浅草演芸ホール6 その1(入船亭扇白真打昇進披露)

今秋の新真打の披露目、初めて出動。
この日は遊京改メ扇白師。あと、吉原馬雀師の披露目も観なくては。
浅草は1年ぶりである。前回は夏のにゅうおいらんず。
落語協会の席だと、4年前の花いち師の披露目以来。
東京かわら版の割引はなく、4,000円。
それでも、デジタル商品券の出ている墨田区で買い物して多少取り返すのだ。
その前に、現金おろしてくるのを忘れた。
Oliveユーザーが手数料なしでおろせるATMは、はるか遠く、国際通りを田原町より南に進んだ三菱UFJだった。

5時間の長丁場、しっかり食事してから浅草演芸ホールへ向かう。
玄関では扇太、扇七、扇兆など入船亭の二ツ目さんがグッズ販売中。春風亭貫いちさんも。
仲入り時は古今亭・金原亭に替わっていた。

浅草、ちゃんと携帯電話の注意を入れていた。おやおや。
そしてもっとびっくりしたのが、演芸の切れ目に肉声で「私語はおやめください。他のお客様の迷惑になります」。
修羅の寄席、浅草もここに来て変わりつつあるみたい。
スマホは鳴ってなかった気がする。もっとも、京大出のちゃんとした人がこの日多かっただけかもしれないが。

ただ、メクリが変わるたび、お目当てだと拍手する人がいる。
これはマナーどうこうの前に意味がわからん。演者がまだ出てきてないのに拍手しても、「俺はこの人が好きだ」という、自己主張以外の何も出てこない。
多少追随してる人がいた。こうしておかしな作法が広まっていく。
5列目ぐらいでビニールをガサゴソしてたのもちょっとだけ気にはなった。気にしないようにはしている。

緞帳が上がると、後ろ幕は京都大学落語研究会与利。

寿限無 辰むめ
金明竹 美馬
高砂や 扇橋
岡大介
時そば こみち
割引寄席 扇治
八楽
人気きゅうぞう 久蔵
紙入れ 志ん輔
(仲入り)
にゃん子・金魚
つる やなぎ
極道のつる 喬太郎
小春
支度部屋外伝 歌武蔵
天狗裁き さん喬
(仲入り)
真打昇進披露口上 扇白・さん喬・扇遊・喬太郎・菊之丞
ロケット団
ふぐ鍋 菊之丞
狸の賽 扇遊
翁家社中
徂徠豆腐 遊京改メ扇白

 

前座は入船亭から、辰むめさん。めでたい席だから寿限無。
もともと口調のいいところ、またうまくなっていた。八っつぁんと隠居の会話が実に自然で気持ちいい。
「なんしかにょしか」なんて前座が入れると、そんなの八っつぁんにわかるわけねえじゃねえかなんて思ったりする。
辰むめさんでも多少は思うが、でもちゃんと会話のギャップによる笑いとして成り立ってる。

言い立てはちょっと特殊だった。まるで聴いたことない言い立てではないが、組み合わせがかなり珍しい。こう。

寿限無 寿限無 五却のすりきれ
海砂利水魚の 水行バツ 雲行バツ 風来バツ
食う寝るところに住むところ ヤブラコウジのヤブコウジ
パイポパイポ パイポのシューリンガン
グーリンダイのポンポコナーのポンポコピーの
長久命の 長助

水行末をスイギョウバツと読むもの、立川流以外では初めて。
「シューリンガンのグーリンダイ」が1行まるまるない。
ポンポコナーとポンポコピーが通常と逆。
ポンポコナーとポンポコピーは王家の子だが性別不明。

それほど聴く機会はない寿限無だが、たまに出るとこんな楽しみがあります。
名前全部もらったあとは、寿限無くんが喧嘩でコブこさえただけ。

二ツ目は笛吹きの、鈴々舎美馬さん。出囃子は「そばかす」。
また前座噺で、金明竹。松公は奉公初日という、芸協でたまに聴くスタイル。
猫を借りにきたお隣と松公が、「バーカバーカ」と言い合ってたのは面白い。
旦那が、「松公、お前のほうが(もともと)バカだ」だって。
上野から歩いてきて、しかも現金作りにウロウロしたのでうとうとしてしまった。
言い立てには入らない。まあ、そりゃそうだ。

入船亭扇橋師は髪の毛短くしていた。
二ツ目時代に聴いた、居合をやってる人どうしの結婚式。ネタの原典は彦いち師と思われる。
ちょっと中身が変わっていた。
ウェンディングケーキをスパッと斬る新婚夫婦。
切れる離れる真っ二つ、縁起でもない。
夫婦はなんら釈明せず、司会の扇橋師が「いま悪縁を切り裂きました」とうまいことフォローする。

当然、高砂や。これもめでたい噺だからでしょう。
大変手短。
隠居と八っつぁんの会話がいきなり、婚礼のご祝儀になっている。
婚礼に行くまでに、冗談言っちゃいけねえでサゲる。
こんな短い噺の主役は、実は豆腐屋の秀じいである。
「はいはい豆腐屋の秀じいがまいりましたよ」という、かみさん達に人気の爺さん。これは欠かせない。
八っつぁんの秀じいモノマネから、高砂やの稽古へ。

色物ひとり目はカンカラ三線、岡大介先生。
披露目だからなのか、持ち時間がないからなのか、政治風刺はやらない。
へえと思った。いろいろスタイルを用意しているらしいのは立派だ。

続きます。

(追記)
かつて聴いた兄弟子、辰乃助さんの寿限無も水行バツでした。ちゃんとブログに書いている。
「シューリンガンのグーリンダイ」の有無はもはやわかりません。

 
 

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