瀧川鯉昇独演会@梶原いろは亭 その3(「千早ふるモンゴル編」)夢ひろも

最後に鯉昇師、「私たちが終わったと言ったら終わったんです」。
この日のスタート時の「期待するな」と同列でしょうか。
そういえば「熱演しない」というのもあるのだが、この日は大変な熱演。
終わったと言ったら終わった、は千早ふる(モンゴル編)。
これは、昨年拝鈍亭で聴いた。

ちょっと変わっていた。
千早ふるがモンゴル編になる前のバージョンにあった、「裸足でやってきた金さんに床の掃除をさせ、掃除が済んだから帰そうとする」くだりが復活していた。
それから、南千住のロシアンバー「プーチン」にいるのは、チハヤニコワとカミヨスカヤではなく、若干名前が変わっていた。なんだっけ。
もちろん基本は千早と神代なのだけど。

冒頭は、多少ユニークな千早ふる。かなりユニークだが、こういうのもあるだろうというレベル。
金さんは、便所の格子を蹴破って、裸足で逃げて隠居のうちにやってくる。
なので遠慮して立ち話で済ませようとしたのだが、隠居が勧めるから上がってきて、座敷を泥まみれにしている。
歌のわけを聴く金さんを尻目に、隠居は余裕綽々。
竜田川に突破口を見出す。
この竜田川はなんだと思う。
わかりませんよ。
ヒントをやろう。ナイル川、ガンジス川、チグリス・ユーフラテス川。
あ、川の名前ですか。
残念。これは相撲取りの名だ。しかもモンゴル人力士。

復讐の舞台がモンゴル大草原の豆腐屋に変わる以外は基本同じなのだが、とにかくふざけている。
しかし、よく考えたらこの噺は隠居のウソを楽しむもの。実は激しい改変ではない気もする。
女乞食の千早は大草原をラクダに乗ってやってきて、竜田川に突き飛ばされヒマラヤを超えてネパールまで飛んでいく。

隠居はまるっきりの知ったかぶりではなくて、五七五七七、ミソヒトモジをちゃんと金さんにレクチャーしてやっている。
そして、頼まれもしないのに、これを使った千早のサブストーリーを1個作ってしまうのだからサービス精神旺盛だ。そうかな。

千早がネパールに飛んでいってからの、本家千早ふるにないストーリー、二度目なのでようやく覚えられた。

ここで仲入り休憩。1時間10分ぐらいだったか。

幕が開いて、楽しみにしている三笑亭夢ひろさん。
最近の前座はみな上手いが、この人は別格と思う。古典落語を自分で語り直せる稀有な人。
前座のくせにアレンジが強い、というのではない。実にさりげなく裏切ってくる。

えー、前座がこんな出番に上がりまして。いきなりクイツキとは予想外でした。
一席お付き合い願います。
落語のほうの登場人物は熊さんに八っつぁんにご隠居さん。この八っつぁんだか熊さんだかが隠居のところにくると話の幕開けです。

仕事がハンチクになって遊びにくる八っつぁん。横町のデコボコのところでも行ってバカっ話でもしようと。
粗茶ではなく、まずい茶。隠居さんのとこのまずい茶、旨いね。
そして羊羹の催促。
書画骨董から、小町の絵へ。
おう、道灌でなく小町だ。

深草少将は百夜お通いなさいと言われて99日目にあい果てなすった。
うちの親父も便所であい果てなすった。
コイに上下の隔てはねえ。

から今度は椎茸のあおり食らった侍とライスカレーの絵へ。
時間がたっぷりあるようで、ちゃんと道灌に入る。

夢ひろさんの語りは最初から最後まで楽しい。
人間関係を変に対立させないで、ギリギリのところを攻めているが、だからといって「こいつ不愉快だな」と思われることもない。
古典落語の八っつぁんを、見事に描き切っている。
言葉をキレがいいからと言って、スラスラ流れすぎて意味が入ってこないこともない。

鷹野、野駆けのくだりはない。
たっぷりした小町入りの道灌だが、編集はしてある。

「イエヤス」のクスグリを、普通とは違う形で言い放つ。
「安く買ったろうね。名前がイエヤスだから」だったかな。正確じゃないかもしれないが。

「男の道灌、女の道灌、犬の道灌」あたりは八っつぁん、家に帰ってからのセリフ。
そばの割り前のくだりが、非常に短かった。
うろ覚えだが、「ああそんなら、こないだのそばの割り前」ぐらいであった。
こないだ、ここがやたら入念な前座さんがいた。

やはり期待の前座です。

続きます。

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