仲入り休憩の後は披露目の口上。
小痴楽、文治とすばらしい高座を楽しんだため、仲入り後の最初が口上だという、当たり前の事実をちょっと忘れるところであった。
芸協恐るべし。披露目恐るべし。国立恐るべし。
落語協会しか行かない人も世には多いのだが、少なくとも芸協に行かずして芸協を勝手に語るのはよくない。
世間の認識よりも、トレンドはずっと芸協に振れている。そのことを今回改めて実感した。
広瀬和生氏すら、ずっと無視してきた芸協をないがしろにできなくなってきているが、それでも追いつかないぐらい芸協への振れが速い。
なにも成金だけじゃない。成金を生み出す土壌が芸協にあったということだ。
幕が上がるとずらり勢揃い。
下手から、司会の小痴楽師、その隣、あれ、どなただっけ？
そして主役、頭を下げたままの新真打柳雀師に、師匠鯉昇、最後が文治師。
誰だっけと思ったのは雷門小助六師。私の一度も聴いたことがない若手真打。
この日の顔付けとタイムテーブルも見てるのだけど、一度見た後はあえて覚えない主義なので。
そのほうが楽しいからである。最近はプログラムももらわない。
普段羽織に紋が入っていない小痴楽師も、黒紋付袴。当たり前だが。
その司会から、いい年になって入門した新真打の紹介。前座の、そして一緒にやってきた成金の仲間ですと。
続いて小助六師は、新しい会を始めるとき前座がいかに大事かという話。誰でもいいわけじゃない。
この点で柳雀は適切な人だったと。この人に頼んでおけば大丈夫。
前座がいないと大変で、「仕方ないから小痴楽に」なんてこともあるんです。隣からオイと声がする。
そして学校寄席によく、新真打と一緒に行った思い出。
学校寄席は真打・二ツ目・前座でワンセットになるから、ちょっと離れた世代のほうが一緒に行くことが多いということだろう。
当時の柳若が、子供たちの前で小噺を披露する。
再現を聴いた私も忘れてしまったが、本当につまらない小噺。
こういう際に使われる（ことになっている）小噺はだいたいパンツ破けたよだが、違った。
「腹のよじれるぐらい笑う」という表現がありますが、それ以上。この日一番前に座っていた小学生が、柳若の小噺聴いてゲロを吐いた。
新真打の師匠・鯉昇は、口上でもすぐには口を開かない。
入門の頃すでに年齢が行っていたので、故郷に帰ったほうがいいんじゃないか、志願してきた柳雀にはそう語りました。
入門後も、いつ辞めて故郷に帰って豆腐屋になるのかと思っていましたが、これが意外と気が利くし、辛抱強い。
まあ、真打はスタートラインに過ぎないので、この後改めて故郷に帰って豆腐屋になるかもしれませんが。
お客さまの反応次第では、今日が柳雀の最後の高座かもしれません。
新真打の高座の最中は決して席をお立ちにならないでください。何年かに一度、途中で帰るそんなお客さまがいらっしゃいますが、あまりいい死に方はしていないようです。
文治師は主役についてではなく、司会・小痴楽について話し出す。
小痴楽は、池袋でこの後3時10分上がりなんですよ（現在2時20分）。本人、早く終わりたくて気が気じゃないんです。
なのでここで司会を小助六に交代して、小痴楽は帰らせようと思います。
ギリギリになると、なにしろコイツは遅刻癖があるもんですから。
大きな拍手。
えーと言いながら、それでも立ち上がって客に送られる小痴楽師。客に向かって「みなさん、池袋で待ってます」。
司会がいなくなる前代未聞の口上。
ちなみに国立演芸場から池袋へは、有楽町線を使うと30分ぐらい。確かにギリギリだ。
これで時間が取れたので文治師、新真打の話をゆっくり。
柳雀は私より年上なんですよ。顔を上げて口の利けない新真打、ぶんぶんと首を横に振って意思表示する。
本当は文治師のほうが上だが、でも言われると信じてしまいそう。
柳雀は、キャンプが好きなんです。そしてロックも好きで。
フジロックの際、大雨だったんですがそれでもキャンプして行ったというつわものです。
急遽の司会になった小助六師に戻り、「文治師匠は、小痴楽を帰してゆっくり新真打の話題がしたかったみたいですが、それほどの話でもなかったようで」。
文治師の音頭で三本締め。
披露目の口上、前後脈絡がない分なに話したか覚えていられないのが私の悩みだったのだが、最近ちょっと覚えるのがうまくなったようである。
まあ、当ブログを書く以外にはあまり役立つスキルではないけれど。
ちなみに、メモ取ったら負け。演者に嫌がられるだけ。覚えるのが目的じゃないのだ。
楽しい大喜利でした。
違います。
