国立演芸場寄席@深川江戸資料館(下・吉原馬雀真打昇進披露口上)

朝馬師の噺は「詐欺に勝つ」ではなく「詐欺に喝!」だそうです。
当日のネタ帳がアップされてた。
会場では見なかったのだけど。

仲入り休憩時はロビーで手拭い等の物販をしている。
売っている人に驚いた。
桂銀治さんだ。隣には桂南楽さんの姿も。二人とも芸術協会の若手である。
違う協会団体からお祝いに来るのは普通だとして、物販手伝ってるのはなかなか見ないこと。
神田連雀亭で馬雀師と接点あったのは、二人ともごく短い期間だったと思うのだが。
と思ったら、二人は宮崎出身ですね。地元のマクラも高座で聴いている。
もう一人はいた人は金原亭で、桃月庵白浪さんだったけども。
向こうの協会からもたくさんやってくるのは新真打の人徳なんでしょう。X情報では桂竹千代さんも駆けつけていたと。

さて、仲入り後は披露目の口上。
後ろ幕は、高校のものから学習院のオチケンに替わっている。
幕が開くと、下手からこう。

  • 春風亭一蔵(司会)
  • 金原亭小馬生
  • 吉原馬雀(新真打)
  • 吉原朝馬(新真打の師匠)
  • 柳家小さん(常任理事)

一蔵師から真打の紹介。
馬雀さんとは一緒に修業した仲です。
彼は前座の頃からよくしくじってましたが、それは他人の失敗も自分で負ってしまう人だからです。
馬雀さんの宮崎のご実家でも寝泊まりさせていただきました。

小馬生師は、いろいろありましたがと。
新たな一門として金原亭を選んでくれて感謝します。
新しい師である朝馬師匠は、金原亭でも随一の、固いところが一切ないという人です。
真面目な馬雀さんを導くには本当にいい師匠です。

小さん師も、本当にいろいろ、いろいろありましたと。
具体的なことは一切言わないので、小馬生師が「師匠、なにをおっしゃりたいので」とツッコむ。
真打になるのが少しだけ遅れましたが、そんなことはいいんです。これからです。
これからの人生のほうがずっと長いんですから。
馬雀さんの新作は、喬太郎が褒めてました。いいんだよって。

新師匠の朝馬師。
もともと馬雀さんを知っていたわけではありません。落語も聴いてはいませんでした。
いろいろあったあとで声を掛けて、彼の話も聞いて、これならやっていけるなと思いまして。
彼は新作落語作るのが達者です。
私は元々、「詐欺に喝!」という落語を、警察からの委嘱で喋ってました。
ただ古くなっちゃって、そろそろ変えませんかと言われてたんです。新しい犯罪データもたくさんくださいまして。
ただ私そうそう作れませんから全部馬雀に渡しまして。そしたら3日後に作って持ってきてくれました。これが「詐欺に喝!Ⅱ」です。
すごいもんです。
この才能を潰さなくて本当によかったと思います。

才能を潰さなくてよかった。まったくだ。
ちょっとグッと来る。
二ツ目で辞めちゃったら才能あってもそこでおしまいだもの。

三本締めで門出を祝う。

幕が再度開いて、小さん師。
この短い間に着替えて出てきまして、大変なんですよ。
披露目は大変です。なにしろこれが掛かります。
打ち上げで飲ませないといけません。
披露パーティーもやりますし。
打ち上げは年寄りには声を掛けません。まあ、見つけて勝手に行きますけど。

ここから禁酒番屋へ。
すみません、寝ました。
柳家小菊師匠も寝て過ごす。

新真打のトリ。上手にある楽屋口からは、気合の入ったトキの声が聞こえてきた。

おかげさまで故郷の宮崎でも会を開いてもらえるようになりました。
こないだ宮崎空港に着いたら、「馬雀さん」と声掛けられました。ああ、知られてきたんだなと思ったら、母親でしたけど。
母もなんで芸名で呼ぶんでしょうか。

自分を大きく見せちゃう人っていますよねという話から本編へ。
神田連雀亭で聴いた、「サイン」である。

「対策は合言葉」「サポート詐欺」だと、師匠とツくので詐欺ものはないわけだ。

連雀亭(トリ)では、20分の噺を寄席用に15分に縮めたので、早く終わっちゃいますなんて語っていた。
当時よりは長く感じたが、何分だったろう。
ただ、冒頭のざる屋みたいなシーンがなくなっていたから、無理に引き伸ばしたわけじゃなさそうだ。

二度目なのでサゲまでよく覚えている。

  • 俳優の大河内まもるさんじゃないですか!
  • うちの父が大ファンなんです。父と電話で話していただけないですか → これから打ち合わせなんだ
  • では、一緒に写真を撮っていただけないですか → 事務所に禁止されてるんだ
  • では、サインだけ → サインならいいよ
  • お願いします(と、スマホを渡す)→ スマホにペンで書けっていうのかい?ペンないよ
  • いえ、手書き機能で、指でサインをいただきたいのです。こちらが今までいただいたコレクションです

伏線が散りばめられた緻密な噺。
というか、全部伏線。

昔ながらの「色紙にペン」にこだわりたい俳優だが、もらいたいほうは、転売させなくて済みますよと。
ほら、この通り大河内さんのサインも出品されてるじゃないですか。
渋々指サインに応じる俳優だが、何度やっても自分のサインが気に入らない。
何度もやり直すのが、反対に父と約束のある男のほうが焦れてくる。

適度に失礼だが、それでいて礼節の基準はあるらしい男。
俳優のほうは、かつての売れっ子。今はさほどでも。
双方に適度なシンパシーを感じるのが、創作の秘訣みたい。
伏線回収に命を掛け、それでいて不自然でつまらない新作落語やコントってよくあるなと。

楽しい一席で幕が閉まる。
苦難を乗り越えた新真打に期待。
これから5年程度は誰だってそうだが大変だ。その間になんとか新作落語界で地位を確立できますように。

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