少し戻るが仲入り休憩中は、銀髪の金原亭駒平さんが会場で張り切って物販をしていた。実にチャラい人。
桃月庵黒酒さんと古今亭菊正さんが、テンションやたら高い駒平さんにツッコむ。
仲間からの場内アナウンスでも「金原亭駒平さん、ご苦労さまでした」とねぎらわれていた。
口上のあとはロケット団。
最近You Tubeにもアップされてたが、自己紹介がリニューアルされてる。
パキスタンのあとである。
「大学を出てるほうが三浦で、中退のほうが倉本」
「それだけ本当じゃねえか」
その他危なめのネタ。
「いや、めでたい、ですか?」「誰に訊いてんだよ」
披露目といっても過言ではないですね、はなかったっけ?
前橋市長と伊東市長で盛り上がる。
我々のためにネタをせっせと提供してくれまして。
別に俺らのためじゃねえよ。
子供2人まだ小さいもんで、ネタがないと飯の食い上げですからね。
楽しいロケット団、ツッコミがますますナチュラルになり、パワーアップ。
ただ以前から唯一の弱点だと思ってるのが、ネタの切り替えが唐突なこと。
最後いきなり「セキュリティ」に話題が移る。
宮田陽・昇だと、ここが完璧なんだ。
落語は菊之丞師のふぐ鍋に、扇遊師の狸賽。
そろそろふぐ鍋の季節。
さん喬師の天狗裁き同様、2席とも寄席のスタンダード中のスタンダード。
繰り返し聴いてどう楽しむかというと、やはり音楽としてであろう。
扇遊師からは今月ねずみと厩火事を聴いたばかりであるが、やはり音楽であった。
ヒザは翁家社中。
この夫婦も、近いうち襲名披露(和楽・小楽)の主役になるものと勝手に思い続けている。
二枚扇、皿回し、急須など滞りなく進み、最後にゲストとして新真打やなぎ師登場。
やなぎ師「僕ですか?」。これは和助師へのオマージュ。
頭の上で包丁芸かと思ったが、違う。椅子に座らせ、オレンジジュースの空紙パックを二枚扇で弾き飛ばす。
万一首筋に当たると痛いという程度。無事成功。
開演から4時間と20分、ついに主役登場。
入船亭遊京改メ扇白師。
3場めでもあるし堂々としたものだ。
口上で菊之丞師が振っていた、中国渡航の話。
中国人の許さんという人が、日本の全県回りまして。
各地で親切にしてもらったそうですが、ただ触れ合う人たちが中国についてほとんど知らなかったと。
それで自分自身でも中国をよく知るため、すべての省を回ろうと思ったということです。それに同行しました。
二ツ目時代の遊京さんの高座はそこそこ聴いたが、マクラで渡航談を聴いたのは一度だけだ。
そしてその話でもなかった。
許さんが、この街にはうまい餃子屋があると言うが、なかなか着かない、など。
旅のムードが溢れていい。
本編は徂徠豆腐。
寒くなってきたし、と思うが寒さの描写はなかった。
扇白師からは初めて聴く。出どころは扇辰師なのかと思うけども、雰囲気はかなり違う。
クスグリをそこそこ(過剰にではなく)入れる人情噺というイメージであるが、扇白師からはまったく気負いが感じられない。
ユーモア溢れるおはなしを、軽く、しかしながら丁寧に語ろうという感じ。
この人らしいなと思う一方で、「軽い人情噺」というべき同じムードの噺は聴いたことなかった気もする。
豆腐の代金取りっぱぐれてもぜんぜん感情はかき乱されない。
そんな噺なので、焼け出される災難に遭っても悲壮感は薄いし、出世した先生が訪ねてきた際の「がんもどきも付けとけば」あたりもさらっと。
先渡しの十両をついつい少しずつ使ってしまうのも、軽くて背徳感は薄い。
先生がやってくるのが遅くなったのは、なにせしばらく栄養不良だったので養生が必要だったらしい。
アクセントをむやみに付けない噺が心地いい。
古典落語のボディを信じ、しっかり語るのだ。
師のたまわく、のくだりは先生、上総屋にちゃんと説明してるのがインテリ。
あしたに道を聞かば夕べに死すとも可なりと。
初日は醤油を少量垂らして豆腐を食べる先生だが、二日目は醤油なし。
もともと豆腐が好きなのだが、醤油はどうやらここで切れたらしい。
演者自身の語る、真打出世譚ってとこか。
なにも特別なことをしたわけではなく、その時の自分にできることをしっかりやって天命を待つのだ。先生も豆腐屋も。
実に爽やかな噺でもって披露目の席は気持ちよく閉じるのでした。
未来の明るい真打誕生。
木戸銭を取り返すため、歩きで蔵前から厩橋を渡り、墨田区石原のサミットで20%還元の買い物をし、両国から帰宅するのであった。
ポイ活の真打。披露目はありません。
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