今月読売ランド前の棕櫚亭に出向いたばかり。
帰り道、山を登る気はないが横を掠めて南武線まで出ようかなどいろいろ考えたので、妙に話がなじみ深い。
結局その際は1駅歩いて、生田のドトールで初日の記事書いたのだけど。
小田急読売ランド前駅は、前駅としては、名のついた施設に異常に遠い。
なのに小田急は、ちっとも前にないその事実を隠し、客を騙してこの駅で降ろしている。
今日もまた被害者が。
読売ランド前駅から山を登るカップル。看板にはすぐそことあるが、いつまで歩いてもよみうりランドは見えてこない。
彼女はディズニーランドに行けばよかったと。彼氏は、本当は巨人戦を観にいきたかったが、読売とランドでよみうりランドにしたらしい。
小田急読売ランド前を甘くみた。京王のよみうりランド駅からなら、ゴンドラですぐなのに。
カップルは山中で、50年前同じように小田急に騙されて山を登り、遭難したまま居ついてしまったおじいさんに出くわす。
下山を決断する二人。おじいさんも連れていこう。
下りていくと、道が二股に分かれていて、片方は京王よみうりランド、片方は小田急読売ランド前。
騙されるなとおじいさん。これは罠だ。小田急のほうへ進むと、向ヶ丘遊園に連れていかれる。もう遊園地もないのにいまだにこの名前を名乗り続けている駅へ。
いっぽう、読売ランド前駅で働く新人駅員。
今日もお客を騙し、よみうりランドに向かう客を降ろしている。みんな遭難するとも知らず。
事実は教えられない。教えるとみんな京王のほうに向かってしまう。
憧れの小田急電鉄に就職したのに、なんてブラック企業なんだ。
しかし駅長は取り合ってくれない。
またしても、よみうりランドへ向かう家族連れを見送ってしまう。
このお兄ちゃんを励ますのが、読売ランド前駅の売店のおばちゃん。過去を持ったキャラ。
ひどい設定だが、この噺を聴いて大喜びするに違いない小田急職員のリアルを想像すると、より面白い。
駒治師、マクラでもって最近お客に鉄道関係者が多いという話をこの日も振っていたが、なんだかすごくよくわかります。
ミルクボーイの漫才で、コーンフレークやもなかの関係者が喜んだのと同種。
駒治師はひどい噺でもって、鉄道マンの誇りを嵩上げしているわけで、実に偉い人。
100%の嘘から作り上げるのが駒治落語。
小田急電鉄が、よみうりランドに着くのを諦めて下山する客を洞窟に閉じ込め、使役しているという大嘘だけで一席作ってしまう。
そしてこの人の共通項として、宙を飛ぶ架空の物語の中に、人情を盛り込んでしまう。
とことんふざけてるのに、お話の爽快感も盛り込まれている。
やっぱり駒治師は面白い。
爆笑の連続で、もうすっかり疲れている。
最後のきく麿師もさらに面白かったが、比較的疲れにくい噺でよかった。
とはいえ、終演予定時刻(1時半)より10分早く終わって、まったくガッカリしなかった。
それだけ満足度が深い。
白鳥師の話。
この人も鈴本に出ている。実に珍しくも、飲みに行こうよと声を掛けてくる。
うち帰ったら家族が出かけててさ、さみしくなっちゃって。
鈴本のそばで馬鹿話してたら、ストレート松浦先生もやってきたので3人で飲んでいた。
寄席のお客さんも来ていて、ボトルを差し入れてくれる。
白鳥師(腕を体の横に揃えるモノマネ入り)「いいですよ。カネ持ってますから自分で出します」。
おいおい、お客さんがご馳走してくれるっていうのに、ここはお礼を言うとこだろ。
カネなら持ってますじゃないよ。
ボトルいただいたので、もう1日行こうと思います。
本編「漫才やりたい」は、噺家どうしの会話でできている。
噺家であることは、徐々にわかってくる仕掛け。
そしてどうやら同期らしい。
落語もいいけど、漫才はいいよな。
M-1なんか出たら一夜にしてスターだ。
相方のほうは別に落語でいいやと思ってるが、流れで漫才やってみることに。
と言って、ちゃんと台本書いて稽古してなんていうのではない。試しにアドリブでやってみるだけ。
巻き込まれたツッコミの相方は、最初は合いの手しか入れない。
ツッコめよと文句言われる。
ツッコミだすと、そこは噺家。ひとりで会話を無限に拡大してしまう。
替われ、お前ボケろ。
方法論が間違ってるから面白いわけのない漫才で、落語の客を爆笑させる、究極の話芸である。
とはいえ、劇中の漫才自体もそこそこ面白い。そこは話芸のプロなので。
落語のプロがリアルに感じる、漫才師への敬意も濃厚に漂ってくる。
あと1席目もそうだが、きく麿師意外と怒り芸。
噺の世界自体はだいたい穏やかだが、劇中で怒るのが非常にいいアクセントになる。
そして、ある種漫才の本質を捉えているではないか。特に寄席漫才の。
寄席漫才は、稽古してから掛けるようなきちっとしたものではない。
流れはあるにしても、その日の雰囲気でどんどん手を入れていく。
だからこの落語自体も、想像だが、アドリブを大事にしてるんじゃないかな。
またどこかで聴きたい。
本当に漫才の出る寄席ではやりづらいかもしれないが。
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