七人の侍4 その2(瀧川鯉朝「品川心中・上」)

演者が袖でなにやら喋っている。長くやってきますとかなんとか。
出演者5人なので、長尺ということらしい。この時点では5人なのは知らなかったけど。

仲入りは、瀧川鯉朝師。
元気いっぱいのご挨拶。
浅草で今、禁演落語の特集してます。毎年恒例です。
今年は遊三師匠が体調崩されて、日替わり主任です。昨日は私がトリを務めさせていただきました。
上と下があるんですけど、下のほうはあまり出ない噺です。それを35分もらって通しでやることにしまして。
3分ぐらい時間こぼしてしまいました。
寄席には、時間こぼした奴は逆さ磔にされて、朝まで誰も助けに来ないという刑があるんです。でも楽屋も忙しかったみたいなので、知らんぷりして帰ってきました。
その噺を、今日します。昨日いらした方には申しわけありません。今日来た自分が悪いと思ってあきらめてください。

ああ、宮戸川かと思う。
先日の「ひろげる鯉朝」では、たまに下をやるって言うことだったが、上だけ聴いた。
だが宮戸川ではなくて、品川心中だった。
「上」だけでも、鯉朝古典の粋を集めた傑作だったと思います。そして「下」も素晴らしい。

登場人物の「絞り出す絶叫」(変だが、そうなのだ)が、いかにも鯉朝師っぽい。
新作落語でよく聴く絶叫だが、古典の世界でも違和感なし。
マンガなんですよね。ただし、デフォルメされた絵でシリアスマンガを描いた感じ。

冒頭が、まったく聴いたことのないスタイル。
品川・城木屋(居酒屋みたいな名前、とのこと)のお染が、いかに死なねばならなくなったかを演者の口から語る。
ダイジェストになってしまうと味気ないので、地噺スタイルで。
地噺である証拠に、脱線ギャグを入れる。

お染は、後輩女郎になめられることが増えたのだ。
お客に反物いただいた。おねえさん、着てみます? のような。
私(鯉朝)は、後輩の突き上げには強いです。

「ああー宮治師匠、どうぞこちらへ。ああー、伯山先生どうぞ」

ただし、売れてる人間の中では、鯉八には強いです。もの取らせたりできます。
兄弟子というのは便利ですね。
そうこうするうちに、貸本屋の金蔵がお染により選ばれる。
金蔵は、嫌われ者だから死んじゃってもいいらしい。ちょっと親分のところで大事にされてるのと整合性がつかないが。
あと、金蔵はムダ飯食らいなんだって。こんな設定初めて聴いたが、あとでしっかり効果的に使う。

金蔵呼び出すあたりからは、地噺スタイルは終了。
金蔵、呼びつけておいたお染がなかなか来ないので狸寝入り。五人廻しみたい。
そのすきに、お染は手紙を書く。金蔵が起きてきて覗いている。

なるほど、お染の口から「死んでくれ」とは言わせないのだ。
書き上げた手紙を読んで、「俺も死ぬよ」と金蔵。
よっしゃとガッツポーズのお染。「ラッキー」の「ラ」まで言いかけてた。

翌朝、親分のところにいとま乞いの金蔵。
おかみさんがたしなめる。お前、品川の女にハマってるんだって? あたしもあっちの出だから偉そうなことは言えないけど、品川の女はタチ悪いよ。
あ、こんな設定初めて。
最近は伏せられてるけど、女郎上がりのおかみさんの設定って、本当はかなりあるはずだ。
「牛ほめ」の「佐兵衛のかかあは引きずりだ」の引きずりとは、「だらしない」ではなくて「女郎上がり」の意味だと思う。

ここで短刀忘れてくるのは描写されない。
当日、どうせ死んじゃうんだからとさんざっぱら飲み食いして、いい気持ちで寝てる金蔵。
お染が廻しから帰ってきて、情けない寝顔を見て嘆息している。こんなのと死ぬの?
金蔵が短刀忘れたのに気づく。お染は剃刀用意しているが、それじゃ嫌だというので、お染は強引に金蔵を引きずっていく。
海に続く木戸は、体当たりして突破。
曇っていて、長い桟橋はまっくらけ。

お染は、男がなかなか飛び込まないので「金ちゃん」と声を掛け、油断したところをドーン。
そこに若い衆が駆け付ける。お大尽が来ましたよ。
飛び込んだのはバカ金? あいつ祝儀も出したことのねえ奴だ。いなくなってもいいよ。

金蔵のおでこには、尻のおできの膏薬が折りたたまれて、三角になって張り付く。
来てるのは白装束。
すごいギャグ。

長い噺なので、犬の町内送りはなし。
ガラッポンやってる親分宅、大混乱。
久々に用心棒の先生を見た(腰が抜けた)。先生の名前は田ノ下という。

この先が、珍しい「品川心中・下」である。
私は現場で聴いたのは、三遊亭遊馬師からだけ。
これに比べると、「大工調べ」の下や、「替り目」の下なんて、もうしょっちゅう出てるもんだと言っていい。
宮戸川は出ないけど。

遊馬師のサゲは、圓生がやっていたのとは違う、ご自分で作った型みたい。
そして鯉朝師のものも、また違う。いかにも新作の師匠っぽい結末なのだが、古典の世界にあってもおかしくはない。

「下」に続きます。

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