壇上の演者たちが「ようかんさーん」と前座さんを呼ぶ。
出囃子もメクリもなく、前座の神田ようかんさんが上がる。
なにやらいろいろ言われておりましたが神田春陽の弟子のようかんです。
まだまだ前座の期間は長いです。
前座の講談なんてものはめったに聴かないけど。
優秀な前座だと内輪褒めされるだけあって、見事な腕。
そして客席を堂々見回す。客と目が合っても全然動じない。
噺家がよく振る、士農工商のマクラ。お侍は威張っていて、農工商は小さくなっていた。
講談師なんかは歩く場所がないのでドブを泳ぐ。
戸塚の宿でもって、侍が憤っている。無礼打ちにしてくれる。
ちょっと往来でぶつかっただけなのにご無体な。
江戸の町人は謝っていたが、虚無僧が出てきて耳打ちすると、開き直って啖呵を切る。
侍の相手をしてやると威勢がいい。
しかしギャラリーを下がらせている間に町人逃げてしまう。
ギャラリーは喝采。
おのれ虚無僧め、侍が後ろを向く虚無僧に切りつけるが、武器は尺八だけでもってこの虚無僧強いのなんの。
気分爽快。
笹野名槍伝より焼餅坂の一席。
落語の前座さんと違い、元気な(なんちゅう野暮な表現だ)一席。
講談の二ツ目以上と方法論は同じに見える。まだ若干こなれていないだけで。
今後の出世を見ていきたい人だと思った。
講談協会は、講談の定席に行かないとなかなか聴けないが。
続いていったん幕が閉まり、浪曲の準備。
ちゃんと立ち高座。
この両国亭で色物さんが出るときのように台を重ね、手前に浪曲の台を出す。なかなか大変。
曲師は奥さんだそうで。
めでたい席ですので新作浪曲の出世物語を。
ということで、三橋美智也の物語。
村田英雄、三波春夫は浪曲の出ですが、三橋美智也は民謡です。
函館の北、北斗市で生まれた美智也。お母さんは江差追分で有名な人。
幼少の頃、セメント工場の事故で父が亡くなってしまう。
母ひとり子ひとり、牧場に住み込む。そして美智也は母に民謡を習う。厳しい稽古。
美智也は夜中海に向かい、波の音に負けない声を出している。陰から見守る母。
北海道の民謡大会で優勝した美智也は、旅の一座に加わりあちこちを回るが、素質のあるお前は東京に行けと言われる。
横浜の民謡サウナでボイラーマンの職を見つけ、夜は民謡を披露。そうこうするうちにラジオにも呼ばれる。
ヒット曲を連発するが、歌謡曲で売れていいのか悩む。
一太郎師匠は、節でもってここは拍手、という箇所は扇子を上げて合図するのでわかりやすい。
40分ぐらいの長講だった。
仲入り後は講談で、宝井琴凌先生。
一太郎アニさんは、ああやって披露目なのでめでたい話を用意しました。
私も用意しておくべきでした。
ただ、この会では連続物をやってるんですね。梶原いろは亭の最後の会から、東海白浪伝を始めまして。
ご存じ日本駄右衛門でおなじみの白浪五人男ですね。弁天小僧菊之助、南郷力丸、忠信利平、赤星十三郎。
南郷力丸と弁天小僧のエピソード。ふたりは兄弟であり、兄の力丸が暴れん坊で手が付けられないので、跡継ぎにしようと拾ってきた捨て子である。
江ノ島・岩本院で手癖が悪く、海に投げ込まれた弁天小僧を、都合よく兄が助け出すところまで。
この先生の講談は初めて聴くのだが、静かで驚いた。
講談で、大声出してパンパン釈台叩いてやるもんじゃないの。イメージでは。
だが本当に静かだ。静かに人を引き込む。
こんな講談、特に男性講談師のものは初めて。
行きがけの駄賃に岩本院からいろいろ盗み出し、東海道を西に向かう兄弟。
途中、あきんどを殺して90両近くの大金をせしめた二人組を知る。
旅慣れないフリでまんまと二人組に合流する。
二人組は兄弟を真ん中に寝かせ、両側を挟み込む。
狸寝入りの力丸の懐を探り、ひっぱたかれる。
もうひとりは女にしか見えない弁天小僧の懐を猥褻目的で探り、やっぱりひっぱたかれる。
そうこうしているうちに本当に二人組は寝てしまい、兄弟はそれ、と旅館の寝ずの番に報告し、二人組の持っていた退勤を合法的に(詐欺だけど)せしめることに成功する。
二人組は打ち首になるんでしょうな。
その後大坂でもって、色仕掛けの美人局で大店の番頭さんから200両をせしめるふたり。
おのれ武家の娘に手を出すとはけしからん。町奉行所へ、と力丸に脅されればどうにもならない。
一大ピカレスクロードムービー。
楽しいな。続きが聴きたくなった。
続きます。