上方落語の女流景気

昨日出した円楽パワハラ批判は予想通りアクセスは多かった。ありがとうございます。
二日分の分量を書いてしまったので、今日は休むつもりでした。
だが、朝の更新サボったときのいつもの状態になっている。トップページのアクセスだけ多く、個別記事へのそれが多くないという。
なので今日も出していきましょう。

全国のラジオがいつでも聴けるradikoプレミアムは本当に助かる。
昨日はらんまんラジオ寄席の特番で、柳家さん喬師のインタビューを聴いた。私はさん喬師を年末押し迫って聴いたので、個人的にタイムリー。
実に面白かったが、師匠小さんのエピソードなどは何度か聴いている内容。
最後に出した権太楼師の話も、おなじみのネタかと思ったら、そうでもなかった。
さん喬師、権太楼師の影響を深く自覚しており、たまに権太楼師の色をもらってきて、自分の色に垂らすことがあるという。
「色」というのは、弟子のさん花師の披露目のときにも語っていた、さん喬師おなじみの表現。
食事すら一緒にしたことのない権太楼師と、どれだけ心が通底しているかというエピソードはこれだけでブログ一日分のネタになるが、あいにくもう配信期間が終わってしまった。

今日はMBSの新春寄席というものを聴いた。
トリが昨年亡くなった笑福亭仁鶴師の「池田の猪買い」。
冒頭の一席が、笑福亭松喬師で「お文さん」。
これら見事な一席は単独で取り上げる価値が十分ある。だが、トリの一席の前にあった松喬師と、桂米紫師とのトークが面白かったので。
聞き手はMBSのベテラン、柏木アナ。

先代松喬の思い出など、冒頭から中身の詰まったトーク。
師匠がカレーうどんを作ってくれるが、片栗粉を入れている。
師匠に意見するなんて普通はないところだが、毎日そば屋でバイトしている現松喬師、これは違うと師匠に逆らう。
片栗粉なんて入れるの見たことありません。カレー粉だけです。
ほたらそば屋の社長に尋いてこいと先代。
当代が社長に尋きにいったら、「業務用は最初から片栗粉入ってんねん」。

トークのメインは、NHK新人落語大賞を獲った桂二葉さんについて。この話をしないと、と振ったのは松喬師。
二葉さん、天狗さしという古典落語で堂々突破したのがすごいと。

松喬師は、我々男の噺家もうかうかしていられないと。
ゴルフや将棋なんか女性選手は人気だが、でも男とは土俵が違う。落語の場合、同じ土俵でやっているのだから。
彼女たちが活躍すれば、自分たちの出番は減る。そんな女流が古典落語をきちんとやったら大変だ。
東西900人以上の噺家の1割しか女流はいないのに、その世間でのニーズは非常に大きくなった。
男の噺家も、色物みたいに見てたらダメだと。女流に勝るものを考えないといけない。

柏木アナが、今までの女流というものは、どうしてもネタが限られていたと。狸札みたいなかわいらしい噺か、新作か。
そうそう、こんなことはつい10年前にだってまだまだ言われていた。下手すると2年前にも。
柏木アナ続けて、でも女流には泥棒ネタはできないでしょと、松喬師の得意ネタをフォロー。
いやいやと松喬師、泥棒得意な女流が出るかもしれませんだって。歴史的にも女泥棒いたわけだし。
松喬師の認識のほうが正しいと思う。5年もしないうちに、泥棒噺を得意にする女流が出てくるでしょう。
私個人はちょくちょく書いてるが、東京の女流に廓噺を掛けて欲しい。

二葉さんは、米二師のもとで基本をちゃんと学んでいるからいいのだろうと。
かなり破壊力のある、言葉もキツい落語をしているのだが、根本から壊してしまってはいないのが見事と。
そこを壊していたら、権太楼師も文珍師も一票入れていないだろう。
二葉さんはNYタイムズから取材があったそうですと米紫師。

松喬師は、孫弟子に女流ができた。
喬介師の弟子で、喬明さん。
この喬明さんが落語会で大人気。昼間の落語会を一門でやったら、喬明さんが出るときだけ札止めになったという。
まだ彼女の同世代が来てくれているようになってはおらず、客は爺さん婆さんばかりなのだが、孫娘を見るような目で見守っているという。
もう、孫弟子に食わせてもらったらよろしやんと米紫師。

喬明さんは、喬介師が行った都島の学校寄席がきっかけで入門したのだと。
学校ももともと、落語に力を入れていたらしい。
松喬師に、これからは「喬明の大師匠」としてバーターで売り出したらどうですかと米紫師。
さんまの師匠(故・松之助)やんかと松喬師。

セクハラ裁判もあった上方落語界だが、先行きはなかなか明るいですね。
女流が活躍することで、落語とはなんなのか、また新たな側面が浮かび上がってきた気がする。

作成者: でっち定吉

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