神田明神「若手落語家の会」の桂南楽

神田連雀亭からハシゴである。
連雀亭を出て左手に進むと、昌平橋からつながっている広い道路(都道405号)にぶつかる。道の向かいにワテラスという立派な複合ビルがある。
その斜め向かいすぐが御茶ノ水ソラシティ。あれ、連雀亭からこんなに近かったっけ。
このあたり、道の向きがぐちゃぐちゃなんで、頭の中の地図が狂っていた。
お昼のお茶の水界隈はサラリーマンが多く、くつろぐ場所がない。しばし歩いてようやく明神そばのドトールに落ち着く。

神田明神には、文化交流館「EDOCCO STUDIO」という新しい建物が建っている。
この地下で毎週月曜、芸術協会の二ツ目さんの会「若手噺家を楽しむ落語の会」があるのだ。
以前から興味があったが、来たのは初めて。
タイトルは「若手落語家の会」でいい気がするのだが、気取って「噺家」を使ってみたい雰囲気はなんとなくわかる。
東京かわら版には間に合わなかったようで演者の名前がないのだが、Webを見ると桂南楽さん。
先日二ツ目に昇進したばかり。前座時代は南太郎。私の一押しであるユニークな人。
南楽は、師匠・小南の二ツ目時代の名前。

チケットはWebの前売りだと800円。2%発券手数料が乗せられて816円。
Webチケットをスタッフが確認するのも簡単。
こんな簡単にキャッシュレスが導入できるのだ。QRコード決済みたいにもたつく心配もない。
鈴本はじめ、寄席でやらない理由なんてあるまい?
こんなことを言うとすぐ、「キャッシュレスの手数料は高いんだ。寄席の迷惑も考えろ」などと言い出す連中がいる。知るか。
寄席がいつまでも旧態依然なうちにだ、もう「キャッシュレスじゃないから寄席はイヤ」っていう人、発生してると思うよ。
旧人類どもめ、ホモ・キャッシュレスをなめるなよ。
あと、歌舞伎座の幕見も、復活する際はこんな方式を取り入れてほしいものだ。

地下の会場は半分仕切られていた。
お客は20人。

車椅子の女性(付き添い付き)が、開演してから入ってきて、最前列に席を空けてもらう。
付き添いの女性は、何度も出たり入ったり。
最終的には二席目の途中で車椅子も出ていった。
障害者だからって、好き放題する自由があると思うなよ。
自虐的な語りをしている中で本当に出ていかれ、南楽さんも極めてやりにくそうだった。
この日はそれが残念。

転失気
茄子娘
悋気の独楽

期待の南楽さん、楽しい3席(1時間強)だったのだが、なんとはなくモヤモヤする思いもしたのであった。
なにしろ特殊なスタイルだから。
ユニークな個性のこの人、徹底した引き芸で、自虐をたっぷり使って、客に笑ってもらおうという芸。
そこはいい。
私はいやらしい自虐は嫌いだが、南楽さんのはいやらしくはない。
だが、一応伝統芸能を聴きにきたとおぼしき、真面目な客からすると、どう楽しんでいいのかわからない様子。
自分の中で上手い落語の基準を打ち立てている人からすると、「下手だ」と言い切ってしまいそうなところが見受けられる芸だ。
ちっとも下手ではないし、ヘタウマ芸を押し出すやり方でもない。でも、とにかくピンと来なさそうな。

私には、20年後に寄席の爆笑王になっている南楽さんのイメージが結構よく浮かぶ。
鯉昇・蝠丸といった系統の。
落語協会なら、もう少し固めだけど台所おさん師。
だが、そこへ至るまでの下積み自体は、なかなか厳しそうだ。
落語をたまに聴く客にはピンと来ないし、だからといって落語を知り尽くしてるぜというファンに響くかというと。人によるとしか。

先日鈴本で聴き酷評した林家やま彦さんだって、好きな人はちゃんといるのである。
あんな噺家が好きな人の感性も、まるでわからないというわけではない。だが私に言わせれば、基礎がまるで備わっていない。
同じことを南楽さんに感じる人だっているだろう。南楽さんはずっと上手いけど。

本人も高座で語っていたが、ひとりで1時間やるのはまだ大変みたい。
翌日から2日間草津温泉落語に行くので、3日連続ひとりで1時間なんだと言っていた。

2席目の茄子娘は得意ネタらしい。前回は遊雀独演会の前座で聴いた。
入船亭伝統のネタも、よそに出たものは爆笑落語になっている。
とはいえ、この日の客には引っ掛からなくて、苦笑落語気味だったが。

この日は、ちょっと環境がよくなかった印象。
また別のところで南楽さんを聴きたい。

まあ、この新しい会場の落語も、そのうち徐々に客と噛み合ってくるだろう。
噛み合うためには、本格派のほうがよさそうではあるけど。

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. 仙台花座での『新二ツ目昇進記念公演』があり、南楽さん、南馬さん、かけ橋さんを聞いてきました。若手ですがそれぞれにキャラが立っていて天然の南楽さん、元会社員だったしっかり者の南馬さん、、元二ツ目だったもっとしっかり者のかけ橋さんとすみ分けが出来ていて。
    今回の芸協の新二ツ目の方々には大いに期待しています。

    1. いらっしゃいませ。
      南馬さんはまだ聴けてませんが、南楽さんと同日入門らしいですね。
      下のほうの二ツ目さんでは、仁馬、昇などの人に着目しています。
      芸協ガンバレ。

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