東博寄席 その4(三遊亭円楽「宗珉の滝」)

三遊亭ぽん太さんは洒落番頭。
落語協会で流行ってるなと思っていたら芸術協会でも流行りだした印象の噺。
二ツ目の前座噺みたいなイメージ。
円楽党では初めて聴くと思う。
洒落番頭が流行るにあたっては、なぞかけ人気が背景にあると推測している。

「お前さんは洒落番頭なんて呼ばれてるそうじゃないか」というセリフがなかったので、演題は「庭蟹」ではないかと想像。
でも公開ネタ帳には洒落番頭とあった。どちらも落語っぽくていい演題。

にわかにはできません。すずけってはできません以外に、オリジナルシャレがあった覚えが。
なんだっけ。
おかみさんは番頭のシャレを旦那から聞いて、それはシャレですよと教える役回り。
ぽん太さん上手くて面白い。ヒザとして実にいい仕事。

トリは主役の円楽師。
日々大物感が増してきている。名を継ぐというのは、改めてすごいことであるな。
今年四度目でわりと聴いているのだが、披露目に来るのは初めてである。
今日はこのあと末広亭とのこと。
明日はパパと文珍、同期の一之輔で、福岡で披露目って言ってた。

末広亭で一度聴いたマクラ。
寄席でね、おやすみになる方がいらっしゃいまして。それは全然構いません。
こちらがスベったのがバレなくて済みますし。
ただ、たまにイビキをかかれる方がいらっしゃるんです。
父親の負の遺産しのぶ亭でやってたときに、最前列でイビキかいてた方がいまして。
本編に入ってたので「ご隠居いますか」「フガ」「八っつぁんじゃないか、まあまあおあがり」「フガ」。
いちいちいびきが間に入るという。これは困りました。
携帯電話も困りますね。
まだマクラ喋ってるときだったらいいんですけど、本編に入ってますとね。
一度登場人物に「携帯鳴ってるよ」って喋らせてなんとか処理したことがあります。
楽屋に還ったら、「アニさん、携帯鳴ってましたよ」。私のでした。

あと、メモね。
マクラから本編に入るとき、堂々とメモされますとね、気になっちゃって。
「お前さん起きとくれ」ですぐ「芝浜」みたいなね。
前もあったんですよ。若いお客さんで、多分オチケンなんでしょう。最前列でずっとメモ取ってまして。気になって間違えちゃいました。
間違えたときに、この人ニヤッて笑ってました。
お前のせいだよ。

本編は、今年二度目の「宗珉の滝」。
父に次いで人情噺を被せてきた。
五代目、六代目は浜野矩随なのだが、当代はこちらのほうが好きなのだろうか。
「宗珉の滝」は、「宋珉の滝」とも書くことをようやく発見。円楽師は宗の字のようだ。

3か月前に聴いたばかりなのもあり、ちょっとうつらうつらしてしまった。
主人公・宗三郎が酒を飲んで彫り物をし、紀州公に拒否されるくだりで。
寝る客のマクラのが出た後なのに。
なので感想書くのはおこがましいが、ひとついたく感心したことが。
主人公、宗三郎がついに酒を断ち、滝壺に潜り込んで三七21日の水垢離。
宿屋の主人ともども命を賭して、紀州の殿さまに三度目の鍔の提出。
このときに、大きな講堂が水を打ったように静まり返っていた。この静寂が、実にいい感じ。

円楽師、二人の命が掛かっている状況を描くのに、意外と切羽詰まっていない。なんだか余裕がある。
よく考えれば、命が掛かっているから鍔が収まるわけではない。それぐらいの気を込めたということのほうが大事。

鍔を紙の上に載せると、飛沫が飛びじわっと紙が濡れた。
そんなバカなという状況を、円楽師はマジに描きすぎもせず、なんちゃってとも描かない。
実にほどがよろしい。
なかなか難しいと思う。日頃の演者のキャラもものをいうし。
七代目円楽師、「カッコはつけてるがキザじゃない」というところかな。
なんだか、お父さんに似てきたんじゃなかろうか。そして若旦那自身、その変化をまあいいやと受け入れているのではないだろうか。
面白いことである。

博物館の落語会も面白いものでした。

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