鈴本とシブラクとを交代で続けます。今日はシブラク。
高座返しは女性の前座さん。
パワハラ、セクハラのためか女性の前座はめっきり少なくなった。芸術協会も新たな入門者がいない限り、じきいなくなる。
二番手は立川笑二さん。
もっぱら神田連雀亭で聴かせてもらっていたが、抜けてしまい聴けなくなった。一旦戻ったみたいだけど。
なので2年ぶり。
兄弟子、吉笑の真打昇進の話。
我々寄席育ちではないので、高円寺で連続10日の公演は、なかなか大変だと。
下のものから壊れていく。
末弟の笑王丸は、やたら独り言を話すようになった。
3番弟子の談洲は番頭。色々仕切ってくれるが、「着物忘れたんで」途中で帰ってしまう。
いつもマクラ楽しい人だが、今回はそれほどでも。
今日は貧民窟の噺をします。スラムですね。
舞台は下谷の山崎町。黄金ため込んだ西念坊主。
こんな出番で、大ネタの黄金餅である。まあ、30分あるからして。
笑二さんは、古典落語にバイオレンスを持ち込む人。
私は暴力、本質的には決して好きな要素ではない。だが、笑二さんの効果的なバイオレンス導入にはいつも感心している。
だが、元々暴力的な落語の黄金餅に、さらなるバイオレンスを盛り込むのは果たしてどうだったろう。何もしなくても、死体損壊、大金猫ババの噺であるのに。
そんなに多くはないお客さん、引いた人も多かったのでは。
で、私も結構感性の部分で引いてしまい。
何しろ、餅を飲み込む西念坊主を金兵衛が引っぱたいて吐き出させようとし、結局それで死なせちゃうのである。
当人は寿命が来たと思ってるけど。
焼き場への道中、再度重要な暴力(というか殺人)があり。
演者目線からはあくまでもギャグとして取り入れられる、暴力ネタの数々。
久しぶりに聴いたら、今の今まで笑二さんと細く、しかししっかりと繋がっていた糸が、ブチっと切れてしまった気がしてならぬ。
今後この人避けてしまう可能性もゼロではない。
人を殺して笑いを得る感性にわざわざついていかなくても、落語の世界、いくらでも楽しい要素に溢れている。
まあ、よくも悪くも立川流からしか生まれない芸人だ。
そして立川流は避けるのが簡単。
笑二さん、噺自体を極めて効果的に編集しており、この点はいたく感心した。
道中付けも、最初から拍手をもらわない前提でサラッと喋る。
サゲも効果的に改変。このサゲはいいと思った。
2分のインターバル挟んで、後半は77歳、柳家小里ん師から。
4年ぶりじゃないかと思う。それほど高座に接していない割に、この師匠の名は当ブログで頻出なのだ。
なので最後にいつ聴いたか調べてもよくわからない。
しかし過去に聴いた高座はすべてインパクト大。ブログ始める前に鈴本のトリで聴いた「言訳座頭」なんてすごいものだった。
小さなあいびきが用意されている。
昔の子供のおもちゃの話。
樟脳を固めて作った長太郎玉というおもちゃがあった。火をつけて、手の上で転がしても火傷しない。
箪笥の中や、お雛さまの保存のため、虫除けとして樟脳を使った話。
一度も聴いたことのない噺でも、半分ぐらいはタイトルが勝手に脳裏に浮かぶ。
このマクラから、「樟脳玉」という演題が浮かんできた。
珍品大好き、来年真打の柳家圭花さんが、師匠・花緑から引き継いで持ってると聞いた。
だが、樟脳玉という噺の中身については何も知らない。これからゆっくり聴くわけだ。
これは実にいいお土産をもらった。
花緑師へも、小里ん師から行っているのだろうか?
樟脳玉、こんなマイナーな噺もないものだが、非常に古典落語らしい要素に溢れている。
- 人を騙して利益を得る(多数)
- 人を騙すため幽霊を出す(不動坊)
- 人魂を出す(不動坊)
- 亡くなった妻への未練(反魂香)
- 常識ある、毎朝挨拶する人間を悪く言う(猫久)
- 結局は(ほぼ)失敗(多数)
結局は、大ネタの不動坊やってりゃ盛り上がるしいいじゃないかということになって、それで掛からないのだろう。
ちりとてちんに対する酢豆腐、お菊の皿に対する応挙の幽霊ってとこか。
樟脳玉の登場人物、悪役が二人、八っつぁんとアニキ。
いいほうはねじ兵衛さん。なんちゅう名前だ。別に吉っつぁんとかでいいんだろうけど。
ねじ兵衛さんは、それはそれはいい女だった女房を亡くしたばかり。日夜涙に暮れて拝んでいる。
八っつぁんが悪だくみ。不動坊のごとく前座の噺家に幽霊になってもらい、亭主に向かって恨めしいと言ってもらおうと。
そうすりゃ供養のため、金も出てくる。寺に入れる金をネコババだ。
アニイはねじ兵衛の財産を、夜中に釣竿で持ってってくれ。
アニイは返す。お前の考えは穴がある。ねじ兵衛の野郎が、恋女房の幽霊が出てきて、喜びのあまり抱きついたら台無しだ。
そしてアニイ自身が新たなアイディアを出す。
長太郎玉に火をつけて、天窓から吊り下げて人魂にしよう。翌日訪ねていけば、女房が浮かばれていないらしいと話が聞けるだろう。
あまりにも思った通り話が進む。
八っつぁんは死んだ女房の高価な衣服を「寺に納めます」ともらってくるが、金のことを忘れていた。
しまったと、もうひと晩人魂を出す。
サゲももちろん知らなかったので、大変楽しんだ。
続きます。トリは柳亭小痴楽師です。
ただし明日は鈴本のトリに戻ります。
(追記)
笑二さんはメンタル不調で静養してたのですね。初めて知った。