浅草演芸ホール6 その2(柳亭こみち「ウザ女の時そば」)

高座返しの前座さんは女性の、翁家日和さん。
養成所を出た、太神楽の人である。前座は1年間で、来年には高座デビューするとか。
同じ境遇の翁家丸華さんは鈴本で見かけている。
日和さん、背中をすぼめてトコトコ小走りで出てくる様子が妙にかわいい。
落語協会、来年にはまた女性前座がいなくなるのかと思いきや、扇辰師の弟子(ちゑり)が入ってつながった。

テレビカメラが入っていたが、浅草お茶の間寄席じゃないかも。誰も触れなかったから。
愛媛の局の取材かもしれないな。

続いて柳亭こみち師匠。高座が弾けている。
扇白師匠の披露目にかくも盛大にお集まりいただきありがとうございます。まあ、たまたま来たら披露目だったという方もおいででしょうが、これも縁でございます。
扇白さんは、エクボが可愛いんです。

今日はお客さまに噺を選んでいただこうと思います。
キモい女の噺と、ウザい女の噺です。どちらがいいですか。
キモい女の人?(拍手)。ウザい女の人?(拍手)。
ウザいほうがちょっと多かったかな。ではウザい女の噺をします。

時そばの、1人目の調子いい客がウザい女だというバージョン。
「そばの清子」というそば清は知ってるが、時そばもあるんだ。
今日のブログの副題は私が勝手につけたもので、公開されたネタ帳には「時そば」と書かれています。
女の客は、ペラペラマシンガントークをしながら屋台のそば屋に「ウザい?」とたびたび確認する。
本家時そばにないのが、風鈴を褒めるシーン。なるほど、親馬鹿ちゃんりんそば屋の風鈴は振るけども、回収したのは始めて見た。
女のウザい、止まらないお喋りは実に楽しい。
お喋りを脇で聞いて、翌日マネるのは男。
男の出くわすそば屋は、呼び込みしてるし、風鈴はないし、なんだか変。
そばはやたらまずいが、なんで流行ってるんだと聞くと、あっしのイキなお喋りに惹かれてですよ。ああ、今度はそば屋がウザいのか。
まずいそばを噛み締める際、顔全体の筋肉を動かすこみち師。ステキ。

登場人物の差し替えよりさらに感心したのが、非常に噺の展開が早いこと。
披露目で持ち時間が少ないから、ではないと思う。
確かに時そば、特に11月あたりからは頻繁に掛かる。落語協会では季節外れはあまりないけども、それでもかなり聴く。
本寸法でやってると、感心もする一方、クスグリまで把握しているのでちょっと焦れたりもする。
そこをぽんぽーんと突き進んでいくことで、新たな興奮が生まれる。
例えばちくわをあまりにも薄っぺらに切ってるくだり、「カンナで削りましたんで」とそば屋が答えている。ムダがない。

キモい女の噺はなんだろ?

入船亭扇治師は、高座で聴くのは初めてかもしれない。
喬太郎師の番組でお見かけした時は、「黒門町!」などの掛け声が売買されている噺を掛けていた。

私のご贔屓になるとお金が掛かりません。寄席の入場券売場で、「あれ、扇治さん今日いないの? じゃまたにするわ」と言ってください。
これで私の仕事が増えます。
ただこないだ間違えちゃった方がいて、末広亭でもって「扇治出てこい!」ってやっちゃいまして。

ひと昔前よく出たマクラを久々に聴いて、不思議な感覚。

本編は新作落語。演題は調べてもわからなかったが、公開されたネタ帳によると「割引寄席」。
寄席にやってきた学生さんと、入場券売り場のスタッフの会話。
学生さんは地方から来て、オチケン入って、初めて寄席にやってきた。
スタッフのお爺さん(呼ぶまで寝てた)は、もう入れ替えなしで仲入り過ぎてるしと割り引いてくれる。
さらに学生割引、大学名(噺家が多い)による割引など色々してくれるという。

入れ替えのない昼席で仲入り過ぎてるなら、とっとと入らないと終わっちゃうよと客が思うところがミソ。これがサゲにつながる。

父を喪ったばかりの林家八楽さん(師匠と呼んでもいいと思う)は坊主頭。
楽しい高座を務めあげる。
鋏試し(花嫁さん)の際は三味線で手を鳴らさせるが、注文の時は手は打たないで欲しいと。
急かされてる気がするので。

続いての林家久蔵師は、間違いなく初めて。
八楽さんの最後ちょっとうとうとして、気づくと新たな演者の顔が。
メガネ掛けて、柳家権之助師匠かと一瞬思っちゃった。
どんな人なんだろうと思ったら、ハイテンションの愉快な人。木久扇一門らしい。
ハイテンション高座も難しいですね。コケたら収拾つかないから。

88歳を迎える師匠・木久扇の話(モノマネ入り)だけ。しかし師匠のほうだって彦六伝で一世風靡したんだから、それでいいのかも。
最近寄席で漫談だけ聴く機会が少ないのは、マクラが進化したからかもしれない。
盛り上がったマクラに本編が付いてないのが、すなわち漫談という印象。
浅草だけは今でも漫談多いけど。

昔は地方で、師匠は本当にバカなの?実は賢いの?ってよく訊かれた。
前は適当に答えていたが、最近は人さまから敬われる歳なので答え方が難しい。

師匠は大好きなお酒を自分の意思でやめた。
やめる前の、酔ってご機嫌な師匠のエピソード。
「キュウちゃん、酒飲めない人は可哀想だね」
「そうですね。料理とお酒を組み合わせることもできませんし」
勢いで返したら師匠の機嫌が悪い。
「そうじゃないよ。飲めないってことはね、ずっとシラフだってことなんだよ!」

師匠とセットで、リューマチ患者の痛みが落語で和らげられないかの実験に担ぎ出された話でフィニッシュ。

続きます。

 
 

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