黒門亭25(上・桂小文三「煮売屋」)

一昨日の鈴本、扇遊師の記事を何度かごみ箱に落としてしまい、閲覧不能になっていた時間があったかと思います。申しわけありません。

先日仕事の上でのストレス解消のため急遽花いち師を聴きに行った。
ストレスの原因になったその仕事、結局依頼があったのだが、案の定スタートのおかしいその仕事、やっぱりおかしくなった。
そのストレス解消に、また出かけます。
日曜の平井で芸協の二ツ目さんを聴こうかと思っていたが、土曜に繰り上げる。

黒門亭に、隅田川馬石師登場。
ネタ出し演目が、一度聴いた淀五郎なので躊躇していたのだが、行ってよかった。
新たな刺激も貰った。

3月の黒門亭についで、また満員。ちなみにその3月も馬石師(明烏)である。
黒門亭に顔付けされる芸人(非理事)の中では、一番人気ある人かもしれないな。
白鳥師もベタ褒めだもの。

桃太郎歌ん太
煮売屋小文三
文雀
(仲入り)
壺算菊龍
淀五郎(ネタ出し)馬石

前座は三遊亭歌ん太さん。開演前は忙しく働いていた。
この人は二度目であり、前回なかなか褒めております。
黒門亭だからって前座の作法が違うことはないはずだが、でも自分のマクラを振っていた。
童謡は歌詞がおかしいというネタ。犬のおまわりさん仕事してよとか、猫は踏まれ過ぎだとか、お池にはまってさあ大変なのに遊んでる場合かとか。
せっかくのマクラだが、内容はまったく大したことはない。
本編・桃太郎に入るとなかなか軽快。金坊が生意気過ぎず、理路整然と攻めてくる。
口調もいい。

歌ん太さんが、見台と膝隠しを持ってくる。
二ツ目は、上方からの来援だ。落語協会直営の黒門亭、他団体は呼ばないが上方からはたまに呼ぶ。
桂小文三さん。名前の通り、文三師の弟子。
東京は初めてですとのこと。黒門亭のあとは、春風亭だいえいさんと二人会があるらしい。

小文三という名なのでなんとなく小さいイメージを持たれるようですが、意外と大男ですと自己紹介。
大阪ではこんな挨拶をして、いつもスルーされてます。東京でクスッとしてもらえてよかったです。
今朝新幹線で来ました。私も電子タバコ吸うんですけど、東京は灰皿が本当に少ないですね。
動楽亭のある新世界なんて、灰皿だらけですよ。

ジャカルタで落語をやった話。日本人会に呼ばれて。
安いホテルはリアルミッキーマウスが出た。
夜は屋台で食事するのが楽しみ。流しのバンドがやってきまして、ナシゴレン食べてるぼくの耳のそばで歌いだすんですわ。
英語が通じないのでわけのわからないやりとりのあと、彼らはYMCAを歌いだしました。

小文三さん、ひとつしぐさが間違ってます。YMCAの「C」は客から見てCに見えるように開くんですぜ。

私は大学まで硬式野球をやってました。落語界広しといえども、私だけじゃないですか。
高校は厳しいので有名な桜宮高校です。阪神にいた矢野燿大選手が先輩です。
高校ではエラーしたら外野に正座して、ひたすら謝罪し続けるのがルールでした。しょっちゅう正座してたおかげで、噺家になって辛くありません。
大阪大会では、開会式当日の試合が当たりました。京セラドームで試合できたんです。
私はベンチ入りできませんでした。野球は5流ですけど、当時ギャガーとしては一流だったんですね。
補欠はスタンドでギャグを披露する習慣がありまして。
「これが目に入らぬか。ただの二の腕」という渾身のギャグをやったら、ちょうどカメラに移されて、ビジョンにも大きく映し出されました。
それが私の笑いのピークで、いまだに超えられません。

ここまで聴いてようやく、小文三さん、神戸新開地喜楽館の配信で最近聴いた人だということを思い出した。
当ブログでは、「数年後にはNHK新人落語大賞に出ているに違いない」とバカな褒めようであったのだが。
忘れててごめんなさい。いや、上方落語家の若手有望株も多いからさ。
上方落語も楽しいものだ。喜楽館の配信はまたいずれ再開しようと思っている。

長いマクラから、東の旅。
「らはが北山」から、腹をらはというごとく、粋(すい)言葉。
アホの喜六が「め」「みみ」をひっくり返せと無理難題。
東京落語だと、二人旅でこのくだり聴けますね。あまり掛からないけど。

煮売り屋でもって、爺さんになぶられ、清八がなぶり返す。
「あの『くちのうえ』ちゅうのをくれ」とか。

結局高野豆腐の汁を絞ってもらい、そこに生節の汁を掛けてもらう。
月命日やけども遺言で汁はええと言われたので。
酒は3種類、むらさめににわさめにじきさめ。

軽やかで楽しい一席。
馬石師を目当てに来た今日のお客、みんな小文三さんが好きになったろう。私もです。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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