池袋演芸場36 その7(隅田川馬石「鰻屋」)

昼夜居続けのときはだいたい通路側に席を替えるのだが、この日は通路側の人がすべて居続けるので動けない。
珍しいこともあるものだ。
私も可能なら夜トリまでいたい。

にゃん子金魚先生は今日もパワフル。
パワフルなのに空気のような、内心ザワつくところのない見事な舞台だなと。
今回はあまり聴いたことのない話を振っていたが忘れてしまった。ま、ゴリラが出るまでのつなぎだけど。
やはりバナナの差し入れと、にゃん子先生にはワンカップの差し入れ。

あと二人聴いて帰ろうと思う。
まずは蜃気楼龍玉師で鹿政談。
たびたび聴いてる人ではないが、また鹿政談かと思う。
ずいぶん前、二ツ目時代から聴いてる演目。
でも楽しいのだった。繰り返しに耐える語りだ。
江戸名物はなく、奈良名物から街の早起き。

そして隅田川馬石師。
この人を個人的なこの日のトリにする。もちろん、大それた演目のわけはないが。

この芝居は兄弟子白酒の主任です。
先ほど出た龍玉さんは弟弟子で。
弟子は3人だけです。
師匠・雲助も後で出ます。一門4人が同じ芝居に顔付けされるのは珍しいことで。
顔付けされたとしても、だいたい誰か脇で仕事あって抜けるんですよ。今日は揃ってます。
何日目まで勢揃いが続くか楽しみです。

さて馬石師、寄席での芸風が変わってきたみたい。
独演会だと自分のマクラを振るが、寄席のこんな出番だとだいたいすぐ本編に入っていた。
だが、面白マクラ付き。個人的にはマクラあるほうがいい。

今日11月11日は、何の日かご存じですか。ポッキーの日です。
ポッキーって美味しいですけど、子供の頃は高いお菓子ですよね。
子供の頃あこがれて、大人になって好きなだけ買えるとなると、意外と買いません。
でもポッキーの日ですから、買って食べました。
ポッキーもいろんな味が出てます。太いつぶつぶしたようなのではなくて、普通のポッキーです。
今日しか言えないことなので喋らせてもらいました。まあ、明日になったら昨日はポッキーの日でしたと言って、同じ話するかもしれませんが。

めちゃくちゃ面白かったのだが、1週間以上経つと、いったい何がそこまで面白かったのか、まるでわからない。
しかし同じ話をされれば、きっとまた笑うだろう。
ひとつには、馬石師の適度に(やり過ぎず)もったいつけた語り口のおかげ。いったいどこに連れてかれるのか。
でも実は、どこに連れてかれるわけでもない。それはじきに判明するのだが、楽しさだけは残っている。

マクラは、鰻の話につながった。
東京では蒸してから焼き上げますね。関西では蒸さずに焼きます。
私は関西の出なので、蒸さずに焼いた関西風も好きですね。

この後続くのは鰻屋。夏の噺であろうが。
7年前に聴いている。
当時のものをそれほど覚えているわけではないが、間違いなく大幅にパワーアップしている。
こんな楽しい落語、そうそうないもの。

鰻屋を最初に聴いたのは、中学生だったか。歌丸師が笑点でやっていた覚えがある。
指をにゅるにゅると突き出し、捕まえるのは子供にも楽しい。しばらく真似してた覚えがある。

だが鰻屋、変な噺。
噺の楽しさがなんなのかはよくわかってるのだが、変なところに感情を揺すぶられがちな噺。

鰻の職人はしょっちゅういなくなっていて、おおかた女のとこでもあろうが、そんなやつなんで雇ってるんだろう。
職人がいなくて、主人も捌けないんだから店閉めりゃいいのに。
鰻抱えて町内一回りするやつなんかいねえよ(馬石師にはこの設定はない)。

などなど、そこじゃない!っていうところについ引きずられる噺である。
隅田川の水飲まされるエピソードも、何がなんだかわからない。シャレのひどいやつなんだと思うけど。

この点、馬石師のものは、客と主人の見事なコントである。
発動しなくていい感情が発動しない。
鰻屋の主人も、困ってはいるのだろうがふわふわしている。

隅田川の水飲まされるくだりはない。元々ないのかも。
ゼニはないが、今度できた鰻屋はタダで酒飲めるから行こうじゃないか。
そして回想シーンとして入る、前回のエピソード。

主人は職人がそのうち帰るという腹づもりらしく、なんとかつなごうとする。つなごうとするのだが、きゅうりのこうこと酒ばっかり持ってくるので客も頭に来るのである。
しまいは鰻の丸焼き。
今回は、タダ酒にありついたわけではないが、主人に鰻を捕まえさせるという楽しい遊びが始まる。
絶対にさばけない鰻、与三郎も登場。

糠を大量にぶち込んで、なんとか鰻を捕まえようとする主人。

サゲは、「前に回って」がない。
「鰻に聞いてください」。

ここで気持ちよく帰途につきました。
寄席は楽しい。

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