池袋演芸場41 その4(雷門小助六「酒屋蔵」)

昼トリではや「その4」である。こりゃ、終わらないな。

小助六師、長く楽しいマクラで、鳴り物について語る。
これ全部、噺の準備。
最後に、「柳陰」を振る。青菜に出てくる、焼酎とみりんをブレンドしたものだ。

とある酒屋の酒蔵で、夜な夜な幽霊たちが騒いでいる。そんなわけで夜中はばかりにもいけない小僧の定吉。
番頭さんが言うには、あれは幽霊じゃないから心配するな。みんな酒の精なんだよ。
酒の精が毎夜出てきて遊んでるんだ。

番頭さんのガイドで、酒の精たちの宴会を観にいくことにする。

え、なにこの噺? 質屋蔵っぽいけど、全然違う。
知らない噺でも、速記本で読んだことがあるとか、たしかこんな演題の噺があったなとそれだけ浮かんでくるとか、なんらかの接点は探ればあるものだ。
だが、本当に知らない。さすが小助六師。
なにせこの人からは「虱茶屋」「掛川の宿」「猫芝居」など聴いてる。
「磯の鮑」や「写真の仇討」「ひねりや」もこの人が復刻にかかわっているのだったか。
いっぽうで「初天神」「禁酒番屋」「へっつい幽霊」など当たり前の演目も魅力的な点、ただの珍品派ではない。

夜席が終わった後調べたら、「酒屋倉の怪異」という噺が見つかった。
なんでも、芸協の会長だった先代小文治が手掛けたらしい。
お囃子さんが当代小文治師のおかみさんというのも、なにか関連しているのだろうか?
ただ、Xでは小助六師ご本人が「酒屋蔵」と書いていた。演題まで質屋蔵に似ているのだった。

いきなりバタバタが鳴る。
番頭さん、びっくりしました。なんですかこれ。
前のお客さんがふたり驚いてたな。

やがてハメモノが入り、長唄が聴こえてくる。
番頭さん、これは?
これは長唄の「つるかめ」だ。
番頭が、音のなる樽から、酒を飲んでみる。
番頭さん、飲んじゃうんですか?
役得だ。ああ、この酒は「鶴亀」だ。

番頭さん、定吉に語る。この噺はな、こんな感じで進んでいくから。
番頭さん、誰に話してるんですか?
いや、ちゃんと説明しておかなくて、楽しみ方がわからないといけないから。

別の樽からは、踊りが見えてくる。
立ち上がり、三味線に乗せて「奴さん」を踊る小助六師。
番頭さんが酒を味わうと、これまさに「奴さん」。
噺の最中に踊るとくたぶれるなと番頭さん。

花魁道中も始まる。
誰だっけ? お酒の名前と同じ花魁が二人。ひとりは浦里だった。

三味線で「かっぱっぱ、るんぱっぱ」も聴こえてくる。
これは一定の年齢の人でないと知らないが、黄桜だな。今日はだいたいわかってもらえてよかった。

さらに、「オーシャンゼリゼ」まで聴こえてくる。
ブルゴーニュのワインだ。
うちの酒蔵、ワインも置いてるんですか。
まあ、ちょっと声が出てないようだがな。

これを聴いて、声を張り上げるお囃子さん。

ついには、「ウイスキーがお好きでしょ」まで流れてくる。

最後に、仕込んでおいた柳陰で落とす。
たまらない一席でした。
効果的なハメモノの噺、上方を中心に多々ある。だが酒屋蔵はもう、ハメモノが噺の要素になっているわけで、言ったらミュージカルじゃないか。

夜席が始まるまで、初日の記事をせっせと書くのだった。
もうちょっとというところで幕が開き、やむなく中断。
ちゃんとスマホの電源は落とします。開演中触ったりはしない。

夜席の前座の出囃子は「前座の上がり」でないもの。芸協でたまに聴く。
メクリは「愛昇」とある。
ひょっとして、昇也師の弟子だったっけ? 師匠の名は名乗らなかったが、正解。
昇也の「昇」の字は師匠からもらっているものだから、普通には「也」の字を弟子に使うところ。でも、この字からは名前を作りづらいのだろう。
そもそも昇也師の「昇」の字だって、大師匠柳昇から来ているわけだ。
よく考えたら、途中に襲名もないのに4代続けて同じ字が名前に入ってる例って珍しいのでは?
こんな検証、いかにもパクられそうなので早めにネタにしようと決意。ちなみに米朝一門の「米」は襲名なしに4代続いているようだ。

話がそれた。

この愛昇さん、自分の面白さに自信のあるアンちゃんという感じ。
ひょっとして関西人かもしれないとチラと思った。明大オチケンだそうだが。
その自信とセンスが将来花開くかもしれない、そんな可能性は全然否定しないけど。
今日のところは、単に前座の規格にハマってない印象。スケールがでかいという褒め言葉ではなくて、ちゃんとしてないなという批判である。
前座のくせに「ちょうど、この会場のような雰囲気ですけど」とか入れごとする(演目は「動物園」)。

そんなことやる前に、まだ口も回ってないんだから。
あくまで一般論としてだが、「一度なんでもない人間にリセットされてから、修業でもってフラを加えていく」という方向で出世して欲しいもんだなと。
実際、この後高座返しでチョンボもあり。
昇也師がどうコントロールしていくのだろう。
まあ、そういう意味では楽しみな人である。
ちなみに前座の評価なんてすぐ変わるので、色眼鏡で見続ける気はない。

こんな雰囲気の前座、前にもいたなと思った。そう、次に出てくる桂蝶の治(伸び太)さんである。

蝶の治さんに続きます。

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