池袋演芸場29(上・桂銀治「饅頭こわい」)

池袋演芸場12月中席昼は、毎年恒例柳家蝠丸師が主任。
隔年で聴きにきている。
土日もいい落語会がいくつかあったが、ぐっとこらえて月曜、池袋の初日へ。

池袋の定席自体ご無沙汰で、昨年夏の落語協会(主任:三三)以来だ。

程よい入り。

つるば馬
饅頭こわい銀治
喜之輔
時そば伸衛門
加賀の千代遊喜
ナオユキ
四人癖里光
裕次郎物語桃太郎
(仲入り)
坂本頼光
替り目とん馬
金明竹柳橋
正二郎
叩き蟹蝠丸

前座は圓馬師の3番弟子、ば馬さん。
前座香盤の一番下で、メクリがまだない。
名前を名乗ったのがウケのピークだった。
キャラの良さそうな人だけど、オチケンっぽい明確な欠点が。
隠居の反応がいちいち大げさなのだ。
八っつぁんが大げさなのはいいとして、隠居はどっしり受け止めないと。
隠居が、顔を全力で歪めて八っつぁんの言動を否定するのはいただけない。
表面的なメリハリはあるのに、途中で飽きた。

二ツ目は桂銀治さん。
喋の治、小右治の交互枠なので、今日だけ銀治さんのようだ。
だが、期待大。
最近二ツ目になったばかりのこの人、前座のおしまいに続けて2回聴いた。上手い人だ。
古今亭駒治師をちょっと男前にした感じ。

先に前座さんが出ましたけども、私もつい先日まで前座でした。
二ツ目昇進が決まった際に師匠に呼ばれまして、名前変えるぞと言われました。
前座時代伸ぴんだったので、中古になるのかなと。
心配したら銀治という立派な名をもらいました。名前負けしないよう頑張ります。

それから出身地宮崎の、フェニックスとかブーゲンビリア空港とか、名称が変だと。

十人寄れば気は十色と振って、饅頭こわいへ。
好きなものはなく、嫌いなものの言い合いから。
やはり、この段階で実に上手い。
うたい調子なのだ。いい意味での一本調子。こうなると内容より言葉に参ってしまう。
もちろん内容も楽しい。ヘビと蜘蛛、アリが怖い連中をしっかり描き分ける。
ワイガヤであって、別に個性が必要な場面じゃないのだけど、演者としてはちゃんとそれぞれの個性が肚に入っているみたい。
早々と、仲間に混じらない鉄つぁん登場。
怖いものなんてない鉄つぁんが、実はひとつだけ怖いものを思い出すまでも、やはり流れるよう。
演技が自然で、大げさなところが一切ないから気持ちが楽。だんだん高揚してくる。

演者の肚に登場人物各人の個性がしっかり入っている証拠がある。
鉄つぁんに怖いものひとつぐらいあるだろと聴く際、「こいつなんかアリが嫌いなんだ」と先の登場人物を振っている。

右といえば左の鉄つぁんは、みんな嫌い。
でも、本当に嫌いなわけではない。その背景がしっかり描かれる。
なにしろ、いちばん足の速い野郎が、饅頭見て鉄つぁんが気を失ったら、医者に走っていく準備もできているのだ。
こういうの、客よりも演者が納得したいのだと思う。

そして、枕元に饅頭を持っていくが、ひとつだけくず饅頭をより分ける。
何すんだ、お前が食うのかと訊くと、こいつを鉄の野郎の顔に投げつけてやるんだ。
くず饅頭がぷるぷるして、食われたと思うんじゃないのと。
これを投げつけられる鉄のアクションが、とっておきのアクセント。

実に素晴らしい。
伸治一門に現れた、初の本寸法ではなかろうか。
ヘンな人ばっかりだからね。

紙切りの林家喜之輔師は5年振りである。
5年経ってみると、自虐的な喋りが大幅に上達している。客が当初ついてこなくても、じわじわ盛り上げていき、共感を作り上げるのは見事。
でも、肝心の紙切りのほうが物足りない。

鋏試しでサンタクロースを切ったあとのお題は、「ゴジラ」「大谷翔平」「フレンチブルドッグ」。
大谷翔平は、当然用意してましたと。
打つ方と投げるほう、どっちがいいですかと注文者に訊くと、「二刀流」。
二刀流を切りますと言って、「バットを投げる大谷」を切る。
こんなのもらっても、飾れないじゃないか。
紙切りは落語協会が、情緒があっていいねえと再確認。

桂伸衛門師には声も飛ぶが、私には本当によくわからない。
すみません。

三遊亭遊喜師は、加賀の千代。
これが、一之輔師のものに非常によく似ていて。出どころ一緒というより、教わってからクスグリをマイルドに仕立て直したという感じ。
教わったのだろうか? この人のほうが先輩だけども。

どんどん進みます。下手すると上中下3回で終わるかもしれない。
薄味でも楽しかったですけどもね。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. 銀治さん、気になっていました。
    でっち定吉さんが誉めているので、ぜひ聴いてみたいと思います。

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