神田連雀亭ワンコイン寄席67(下・立川うぃん「お釣り事件」)

テンション高い伸しんさんの青菜は、旦那に呼びかけられた植木屋が慌てふためいている。わかりやすい。
その後の自己釈明はない。
旦那は上方出身みたい。「こちらでは直しというそうですな」。
植木屋が、「旦那、柳陰が九郎判官になりました」と言ってるのは珍しい。

ひとりになってからも、テンションの高い植木屋、全力で持って隠し言葉を「やりてー!」。
かみさんは、なんでも元京都の公家奉公だそうな。かつては言葉が馬鹿っ丁寧だったのに、すっかり崩れてしまったと植木家嘆いている。
たらちねを入れ込んだお遊び。遊雀師がやりそうな。

ここまではいいとして、個人的に大嫌いなクスグリが。
やってきた友達が植木屋のお遊びに対し「お前大阪に友達なんかいるわけねえだろう。町内だって俺ひとりなのに」。
植木屋の評判が急に入るこのクスグリ、多数派ではないが、元々大嫌い。
個人の好き嫌いを正義として拡大したいわけではなくて、ここまで続けてきた噺のムードに合っていないのではないか。
躁病気味で描いてきた楽しい植木屋が、ここで急にひとり遊びするしかないカワイソーな人に化けてしまうではないか。
これはないなと思う。
ストーリー的にも、すでに湯に入って戻ってきたこの友達個人を待ってるわけじゃないんだし。たまたま来ただけなのである。
さらっと入れてるのでまだ罪は軽いけど、なら最初から入れなければいいのに。

意識モーロー、たっぷりめの「旦那さま」とか面白かったんだけども。
サゲは義経ではなく、静御前。

トリは今年早くも3席めの立川うぃんさん。それまでまったく遭遇してこなかった。
細おもてで、誰かに似てるなと思ったら、市原隼人によく似ている。

私もたまに出向く読売ランド前の棕櫚亭で、いつも1人や2人の客の前で公開稽古してるらしい。
それは知らなかった。

毎回新たな引き出しが開く人で、見逃せないなと。
今回はマクラでまた新たな味を感じた。
本編はねずみで、この地味で滋味溢れる噺は、二ツ目さんには難しいねえという印象。
伸しんさんと雰囲気を変えたかったんだろう。

うわー、座布団あったかいですね。熱演ですね。
しばらく伸しんさんをいじる。うぃんさんの方が先輩なので、どうみてもおじさんの伸しんさんを呼び捨て。
伸しん、今袖から顔を出しかけましたよ。あ、もう着替えてますね。

立川うぃんです。正体は、ただの受付です。
お釣りがなくてすみませんでした。今日、受付だということコロっと忘れてまして。
しかも、最初のお客さまから3人続けて千円札をお出しでして。
13人中、10人が千円札でした。
ワンコイン寄席って、お客さんが500円玉握りしめて来るもんじゃないんですか。
こっそり自販機で飲み物買ったりして、ようやく500円玉ができました。開演前に配らせていただきました。
さて、最初の、最前列のお客さまにだけまだお釣りを渡せていませんでした。こちらです。
(ポチ袋ではく立派な封筒に入れて)お待たせしました。表に、「お釣りを用意するのを忘れてご迷惑おかけしました」と書いておきました。

自分のチョンボを最速でウケに変える。

お釣りのことばかり考えてまして、なにやるか決めてません。
名人と上手の違いを、棚を吊る小噺で説明。「なんか載せやしないかい」。

ねずみで、主人公が左甚五郎だと最初からバレてるタイプ。
若い頃の修行についてもちょっと語る。師匠に褒められることはありませんと。
自分の師匠(志らく)については驚くほど語らない人だ。たまたまかもしれないが。

二代目政五郎に断って奥州旅行へ。松島など見たかったらしい。
こんな展開は初めて聴く。今年すでに4度目の遭遇とはいえ(子年でもないのにね)、元々ねずみのサンプルそれほど持ってないのだけど。
甚五郎バレは、初音家左橋師から聴いた気がしていたが、振り返ったら「竹の水仙」だった。

前回もそうだったが、うぃんさんは前の演目に合わせていつも入れごと考えているらしい。
まんじゅう割ってどちら食うかとか、青菜のフレーズとか入れ込んでいた。

冒頭以外は、特に変わったところはなかった。
福ねずみを見たら、3日間止まらないといけないぐらい。最初の泊まり客は、ねずみ屋の隣の住人。
まあ、ねずみなんて盛り上げたくてやる演目ではない
時間を10分ほどオーバーしてきっちりサゲまで。

この日は3席、本編よりもマクラが目立った日だったかな。

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