神田連雀亭ワンコイン寄席73(下・田辺いちか「豆腐屋ジョニー」)

続いて立川幸朝さん。若いのにいつも頭をピシッと決めていて偉いなと思う。
たぶん、噺家はこうだって美学が強いんじゃないかと。
立川流から芸協に移った談幸一門の最高傑作と思う。

すごい入りですね。先ほど喜太郎アニさんに声が掛かりまして。
始まる前までは、ぼくらはオマケだみたいな顔してたんですが、そっち側かよと。

私は幸朝さんも目当てです。
マクラは前回と同じく(書かなかったけど)、師匠がシロといえばカラスも白い。
うちの師匠談幸は72なんです。今そんなこと言ったら病院に連れていきます。

寄席というところに出るのは落語だけではありません。いろんな芸人が交代で出ます。
中に幇間、たいこ持ちという人がいまして。

たいこ腹か。この出番で鰻の幇間のわけはないし。
前座時代特になんとも思っていなかったこの人を最初に評価したのが、池袋で聴いたこの演目だった。
まあ私より先に、笑点特大号が見つけてますがね。

幇間という人は寄席には出ませんが、とそのときと同じことを言う。
その池袋の昼席には松廼家八好師匠が出てたんだけど。

噺が被ったが、しかしまるで言い立てのような一八のセリフは本当に素晴らしいものだった。
セリフだけで高揚してくるのは本当にすごい。
柳亭小痴楽師が手本なのではなかろうか。
小痴楽師のように面白くなれればもう言うことないが。

セリフ回しがいいから、若旦那がビリヤードでラシャを剥がしてしまう回想、ボウリングで隅の溝を投げる回想、なんて軽いクスグリがウケるのだった。
マクラウケなくても、古典落語の本編でウケるから強い。

相変わらず猫のタマ殺してたけどな。
いちか先生目当てで男の客が多いので、引かないけど。

このたいこ腹は、若旦那と会うまでなにをされるのか知らないタイプ。そして針を3本刺す。

一席終えた幸朝さん、高座返しをして、釈台よっこいしょと出して、それからメクリ返して、変な順番。
トリは田辺いちか先生。
自分自身の真打昇進は、みんなわかってるので語らない。

大勢のお越しで。
私38人の定員が埋まったら、今日は好きな話をさせてもらおうと勝手に決めてました。
39人です(拍手)。なのでその話をします。
三遊亭白鳥というアニさんがいまして、めちゃくちゃな噺をたくさん作ってらっしゃって、我々にもさせてくださるんですけども。
私、恋愛ものの話が苦手なんですね。照れるんです。
でも、人間どうしじゃなければ語れるということに気づきました。

ああ、これは豆腐屋ジョニー。
舞台はつくばエクスプレス浅草駅のB出口を出たところ、三平ストア。

いろんな人のやる新作落語だが、見事な講釈に変貌していて驚いた。場面転換の多さも講談に向いている。
落語から講談になって、噺の本質がむしろ浮かび上がってる気すらする。
というか、白鳥師自体結構、講釈のリズムでこの噺を語っているなと気づいたりなんかして。
冒頭、チーズ一家のマーガレットが「ジョニー!」と叫ぶだけでもう爆笑。

三平ストアの売り場を争う豆腐一家とチーズ一家はもはや一触即発。
若頭ジョニーと、首領ドン・カマンベールの娘マーガレットは禁断の恋。
豆腐屋ジョニーと、マーガレット印のクリームチーズ。
豆腐一家が味方につけたのは、公家のマロニー。三平ストアのおすすめメニューを、マロニー入りの湯豆腐にして、あのチーズ一家を追い出そう。
もちろん、マロニーには相応の棚を用意する。
しかしおすすめメニューはなんと、マロニーを使ったチーズグラタン。あの野郎、裏切りやがった!
抗争勃発!
マーガレットは深窓のお嬢さんなんかではなく、実は伝説の「血塗られたメアリー」であった。

マーガレットのくだり、本家にあったっけ? 記憶にはないが、たまらなく面白い。
ちなみに本家より圧倒的に短いのが「豆腐屋ジョニー」の説明。短いが、そんな商品らしいなと客に伝わってればそれでいい。

極めてふざけた話だが、でもちゃんと禁断の恋をしっかり描いている。だから名作だし、絵本にもなるのだ。
「ドン・カマンベールがワインをたしなみながら自分の顔をむしりとって食っている」「ジョニーがマーガレットを火から守って焼き豆腐になる」なんてクスグリだけが楽しい話ではない。
第三者の策謀によって始まる抗争で、なんとかマーガレットを守らなきゃというジョニーの姿が、ふざけた話からちゃんと立ちのぼってくる。
ドンパチの結果、豆腐入りチーズフォンデュという、お年寄りにも優しいメニューができあがる。めでたしめでたし。

これは大収穫だった。
よくできたカバー曲が本家を超えたみたいな。
「イージュー★ライダー」が奥田民生もいいけど、土岐麻子のカバーがさらにいいみたいな。

ただ、コンパクトなので12時26分に終わってしまった。
高座そのものは大満足だったので、不満ではなく、アレっという。

3席満足の神田連雀亭。
新作台本まつりやってる池袋まで行かなくても楽しい新作が聴けた日。

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