

私もなんだか暗くなってきたな。
後任はまあ、普通に考えて桂宮治師だろう。毒が強すぎて決して好きじゃないけど、落語も間違いなく上手い。
ただ、メンバーの若返りを図るほど若くないけども。45歳だからな。51歳の三平とさして変わらない。
芸協としては、歌丸師の時代に3人入っていたのだ。それがひとり減らされてしまっているので、ここで挽回したいところだろう。
ちなみに落語協会のほうは、ひとり減っても特に気にしなそうだ。

（2022/1/1追記）

新メンバー、宮治正式発表。
当たったけど、なんだかがっかりしちゃった。