11月中席、林家彦いち師の芝居がある。
思いっきり新作の番組。落語協会の叡智を結集したような。
そして新二ツ目の披露目。
500円割引券(でかい)も出ているし、池袋の初日へ。
池袋は4月以来。
入替えはないので、ちょっとだけ夜に居続ける。
平日昼間なのに盛況。夜は夜で白酒師なので盛況。
居続ける人の多かったこと。
たいへん結構な番組でした。
| 子ほめ | うどん |
| 疝気の虫 | やま彦 |
| 野村 | 枝平 |
| 八楽 | |
| 出目金 | 志ん五 |
| 姫君羊羹 | こみち |
| 夢葉 | |
| インタビュー | 百栄 |
| 背なで老いてる唐獅子牡丹 | はん治 |
| ニックス | |
| 山奥寿司 | 白鳥 |
| (仲入り) | |
| 寝かしつけ | きく麿 |
| ほっとけない娘 | 小ゑん |
| 橘之助 | |
| 身投げ自演 | 彦いち |
| (以下夜席) | |
| 黄金の大黒 | ぼんぼり |
| 真田小僧 | こはく |
| かぼちゃ屋 | わか馬 |
| にゃん子・金魚 | |
| 鹿政談 | 龍玉 |
| 鰻屋 | 馬石 |
電車が遅れ前座には間に合わない。
初めて遭遇する林家うどんさんが子ほめをやっている。番頭さんに今だけ40になってくれのくだり。
堂々としている。自信に満ちた喋り。
驚いた。
二ツ目に昇進したばかりの兄弟子たたみに次いで、二番弟子も立派なもの。ちなみに体格も。
こんな感じのお笑い芸人っているなと思った。我が家杉山とか、ラジバンダリとかちょっと古めのしか思いつかないけど。
これはもう、三平師に師匠としてのメソッドがあるとしか考えられない。
そんなはずない!と思うのは自由だが、私は見た現実に忠実な人間である。
「初七日か」「お七夜っていうんだ」
のくだりで、初七日とお七夜をあべこべにしてしまう。客に悪ウケ。
しかし全然動じない。地のセリフでもって、「初七日とお七夜を逆にしてしまいまして」ときちんと(図々しく)説明する。
あまりにも堂々としていて、仕込んだのかと思ったぐらい。そんなことする人はいるまい。
後で百栄師が間違いを引用してた。
ジャワスマトラが入っていた。
面白いことに、通常描写されない赤ん坊の母親がいる。
しかし八っつぁんが「このお子さんはあなたのお子さんですか」と改まって尋ねると、母親はどこかに行ってしまう。
「どっちか絞め殺せ」はない。そんなに乱暴な八っつぁんではない。
うどんさんはこのあと高座返し。
二ツ目は林家やま彦さん。
私は妹弟子のきよ彦さんのファン。やま彦・きよ彦の交互は非常に多いのだが、行きたい日がやま彦だったらその席自体行くのやめたりしてきた。
別に、一生認めないなんて気持ちはない。出世してくれて全然構わない。
ただ、なんだか笑いのツボが変だよねと常日頃思っていて。
とはいえきよ彦さんもよく聴くので、最近噺が被りだしてきた。今日はやま彦さんでもいいかと思って。
来てよかった。
元々好きな人には平常通りに映ったのだろうが、私には一皮剥けて見えた。
二ツ目の披露目で、このあと桂枝平さんが出ますので盛大にお祝いしてください。
これはこの出番の義務である。
私の入門時も思い出します。
いろいろ落語聴いてて、彦いちに出会いこれだと思ったんですね。
鈴本に入門志願に行きました。
東日本大震災のあとで、この日はくまモンとのコラボというものをやっていました。
受付に、入門志願に来ましたと声を掛けたら、そのまま通りなさいと言ってもらえました。
楽屋を訪ねたら、いきなり彦いちがいました。
私緊張しちゃって言葉が出ません。彦いちが言いました。
「くまモンの中の人!」
違います。
弟子になりたいと言ったら、「出身どこ?」
大田区の池上です。「東京の顔じゃない!ご両親は?」
大田区で公務員をしてます。「公務員の出の顔じゃない!ご両親はどこにいるの?」
区役所の4階と7階です。「明日から見習いで来なさい」
まあ、師匠もこれだけ私に苦労させられるとは思わなかったでしょうが。
落語には擬人化というものがありますと振って、疝気の虫。
新作の芝居なのに古典落語か。
でも、この日顔付けされてる百栄師の得意ネタでもある。世界が新作っぽい。
いきなり出てくる登場人物は、医者とは明らかにされない。
疝気のことばかり考えていて、白昼夢を見たらしい。虫を捕まえて話をする。
チントトトンの、パッパ。
じゃなかった。
チントトトンのほうはちょっと違うがそんな感じではある。後半が、「ギュギュッとな」。
そんなの聴いたことないから、自分でアレンジしたものか。
疝気の虫が、おそばを食べると喉が渇くので、筋肉を絞って汁を飲むんだそうだ。
医者に責められ、弱点を自白する疝気の虫。
とうがらしが来たらどうするんだ。
「ひんはまに逃げます」
「はっきり言え」
「き◯◯まです」
後で志ん五師が、「チ◯◯コと叫んだらウケませんでした」と楽屋の話をバラしていたが、ワードが違いますな。
チントトトンとギュギュッとな、の所作を振り切ってやる。
振り切ってるくせに、「お前、トシはいくつだ。30にもなって恥ずかしくないのか」と自己ツッコミ入れてた。
医者も奥さんもなんだかトボけていて、切迫感がないのもいい。
いいじゃないか。
今まで聴いた高座の中で一番よかった。古典もいいんじゃないか。
別荘を探して見つからないあとに、オリジナルのサゲがついてた。
これは正直ないほうがと思ったけど。
でもよかった。
続きます。
書きたい内容盛りだくさんで、もしかして「その8」ぐらいまでいくかもしれません。
