国立演芸場寄席@紀尾井小ホール2 その1(桂枝平「牛ほめ」)

先日、池袋・浅草と橘家圓太郎師のトリが二席続けてあったが、どちらも行けなかった。
幸い今月もトリがある。国立演芸場代替の紀尾井小ホールへ。

うっかりして、カネおろさないで現地に着いてしまった。
昨日現金しか使えないラーメン屋に行ってしまったことを地味に悔やむ。
開演時間まで間がないから、仕方なく登ったばかりの坂を降り、先ほどお茶を買ったばかりのセブンのATMでおろす。
手数料220円。
東京かわら版割引のためオンラインで買わずに来たのだが。
かわら版の割引は200円。
私はこういう小銭の損失について、ずっと後悔しながら一生を終えるのであろう。

紀尾井小ホールは、昨年雨花師の披露目で来て以来だ。
5階からの眺めもいいし、いいホール。
当日券の空席は決して多くないのに、実際の客入りは40人くらい。どういうからくりだろう。
池袋演芸場に詰めちゃえば、ぜんぜん格好のつく人数だ。

非常に国立らしい顔付け。
いかにも国立、と思ってパスすることもあるが、今席のように狙ってやって来ることも。

牛ほめ 枝平
やかんなめ いっ休
風藤松原
券売機女房 わさび
お菊の皿 柳朝
(仲入り)
野ざらし 扇橋
茄子娘 たけ平
小春
短命 圓太郎

前座は桂枝平さん。すでに落語協会の前座香盤の4番目にいる。もう立前座か。
この人の高座で、嬉しいような、そうでもないような。
もう4度め。
最初聴いてオチケンだなと思ったが、その後は見事。
今や非常に上手い前座だが、実にあざとい。
上手さと創作力に驚嘆し、あざとさにちょいと引く。
どんな二ツ目になるか大体想像はつく。

袖口からよたよた歩いてくる。出からあざとい!
着座してからメガネを外し、「桂枝平と申しまして開口一番務めます」。

落語の登場人物は八っつぁん熊さんに横丁のご隠居さん、馬鹿で与太郎と申します。
牛ほめへ。

あざといのはさておいて、実に見事な高座。
親父の教える挨拶を一生懸命筆に起こすが、当然間違いだらけ。
どうせそんなことだろうと、おとっつぁん最初から書いておいたから、と与太郎に手渡す。
もうやられた。

与太郎が字を書く際、いちいち筆に墨を含ませている所作に感服。
こんなの見たことあったかな。
あざといのに丁寧だ。

珍しく「お床も結構」が入っていた。この後「お軸も結構」だが、合わせて抜いてるものが多い。
入れてるだけあって、ここを徹底的に使う。
与太郎、「男も結構」だってとツボに入ってウケている。

「佐兵衛のカカアは引きずりだ」は、おとっつぁんがいつも言ってるからスラスラ出るんだって。おとっつぁん、言ってないよと否定。

おじさん家では、おじさんとおばさんにそれぞれ手で作った三角形を見ろ、外を見るなと与太郎。

造作を褒め、「お床も結構」で再度爆笑し、見てない庭をカンニングで褒め、さりげなく「喉乾いた」と台所へ。
おじさんあんなところに節穴が。
お前今探してたろ。

秋葉さまのくだりをクリアし、従姉を褒めちゃうよと得意げな与太郎。
その場にいない従姉を天角地眼一黒鹿頭で褒めてしまい、おじさんが察して牛を見せに連れてってくれる。
地味にマルチタスクな創作力。
擦り切れてる古典落語なのにムダがない。

とにかく上手いが、どう出世していくだろう。
早めにNHK新人落語大賞など獲ってしまいかねないイメージだ、
100%想像だが、コツコツ新作書いてそう。
あざとさが武器になるといいなと思った。

二ツ目は春風亭いっ休さん。
二ツ目になってからは初めてだが、神田連雀亭の配信で聴いた明烏はよかった。
一之輔の3番弟子のいっ休です。
弟子が5人います。上から㐂いち、与いち、いっ休、貫いち、らいちといまして。
私以外、下に「いち」が付きます。
私も名前付けてもらうとき、同じスタイルにする話もあったんです。
最初に師匠が考えたのが「ぴかいち」、まあ、見た目通りですけど。
その後は「芳いち」になるところだったんです。
師匠がツカミギャグも考えてくれました。
「春風亭芳いちです。ほういちだけに、お客さまのお耳をちょうだいします」
結局、おかみさんの反対で芳いちはなくなりました。

本編は落語協会、芸術協会その他いろんなところで流行っているやかんなめ。
三朝師に教わったんでしょうか。
あいにく寝落ちしてしまって覚えてません。すまん。

続きます。