鈴本演芸場13 その5(入船亭扇遊「ねずみ」)

鈴本は今日でおしまいです。

トリは入船亭の総帥、扇遊師。
柳家小菊師匠で寝せていただき(すみません)、準備万端。

昨日は局所的に大雨が降ったようですね。
私の師匠は九代目の入船亭扇橋です。今、十代目ができましたけど。
扇橋は、昨日7月10日が命日なんですよ。
師匠も亡くなって10年になります。師匠が忘れないでと言って、大雨降らせたんじゃないかと思うんです。
これを扇橋降水帯と申しまして(バカウケ)。

先ほど出ました弟子の遊京が、今度真打になります。
遊京はまだ二ツ目です。落語界には身分差というものがあります。

そしてここからつながらない話を、思い出したのであろう、急に始める。

私は、伊東高校の出でして。出身は熱海です。
伊東、今色々騒ぎになってまして。伊東高校出身者としては複雑ですね。
あの市長さんが学歴を詐称したとか、そういうことはわかりません。
ただ、あの髪型。コロナの時によく絵を見ましたね、アマビエというやつ。あれを思い出して仕方ありません。
髪の毛はもう少し綺麗にしていただいたほうがいいんじゃないかと思います。

前日の圓太郎師の上席千秋楽と比較の上でこの日を選んだのは、ひょっとすると伊東市長の話が出るんじゃないかと思ったのが、理由として一つある。
なので聞けて嬉しいです。
ちゃんとアマビエが出てきてオチが付くのだった。
この席では、毎日喋ってるのでしょうか。

旅を振って、仙台の街を坊やの客引きに捕まる、ねずみ。
ねずみね。前日の鯉昇師との会でも出したらしい。
落語研究会で流れた扇遊師のねずみ、ずいぶん聴き込んだ。その噺か。
今年は、扇辰師からも聴いている。扇辰師から教わったらしい文吾さんからも。
別に子年じゃないのに。どっちかというと田能久の年。
聴き込んだ噺だが、扇遊師の芝居に来ると決めた際、知らない噺が出るかもという期待はしていない。まあ、だいたいスタンダードな噺が出るとしたところでしょう。
突落しとか、人形買いとか珍しいのもお持ちではあるが。

あまり関係ない話を。
桂吉弥師のラジオ聴いてたら、ゲストが中村美津子。
中村美津子のコンサートは、よく司会を同じゴールデンミュージックプロモーション所属の三遊亭遊子さんが務めているのだそうだ。
遊子さんの名が出た際に吉弥師、いつもお世話になってる扇遊師匠の一門ですだって。
遊がついてても違うよ。亭号も違うじゃないか。
吉弥師はかつて「試し酒」を扇遊師に教わったのであった。

さて、ねずみ。
今まで気にしたことなかったけども、甚五郎、旅の目的地は一体どこなんだろう。
仙台は明らかに目的地ではない。目的地だったら滞在するだろうし。
もっと奥に、何の用があって旅をしてるのだろうか。
でも、仙台の宿を抜けてさらに北、たとえば奥州平泉に旅をしたら、帰り道でねずみ屋に寄りそうだけど?
芭蕉よろしく北陸に向かいでもしたのだろうか?

扇辰師のものも聴いて比較し、改めて思う。扇遊師の甚五郎は、穏やかなファニーぶりが魅力である。
客引きの坊やが、何せ子供だから無礼の限りなのだが、少しも腹を立てない。
布団は布団屋から受けだすから往来で先払いしてくれ、一人で行ってくれ、夜はお寿司をおいらとおとっつぁんの分まで頼むので出してくれ。
ムカついた描写すらない、大人の甚五郎。
かつて三井の大黒で、気に入らないので仕事場からぷいといなくなってしまう人と同一人物には思えない。
ここで感情の起伏がありでもしたら、すんなりねずみの彫り物には進まないわけで、意外と緻密な構成の噺である。
サゲの前に甚五郎たちが飯田丹下の彫った虎を酷評しているのも、つまり虎には思えない(下位互換の猫)ということだ。
そこまで含めたサゲ。

近郷の二人が最初にねずみを見つける場面、ねずみ屋の客がどっと増える場面で露骨なウケを狙わない。
扇辰師とここが違う。と言って、扇辰師が露骨にウケ狙ってるわけじゃないですが。
ただ扇辰師だとドロップキックが入る。

普通の鈴本定席、満足しました。
初日ですので、皆さん打ち上げに出かけられたものと思います。

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