古今亭志ん橋一門会 その3(古今亭駒治「オコッペ本線」)

駒治師は特に師匠の思い出は語らず、「オコッペ本線」へ。
マクラと合わせて20分強だったかな。
この噺は5年前にスタジオフォー四の日寄席で聴いて以来。久々なので嬉しいですね。
廃線で集まる葬式鉄を扱った落語。

オコッペ本線の始発駅、オコッペまでは飛行機から犬ぞりを乗り継いで3日かかるんだそうだ。
1日の乗客は高校生1人と狐が1匹の半分。高校生が札幌に出るため廃線となることが決まった。
今は中年。かつての少年は家出してオコッペ本線に乗りにいった。
遭難した少年を親切なお婆さんが助けてくれて、一晩泊めてくれた。どうしてもあの礼がしたいと思っていたが、郵便も届かなかった。
廃線を機に、あの時のお婆さんを探しに行く。もう亡くなっていて不思議はないが、手がかりでもあれば。

スタンダードな古典落語が2席続いたあと、ガラッと方法を変えた新作落語。
駒治師のうわずった喋りは古典とまったく違うものだが、それゆえにこの人上手いなあと思う。
新作落語だからって、語りの方法論は千差万別。駒治師の方法論は唯一無二。
ひとつの体系を作り上げていながら、上手さを濃厚に感じさせる。寄席で引っ張りだこなのがよくわかる。
そろそろ鈴本でトリがあるんじゃないかと思うがどうでしょう。

駒治師は早口言葉のようなスピーディな語りを早くから狙っていたが、以前は演者がそれに耐えきれず、しばしばつまづいていた。
今は少々つまづいたとしても、ちゃんと復旧して変な感じを残さない。

まんが日本昔ばなしを取り込んでいたが、「おいしいおやつにコトコトごはん」ではなくて、ほかほかごはんです。
いいけど。

あまりネタバレしたくない。
超自然の存在を、ナチュラルに取り込んだ噺である。日本にありながら着くのに3日掛かるふざけた設定は、そんなものも吸収してしまう。

トリは当代志ん橋師。この人が、昼席でもトリを取っている。
駒治アニさん、お気づきでした? 羽織も着ないで出ていきまして。忘れたわけじゃなくて、ちゃんと持ってるんですよ。
羽織いいんですかって訊いたら、いいんだそうで。

師匠、志ん橋の思い出は尽きません。
今後も一門会やっていけたらいいなと思います。

一度失踪した話が出るかなと思ったが、それはない。
船遊びを振る。
船宿の2階ではよくどんちゃん騒ぎをしていたという話につながり、そして勘当された若旦那につながるのである。
というわけで、船徳。暑いからピッタリ。
持ち時間は30分程度だが、前半が分厚い。

若旦那が船頭になりたいと訴え、そして親方がみんなを集める。
女中は「シロさん、クマさん、シロクマさん」だった。へっついの下が燃えてるよはない。
質屋蔵と同じ、不祥事の先行自白に「ちっとも知らなかった」。
若旦那は、念願の船頭にはなれたものの、誰も船に乗せてはくれない。だから船の客に茶ばかり持ってくる。

先日、春風一刀さんが日傘について話していた。男も日傘がいいですよと。
船徳の客もすでに、懸賞でもらったコウモリを、日傘として使ってるんだなと思った。

師匠の名を襲名できた志ん橋師であるが、ここまではまあ普通だ。
しかしとっておきがあった。船宿のおかみさんが圧倒的にいい。
女が上手いというイメージは特に持ってなかったけども。
「あれ?あれはダメです」などといった露骨な言葉を使わずして、困惑を伝えるのが見事。

船が出てからは展開ちょっと早くなる。
石垣にコウモリ残して、揺れる船でタバコ吸って。そうこうするうちに大桟橋までやってくる。
だが小さな桟橋にも着けられない。
誘った旦那が太った旦那をおんぶして桟橋へ。それ以外のクスグリはなし。

志ん橋師が頭を下げると、袖から他の出演者が出てきた。志ん橋師、「トークがあります」。

下手から、駒治、志ん橋、志ん陽、志ん雀。志ん雀師が、回し役。
トーク10分以上やってたら、袖から私服の志ん丸師が出てきて、「長いよ!」。
その後もなんだかゆるゆる続いてたら、今度は志ん丸師が客席の後ろから「お客さん疲れちゃうよ!」。
あの人、昼から飲んでてもうでき上がってるんですよと誰か言ってた。
その後終わりました。終演時刻は7時25分くらい。
撮影コーナーもあった。ほとんどの客が最初から電源切ってない事実がよくわかる。
電源常に落としている私も、最近買い替えたので立ち上げ早く撮れはした。出さないが。

志ん丸師、師匠に対して割と意見・反論ができる人だったという。
志ん雀師は、そういう関係が羨ましかったそうで。反論できるようになる前に亡くなってしまったのだと。
ただその先代志ん橋も、割と志ん朝に対して「師匠さあ」とか言えてしまう人だったそうで。
それを惣領弟子の志ん丸師にたしなめられてたんだって。

志ん雀師、生え抜きの2番弟子だったのに、いきなり上に4人(辞めた人を含め5人)入ってきてしまった。
関係ない人からは、やりにくくないかとよく言われた。それはよくわかる。
でも、志ん丸師の真打昇進の際、散々ダメ出しをされてるのを見てきた。なので真打になるのが怖かったのだと。
そこに兄弟子がたくさん増えてくれた。師匠も真打昇進に慣れてきたので、だんだん言われなくなってきた。だから感謝してるんだそうで。

駒治師は、昇進時何も言われなかった。師匠(志ん駒)が亡くなって半年で昇進だから。
当代志ん橋も同じ立場だねと駒治師。もうちょっと師匠が生きていてくれたら、移籍しなくて済んだのに。
嫌々移ったみたいに聞こえるのでやめてください。

駒治師、師匠に噺について意見されたりしたんですかと訊かれる。
いやないよ。でも、顔見たらわかる。これは怒ってるなと。
師匠は、志ん五(当代)みたいな新作作れと言ってたそうで。

師匠も、結構サゲ変えたり、クスグリ変えたりしてたねと一同。
熊の皮なんて師匠が作ったものだ。だから創作へのこだわりは強かった。

志ん陽師にとっては師匠は3人目だが、移籍した直後、志ん橋師の体調が悪くなった。
ああ、またかと思った。
しかし師匠が、「俺が死んだらあいつの引き取り手がない」と頑張って、その後元気になったのだそうで。

ややこしい師弟関係もある中、この一門はいいなとしみじみいい気分になりました。
楽しい会。

3日続けるときは通常「上中下」にするのだが、途中でこれは4回行けるなと「その1」にしてしまった。
オコッペ本線のネタバレ避けたら、3回で終わっちゃいました。

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