池袋演芸場34 その5(瀧川鯉朝「ペコとマリアとゆかいな仲間」)

ヒザ前、古今亭今輔師はウルトラクイズ出場の話から、またしても雑学刑事。
これで寄席では3連続雑学刑事になっちゃった。
残念に思ったのだが、でも相変わらず面白いなあ。
一席できそうなぐらい中身覚えてるのだけど、極めて完成度の高い噺だと、改めて思った。
そのうち日本の話芸に出るんじゃなかろうか。民放のクイズ番組が取り上げられてる程度は、今のNHKはセーフ。

そして、劇中のクイズが入れ替わっていた。
警察が110番通報後、現場に駆けつけるまでの時間が「レスポンスタイム」。
今輔師、古びないよう工夫してるのだ。
この噺のおかげで、絶海の孤島、トリスタン・ダ・クーニャ島の名まで覚えちゃった。

ヒザはかなり楽しみにしてきたコント青年団。
選挙終わったばかりで、どんなあぶなネタを入れてくるか。

と思ったら、先生と生徒のネタで政治はやや抑えめだったけど。それでもやっぱりたまらない。
生徒の服部さんが習近平に似てるので、先生が「この共産党」。
「共産党呼ばわりはいくら寄席でもよくないんじゃないですか」
だかられいわにも負けちゃうんだよなんてそれらしいセリフも。
続けて服部さんをくまのプーさん呼ばわりするが、これはどう考えても習近平自体を揶揄してるわけだ。そこまで語らないけど。
相変わらずのグダグダさと客いじりがたまらない。

トリは瀧川鯉朝師。
全力で、柳昇一門会の宣伝。
吉祥寺でやってお客さんもしっかりついていたのに、休館で会場を探し、北とぴあに。
既存のお客さんには遠すぎるみたいで、全然埋まらないそうで。
私もこの一門大好きで、行けたら行きたいけども。

宣伝のことばかり頭にあって、今からやる噺が決まっていません。
お客さんに訊いてみます。古典落語と新作落語、どっちがいいですか? 拍手の量で決めます。
古典落語がいい人? 新作落語がいい人?
わずかに新作落語のようですね。
この5日間、古典も出しますので。ぜひもう1日いらしてください。

私は新作が聴きたくて、全力で新作に手を叩いた。
でも、古典が聴きたいという人も多かった。
よく考えたら、仲入りで応挙の幽霊は出たけど、あとは軽い噺。
古典を聴きたい人の気持ちも、あとから思えば全然わかるけど。

ちなみに5日火曜(千秋楽)、用事さえなければ本気でもう1日行きたかった。

噺が決まったところで、改めてマクラは北千住。
竹ノ塚から越した鯉朝師、しばらく北千住に住んでいた。
日光街道沿いに商店街が立ち並ぶ、暮らしやすい街。
商店街で見つけた、人情味あふれる、うどん玉を売る店。
初めてうどんを買う鯉朝師に、主人はとても親切。
余ったうどんつゆもわけてくれる。
袋に詰めたうどんつゆが、西陽を浴びてきらきらしていた。
人情味を全部ひっくり返すオチがついていた。
お店がアコギとかではなくて。
いかにもありそうな人情味と、それがごく自然に裏切られる、実話のインパクトがたまらない。

本編は南千住。荒川区だ。
南千住の商店街を舞台にした噺といえば、二度聴いた「街角のあの娘」である。
同じ噺を好んで聴きたいことはないが、ペコちゃんが主人公のこの噺でも、別にガッカリはしなかったと思う。不思議だが。
だが、違う噺。でも主人公はペコ。

季節モノらしい。
商店街のハロウィン企画で、街角の人形たちが集められている。
人形たちはこの期間だけ、コスプレをするのだ。
人形たちは、人間とは話せないが、人形同士では会話できるので、この催しを楽しみにしている。

あいつのいない朝でもおなじみ、象のサトちゃんは実名なのに、カエルのケロは伏せられていた。コーワから許可が下りないのか?
他にもケンタッキーのおじさんや、ビクターの犬など集まっている。
すしざんまいはまだない。

人形たちの話題は、インド人夫妻の娘、マリアちゃんのこと。
人形たちにいつも話しかけてくるマリアちゃんは悩んでいる。
インドから、一人暮らしさせられないと日本に来たお爺さんが、日本に慣れず引きこもってしまっている。
何とかしてあげたい人形たち。でもどうしようもない。

ケロが、念じ続けていたら本物のカエルが大量に呼べるようになったという。
商店街にカエル大量発生させても迷惑なだけだが、これをヒントにサトちゃんがお爺さんを元気づける方法を考える。

人情味が裏切られるマクラはこうしてみると実に効果的だ。
人形たちがわちゃわちゃやっているのは楽しい場面。
マクラと逆に、楽しさの中に人情が勝手に噴き出してくる。
サトちゃんの呼び起こす超常現象でもって、ハッピーエンド。
古典落語を聴きたかったお客も、きっと満足したと思いたい。
明日は夜席のもようを1日

 
 

作成者: でっち定吉

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