黒門亭14 その4(柳亭小燕枝「試し酒」上)

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お待ちかねの柳亭小燕枝師。いつものように「これといっておもてなしもできませんが」から、早々と小燕枝ワールドに突入。
この空気感がたまらないのです。

インフルエンザで寄席を抜いた件にもちょっと触れていた。普通に高座に上がって、帰ってきてから39度まで熱が上がったそうで。
ちなみに、この黒門亭の日は、病気の飼い猫を入院させてきたそうな。
動物の医療費はやたら高い。昔飼っていた猫が5階の部屋から落ちて、足を骨折したことがある。猫とはいえ、家庭猫は運動神経が鈍くて着地をミスった。
そのときも13万円掛かったので、もう動物はやめようというのだが、おかみさん(師匠いわく、ばけべそ)がいつも連れてくる。老夫婦だけだとさみしいのだろうと。
そのおかみさんはお酒が好きで、午前4時まで外で飲んでいる。冬はちょっと早くて、午前2時。
わりと強引に、酒につながった。
師匠、先代小さんは「俺は酒はそんなに好きじゃねえ」と言っていた。飲みたいだけ飲むからと手酌を好んだそうで。
そんな師匠も、酔うと楽しくなって、坊主メクリで坊主が出るたびに年増のおっぱいを揉むなんて遊びをしている。どうもけしからんことで。
前座だった小燕枝師は師匠のお供をしていた。師匠がそんな楽しい遊びをしている中で、お客に一杯ごちそうになる。
帰り際に師匠が、「おめえ、酒飲んだな」「いただきました」「飲むときは、ちゃんとオレに断れ」。
おっぱいを喜んで揉んでいる師匠に、酒の許しなんか得られるわけがないと小燕枝師。
そして小三太だった小燕枝師、田中小実昌に新宿ゴールデン街に連れていってもらった。
小実昌先生は、ゴールデン街の飲み屋を、立ったまま水割りを飲んで27軒ハシゴしていく。
そんなことで小燕枝師もすっかり酒の修業をして、今ではなんとビール一杯飲めるようになったという。
昔、一門の集まりで酔った小燕枝師、当代小さん師のおでこでタバコを消したことがある。このときは破門されそうになった。

小燕枝師のマクラ、特に修業時代の話はいつも本当に面白い。黒門亭だとその昔話がたっぷり聴けていいのだ。
先代小さんの好きな私には、酔った師匠が年増のおっぱい揉んで喜んでいるエピソードはもう、たまりませんな。
そして本人は酒が飲めなくても、その観察眼で酒の噺を得意にしている師匠は結構いるものだ。
ネタ出しの試し酒へ。

続きます。

作成者: でっち定吉

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