池袋演芸場12月中席昼は、毎年恒例柳家蝠丸師が主任。
隔年で聴きにきている。
土日もいい落語会がいくつかあったが、ぐっとこらえて月曜、池袋の初日へ。
池袋の定席自体ご無沙汰で、昨年夏の落語協会(主任:三三)以来だ。
程よい入り。
つる | ば馬 |
饅頭こわい | 銀治 |
喜之輔 | |
時そば | 伸衛門 |
加賀の千代 | 遊喜 |
ナオユキ | |
四人癖 | 里光 |
裕次郎物語 | 桃太郎 |
(仲入り) | |
坂本頼光 | |
替り目 | とん馬 |
金明竹 | 柳橋 |
正二郎 | |
叩き蟹 | 蝠丸 |
前座は圓馬師の3番弟子、ば馬さん。
前座香盤の一番下で、メクリがまだない。
名前を名乗ったのがウケのピークだった。
キャラの良さそうな人だけど、オチケンっぽい明確な欠点が。
隠居の反応がいちいち大げさなのだ。
八っつぁんが大げさなのはいいとして、隠居はどっしり受け止めないと。
隠居が、顔を全力で歪めて八っつぁんの言動を否定するのはいただけない。
表面的なメリハリはあるのに、途中で飽きた。
二ツ目は桂銀治さん。
喋の治、小右治の交互枠なので、今日だけ銀治さんのようだ。
だが、期待大。
最近二ツ目になったばかりのこの人、前座のおしまいに続けて2回聴いた。上手い人だ。
古今亭駒治師をちょっと男前にした感じ。
先に前座さんが出ましたけども、私もつい先日まで前座でした。
二ツ目昇進が決まった際に師匠に呼ばれまして、名前変えるぞと言われました。
前座時代伸ぴんだったので、中古になるのかなと。
心配したら銀治という立派な名をもらいました。名前負けしないよう頑張ります。
それから出身地宮崎の、フェニックスとかブーゲンビリア空港とか、名称が変だと。
十人寄れば気は十色と振って、饅頭こわいへ。
好きなものはなく、嫌いなものの言い合いから。
やはり、この段階で実に上手い。
うたい調子なのだ。いい意味での一本調子。こうなると内容より言葉に参ってしまう。
もちろん内容も楽しい。ヘビと蜘蛛、アリが怖い連中をしっかり描き分ける。
ワイガヤであって、別に個性が必要な場面じゃないのだけど、演者としてはちゃんとそれぞれの個性が肚に入っているみたい。
早々と、仲間に混じらない鉄つぁん登場。
怖いものなんてない鉄つぁんが、実はひとつだけ怖いものを思い出すまでも、やはり流れるよう。
演技が自然で、大げさなところが一切ないから気持ちが楽。だんだん高揚してくる。
演者の肚に登場人物各人の個性がしっかり入っている証拠がある。
鉄つぁんに怖いものひとつぐらいあるだろと聴く際、「こいつなんかアリが嫌いなんだ」と先の登場人物を振っている。
右といえば左の鉄つぁんは、みんな嫌い。
でも、本当に嫌いなわけではない。その背景がしっかり描かれる。
なにしろ、いちばん足の速い野郎が、饅頭見て鉄つぁんが気を失ったら、医者に走っていく準備もできているのだ。
こういうの、客よりも演者が納得したいのだと思う。
そして、枕元に饅頭を持っていくが、ひとつだけくず饅頭をより分ける。
何すんだ、お前が食うのかと訊くと、こいつを鉄の野郎の顔に投げつけてやるんだ。
くず饅頭がぷるぷるして、食われたと思うんじゃないのと。
これを投げつけられる鉄のアクションが、とっておきのアクセント。
実に素晴らしい。
伸治一門に現れた、初の本寸法ではなかろうか。
ヘンな人ばっかりだからね。
紙切りの林家喜之輔師は5年振りである。
5年経ってみると、自虐的な喋りが大幅に上達している。客が当初ついてこなくても、じわじわ盛り上げていき、共感を作り上げるのは見事。
でも、肝心の紙切りのほうが物足りない。
鋏試しでサンタクロースを切ったあとのお題は、「ゴジラ」「大谷翔平」「フレンチブルドッグ」。
大谷翔平は、当然用意してましたと。
打つ方と投げるほう、どっちがいいですかと注文者に訊くと、「二刀流」。
二刀流を切りますと言って、「バットを投げる大谷」を切る。
こんなのもらっても、飾れないじゃないか。
紙切りは落語協会が、情緒があっていいねえと再確認。
桂伸衛門師には声も飛ぶが、私には本当によくわからない。
すみません。
三遊亭遊喜師は、加賀の千代。
これが、一之輔師のものに非常によく似ていて。出どころ一緒というより、教わってからクスグリをマイルドに仕立て直したという感じ。
教わったのだろうか? この人のほうが先輩だけども。
どんどん進みます。下手すると上中下3回で終わるかもしれない。
薄味でも楽しかったですけどもね。
銀治さん、気になっていました。
でっち定吉さんが誉めているので、ぜひ聴いてみたいと思います。
いらっしゃいませ。
銀治さんはじき、芸協にとどまらず話題になる器だと思っています。