女流落語家の名前の付け方(師匠から字をもらうにあたり)

当ブログは3日間にわたり佑輔まつりでした。
話題の噺家さんについていろいろ調べたくなったときに、当ブログがヒットする。
古今亭佑輔さんが妊娠したニュースには個人的に関心ないけども、ちょっといたずら心を起こし昼間の三三師の会(ゲスト佑輔)に行ってみようかとは思った。
売り切れてましたね。

さて、佑輔というのが男の名前なので、日頃落語を聴かない層には不思議に映るようだ。
「古今亭佑輔 ジェンダー」なんて検索ワードまである。
なにか男の名をつける特殊事情でもあるかと想像しているらしい。
でも別に、男の名をつけた女性の芸人だって珍しいわけではない。
橘之助とかうめ吉とか。
うめ吉姐さんは「おじいさんではございません。おねえさんです」。
「◯吉」みたいな名前は、深川芸者の伝統。
噺家だって、女性なのに林家きよ彦。師匠が彦いちだから。
妹弟子は「ひこうき」だった(現・笑福亭ちづ光)。
佑輔さんの場合は、前の師匠に、ビジュアルで売り出されたトラウマもあり、ユニセックスぽくしている事実はあるようだ。
とは言え、新しい師匠(古今亭志ん輔)が弟子につけられる字は「輔」だけ。さすがに「志ん」は付けづらい。
なので輔の字が付くのは当たり前。
上方には桂鞠輔という女性がいる。この人も師匠(桂米輔…ヨネスケ師とは別人)から「輔」の字をもらっているのである。

だが、師匠によっては、自分の一字を使ってうまいこと女性の名を付けてるなと思うこともある。
女性落語家の名付け方法について考えます。

桂あやめ師匠は、上方女流落語のパイオニアのひとり。
あやめは女性らしい名だが、師匠の五代目文枝(男)がかつて名乗っていた。だから襲名である。
襲名する前は、文枝一門らしく「枝」の字をもらって「花枝(はなし)」。
当代あやめ師の弟子は、「さろめ」(廃業)と「おとめ」。
さらに志願者が来たら「にゃろめ」とか「ざらめ」とか付けられるのだろうか。
目の間隔の広い弟子が来たら「ひらめ」とか。

人気者の桂二葉さんも、師匠・米二の一字をもらったもので、王道の名付け方。
このように女性も大多数は、男の弟子と同じルールで師匠の名から一字をもらっている。
桂南海(ナンシー)さんなんて、師匠小南から一字もらって実は王道。
桂右團治、三遊亭律歌、春風亭一花、柳家花ごめ、桂しん華etc.

先日静養のため活動休止を発表したという、上方の笑福亭喬明さん。
師匠は喬介。その師匠松喬(元・三喬)から一字もらった名前。
この場合、孫弟子には師匠からもらった「喬」の字でなく、「介」をつけるのが普通。
ただ、女性につけられなかったのでしょう。

「輔」など典型例だが、師匠の名をもらうと男の名前になってしまうこともある。だが、ちょっと工夫する例も。
柳亭こみち師匠は、師匠燕路の「路」を取って「小路」としたものであろう。
権利を持つ小きん師が譲ってくれてれば「つばめ」を襲名できたのだが。

三遊亭美よしさんは、師匠遊吉の「吉」を「よし」と呼んで、もらっているのである。
今芸協の筆頭前座の立川幸路(ゆきじ)さんもこのパターン。師匠談幸は弟子に「幸」の字を与えている。
男の弟子はみな「こう」と読むが、幸路さんだけ「ゆき」とした。「さち」も考えたことだろう。

下ネタ落語で有名な桂ぽんぽ娘さんは、師匠が文福。
ぶんぶく茶釜からの連想でポンポコになっているのだろう。

あやめ師より古い、上方女流落語のパイオニアが、露の都師。
師匠は露乃五郎(のち露の五郎兵衛)。
師匠は字を譲るような性質の名ではないので、字はもらっていない。
都師の弟子はみな女性で、「一字の名」というのが共通項(例外あり)。

雅、眞、紫、瑞、棗、陽、陽照、庚。
廃業した人に、楓、湊都。

亭号が比較的珍しいこともあり、一字の名で師弟関係がすぐわかるという面白い例。

海老名の林家には女性としてなな子、つる子がいる。
ここは本来みな「平」をもらうルールである。女性には使えないので新しいルールにしたのだろう。
あんこさんはよくわからない。師匠しん平から「ん」の字をもらったって言ってなかったっけ。そういうギャグだったっけ。

師匠から字をもらっていないのが、蝶花楼桃花師。
前座時代はぽっぽ、二ツ目でぴっかり。
上の弟子はあさり(現・橘家圓太郎)、あさ市(現・五明楼玉の輔)、と朝の字を付けていたし、廃業や移籍した人たちにも「あ」ぐらいは付けていたが、飽きたのか。女性だから別扱いにしたのか。

川柳つくし師は、師匠が川柳川柳で、字をもらいようがない。

名前もらうにも色々あります。

 
 

「女流落語家の名前の付け方(師匠から字をもらうにあたり)」への2件のフィードバック

  1. こちらの読み違えなら、申し訳ありません。
    小春志師の亭号が桂になっています…
    あと、小春志師こそ談春の春の字を貰っているのではないでしょうか?こはるという名前も師匠談春の春の字を平仮名にしていたのでは?
    小春志師の名前、とても素敵だなといつも思っております。談志、談春から一字ずつ貰って音読みすることで、師の男勝りなイメージとも合致してカッコ良いなぁと思います。

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    • ご指摘ありがとうございます。
      それも、お気遣い賜り、やんわりと。
      長らく大きな間違いが放置されておりました。恥ずかしい限りで。
      もう、直しようがないので小春志師に関する部分、カットしました。

      返信

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