(タイトルを変更しました。ネタ帳が公開されており、枝平さんの新作落語の現在のタイトルが明らかになったためです。ただし以下本文はそのままで)
やま彦さんのマクラの続き、一晩経って思い出した。
最中の話。せっかく思い出したが、再現しても楽しくならないので省略します。
まあ、こういうのを語れるのが味なのだろう。
続いて二ツ目昇進の桂枝平さん。余裕たっぷりで登場。
この人を前座として4回聴いてるはず。
最初の出会いが最悪だった。なんだこのオチケン落語はと。ちなみに鈴本で、次に出てきた二ツ目がやま彦さんで。
ところがその後、次々と枝平さんの見事な(そしてあざとい)高座に遭遇してきた。
大物の要素を強く感じる。前座はおとなしくしているべき落語界では異色である。
面白すぎる前座は、得てして外の会には呼ばれないという。真打も、自分を食いそうな前座は呼ばないのだ。
しかし枝平さんは喬太郎師のようなビッグが連れ出していた。
いずれにせよ、ただ者ではない。
出世はするだろう。ただトップを張るのか、独自の地位を占めるのか、どちらになるかまではまだわからないけども。
前座6年8か月やりましたよ。異例の長さです。
この世界、下が入らないと昇進できません。なのであちらこちらの大学の落語研究会に、入門しないかと声掛けまくっていました。
なんの関係もない中央大学でもスカウトしました。
なんでも私、あちらでアムウェイさんって呼ばれてたそうです。
前座期間には、見習いも含まれている。前座としては4年半。まあこれでも長いが、コロナを挟んだ前座は皆こうだ。
まだ前座不足は続いているが、協会としてもいつまでも滞留させておくことはできない。
本編は新作落語。
この人が新作を掛けるという情報はまったく知らなかった。この新作芝居に顔づけされてるからと言って、それだけの事実ではなおわからない。
ただ、前座時代のこの人の高座から、間違いなく新作をやる匂いは漂っていた。
なので驚かない。
豆腐屋に「お父さん、豆腐屋を継がせてくれ」とやってくる男。
「うちの店は俺の代で潰す。息子が出ていってからな」
「やっぱり継ぎたいんだ」
「お前誰だよ」
「野村です」
「名前の前に、お前息子じゃないし、どこの誰だ」
演題はもちろん知らないので調べた。「野村」というそうで。
自作ではなく、どくさいスイッチ企画作。先月まで前座だったのに、各方面に顔が広い。
芸協ともツーカーみたいだし。
で、非常に面白かった。
ストーリーは凝りすぎずに、適切な最小限の仕掛けを施してある。実にうまい作りの落語。
よくできた台本でありながら、面白さの主たる部分は、演者が担っている。
上質のコントを観ているような気がした。
ツッコミのタイミングと、そのほどのよさがそう感じさせる。
わけのわからない会話を完全に閉じきるのではなく、ちゃんと一部だけ開けておいて、その狭い範囲で会話を成り立たせる。
落語だけでなく、演芸全般に通じる上手さ。バイきんぐみたいな。
いい新作は、構造が必ずWin-Winになっている、
あまり好きな言葉じゃないが、でも間違いなくそうだ。
豆腐屋も、ミュージシャン志望の息子も、そのファンの野村もすべてハッピーになる。
押しかけてきた野村のおかげで店は大盛況。
ひっそり売ってた豆腐アイスを店頭に出し、あっという間にインスタで流行らせて。
戸惑い喜ぶ親父。
野村は店内に変な仕掛けをしている。親父が商売ものの豆腐を取ろうとすると、出囃子が鳴る。本当に鳴る(ハメもの)。
なんだこれは。
出囃子です。
誰のだ。
豆腐だけに、イッチョウ師匠のです。
演題「野村」だけ、実用上の問題がある気がする。
これではなんの噺かわからない。
事実、枝平さんのブログによると、鈴本上席で用意していたのに、トリの白鳥師がネタ出し「豆腐屋ジョニー」だったため断念したそうだし。
逆に、野村が出ているのにトリで徂徠豆腐や甲府いが出ると具合悪いかも。
この日も夜席で鹿政談は出てしまったし。
考えてみた。
「豆腐と野村と音楽と」
でどうでしょう。
落語が3席続いて、色物は林家八楽さん。
色物の次にまた続けて色物です。おかしな番組で恐れ入ります。
枝平さんは楽屋でも本当に楽しい人です。
鋏試しの花嫁のあとのリクエストは、「名誉毀損」「酉の市」。
池袋のお客さんは本当にもう、まともなお題を出しません。
これは師匠の二楽が受けてたんですが、今後は私が引き継ぐことになりそうです。
立花孝志逮捕を受けての「名誉毀損」は、娘のアイスを親父が食べてしまった冤罪を奥さんに叱られているという絵。
リクエスト2本だけだったので慌てず騒がずパンダを切っていく。