西新井いきいき寄席2 その2(金原亭馬生「紙入れ」)

金原亭小駒さんは、元犬を終えて寄席の踊りを披露しますと。
ずぼらんという、すけべな坊さんが女に言いよるストーリーです。
踊ってる私がすけべな坊さんに見えたら成功です。

2年前はトリの馬生師が、小駒さんと和助師を呼んで3人で踊っていたが。

この後の出囃子が「まかしょ」ではない。喬太郎師が仲入りかと思っていたがトリのようだ。
プログラムらしきものを持ってる人もいるが、当日券の私の手元には何もない。
仲入りは馬生師。。
現在馬久改メ馬好師の披露目でお忙しいことだろう。
待ってましたと声が飛ぶ。

女性のお客さんに待ってましたと言われるとは。男性の20人分ぐらい嬉しいです。
また今日のお客様、女性は美しい方ばかり。西新井はいいですね。
立川だとこうは行きません。
先ほど弟子の小駒が出ました。すけべな坊さんに見えたら成功って言ってましたが、なんにもしなくてもすけべな坊さんじゃないですか。

「立川だとこうはいきません」は、立川に行けば「西新井だと〜」になるものと思われる。

私ワイドショーとかそんな見るほうじゃないですけど、今はなんと言っても群馬県、前橋の市長さんね。
目が離せませんね。
日本はね、仕事ちゃんとすればいいじゃないかっていう風土がないですね。フランスあたりでは不倫してても仕事してればいいみたいですがね。
日本は引きずり(おろし)ますね。まあ島国根性なんでしょう。

豆腐屋のかみさんが間男している。
この小噺に、本編に入るような口調で入っていく。落語本編だと思った人も多かったに違いない。
そして実際、一席の落語のように細部が充実している。小噺自体は紙入れで普通に聴くものだが、こんな細かいものは初めて聴いた。
小噺を再構成し直したのだろか?
口の固さには自信があるという町内の連中だが、次から次へと間男話を広めて回る。知らぬは亭主ばかりなり。
二人目の男が床屋で話すので、与太郎は隅っこで聞いていた。「悪い奴に聞かれたな」。
与太郎が人に教えに行く。行った先のお店、主人が接客していて「はい、がんもどきお待ち」。客爆笑。

ここでまたマクラに戻る。融通無碍である。
間男は七両二分と値が決まり。
侍は女仇は討たなきゃいけなかったんですね。ただ、庶民のほうはずいぶん緩くて、いちいち斬り殺してもいられないのでカネでカタをつけまして。
そして再び、別の間男小噺を振る。あまり見ないやり方だが、とにかく自然。

隣のかみさんと間男した男、旦那に詰められている。七両二分で許してやる。
一回しかしてないのにと嘆く男。
大金なので自分のかみさんに相談する。七両二分とは言わないまでも、三両ぐらいなんとかならないか。
なに、隣のかみさんが相手かい。なら大丈夫だよ。逆に六両返ってくる。

これは数学の問題ですねと馬生師。

そして案の定、紙入れへ。
2年前のこの季節、NHK新人落語大賞の審査員になった馬生師、春風亭昇羊さんが若いのに紙入れやったと点数入れず、物議を醸した。
その本家である。
私は決して好きな噺じゃないのだが、にもかかわらず本家紙入れ、この時点ですでに楽しみで仕方なくなっていた。

私は色っぽい噺はだいたい好きなのである。なのに紙入れが好きじゃないのは、なんだか変にどろどろしてるからだと思う。
日本の話芸で聴いた喬太郎師のものは楽しかったが。

馬生師の新吉は、本屋じゃないみたい。反物を扱ってる。
どんな反物でも納めてくれる旦那には頭が上がらない。
そういえばここまで格言が多数出ていたのに「間男は亭主のほうが先に惚れ」はない。
とにかく軽いのである。
そして、旦那がいきなり帰ってきてどうしようとうろたえているシーンから始まっているように映る。
実際にはその前に精のつく料理の数々を新吉に勧めているのだけど、でも軽い。

現代社会、不倫はもちろんご法度。
ネタとして扱うにしても、世間の目は厳しい。
ところが馬生師、あの口調で運んでいって、いつの間にかそんなのも普通にある世界を描き出している。
聞き手の日常の感性と断絶された間男ワールド。

まあ不潔なおかみさんねえ、なんて反撥を覚える女性客がいたっておかしくないのだか、こんなスイッチは作動しない。
馬生師が描く間男ワールドでは、これが標準。
恐ろしいことに、気づくと客は間男の共犯にさせられている。
完全犯罪の片棒を担がされているのだ。
といって、「かみさんお楽しみだったのに残念だったね」というスイッチも作動しない。別に生々しいところはないのだ。

ああこりゃもう確かに、若手の紙入れなんて話にならないわ。
本気でそう思った。
といってベテランになれば誰でもやれるなんて噺でもないけども。

続きます。

 
 

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